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 「YouTube」の本社で起きた発砲事件。地元警察によると、発砲したのはナジム・アグダム容疑者で、現場から遺体で見つかっている。

 アグダム容疑者は数週間前から家族にYouTubeへの不満を口にしていたと地元メディアは報じており、容疑者のものと思われるサイトには「視野の狭いYouTube従業員によって、視聴年齢制限がかけられた。視聴数を減らし、動画製作を抑圧し、意欲をそぐためにフィルターをかけ始めた」などと、YouTubeを批判するコメントも掲載されていた。

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 アメリカで相次ぐ銃撃事件の中には、職場や学校への怨恨が理由で起きたものも珍しくない。2015年8月にはテレビ番組の生中継の最中、女性リポーターとカメラマンが銃撃されて死亡するというショッキングな事件が起こった。銃撃した男は、女性が所属するテレビ局の元リポーターで、解雇を逆恨みしていたという。また、去年6月にはフロリダ州オーランドの会社に乗り込んだ男が5人の元同僚を射殺し、自殺する事件が発生した。この事件も、解雇への不満があった可能性が伝えられている。

 そして今年2月には、フロリダ州パークランドの高校で19歳の元生徒が銃を乱射、17人が死亡した。全米に衝撃を与えたこの事件の後、トランプ大統領は犠牲者家族や過去の銃撃事件の生存者との面談で「もし教師が銃を持っていれば犯人を銃撃して事件はすぐに終わっていた」と述べ、銃の有用性を強調している。

 その一方、高校生を中心に銃規制を求めるデモや集会が相次ぎ、運動は全米に広がっている。ニューヨークで行われたデモにはあのポール・マッカートニー氏も参加。「これが私にできること。親友(ジョン・レノン)はこの近くで銃の暴力によって殺された。私にとって大事なことだ」とコメントしていた。

■精神状態のチェックに課題

 銃規制の機運が高まる中、再び発生した事件。アメリカの銃社会を変えることはできないのだろうか。

 ジャーナリストの堀潤氏は「テロ対策として、政治的なメッセージや事前に兆候がわかるものであれば未然に防ぐこともできるし、様々な対策も講じられてきたが、精神的な問題などが理由で起きしてしまう銃の事件にどう対処していくべきか、人権の問題もあるので難しいだろう」と指摘する。

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 カリフォルニア州に住むコラムニストの町山智浩氏は「フロリダでは州法が成立し、高校生たちが求めていたように、銃を買える年齢が18歳から21歳に引き上げられることになった。また、精神的な問題などに対処するためのレッド・フラッグ法というものの成立も各州で進んでいる。カルフォルニアは規制が厳しく、ロッカーを家に置かないといけない。ただ一旦所持してしまえば、その後で精神に問題を抱えた場合のチェックがない。日本では銃を所持するためには医師の診断が必要で、アメリカでもそうしようと訴えている人もいる。ただ、日本人があまり来ないような州では銃を持ったまま酒を飲みに行ったり、そこら辺にほったらかしておいたりしても全然問題ないというようなところがほとんどだ。銃を買える"ガン・ショー"というイベントもたくさんあり、そこはチェックが甘い」と話す。

■「最も過激なことを言っている人にこそ銃を持たせるのが正しい」

 また、銃規制が一気に進まない理由には、アメリカの成り立ちに関わる問題も横たわっている。

 「アメリカにおいて銃を所有する権利は、国家に対して革命を起こす権利。その権利を国家が制限するということは、反国家的なこと、反体制的なことを言っている人から銃を取り上げることができるということ。憲法の精神からすれば、それこそ政治的なメッセージを持っている人、最も過激なことを言っている人にこそ銃を持たせるのが正しい」と指摘。

 コロラド州出身のお笑い芸人のパックンは「本当は詳しい説明が必要だが、簡単に言うと、東海岸と西海岸の州では規制が強化され、銃による事件も減っている。ただ内陸の州の皆さんにとって銃はアイデンティティと密接な関係があって、銃を批判されると自分が否定されていると感じてしまう。日本人に味噌汁を飲んじゃいけないというような感覚。僕の実家にも狩りに使うための銃が20丁以上あるし、銃を手入れするのが趣味の人も結構いる」と説明した。

■「銃規制が噂されると売上が伸びる」

 そんな銃規制の議論で必ず登場するのが、NRA(全米ライフル協会)の存在だ。

 パックンは「高い殺傷能力が証明された銃の需要が高まることと、犯人が使った銃が規制対象になるかもしれないからと買う人がいることで、乱射事件が起きる度に銃の売上も上がる。また、NRAが銃規制の議論を許すかもしれないという話もある。なぜかというと、銃規制が噂されると、買えなくなるかもしれないと思った人たちが駆け込みで銃を買い始めるから」と話す。

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 町山氏も「すでに買った銃までは取り上げられないはずだということで、駆け込み需要が起こる。不思議な話だが、民主党が政権を取ると銃の売上げが伸びる。実際、オバマ政権の時に銃関係のメーカーなどは最大の売上げだったが、共和党のトランプ政権になると急に売上げが減って、レミントン・アームズという会社は潰れた」と説明。「一方、NRAの資金源は、会員500万人からの会費で、毎年2億ドルというものすごい額。それ以外にも企業との提携があり、デルタ航空やレンタカー会社はNRAの会員だと割引をしていた。しかし今、そうした企業がNRAとの関係を断ち切る方向に向かっているので、NRA会員であるメリットはどんどん減っていくだろう。アメリカでは人口の1割が3億丁の銃の大半を独占している状態。それがもっとひどくなるだろう」と予測した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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