「官僚の常識は世間の非常識」などとも言われる中、いまだに無くならないのが“天下り”。例えば、財務事務次官のA氏は退職金6340万円を得た後、大手新聞社や大手不動産で非常勤監査役・社外取締役を歴任。退職金を貰ってなお報酬・退職金がもらえるため、その待遇が問題視されてきた。
天下りに対する世間一般のイメージは良くないが、AbemaTV『AbemaPrime』に出演した元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏は「天下りは誤解を招く言葉」だと主張する。
「“再就職”と“あっせんを受けた再就職”は少し違って、後者を天下りという。グレーな人も表向きはあっせんを受けていないことになっていて、そういう意味では再就職。あっせんを受けた天下りが少しあって、グレーなものがあって、全くあっせんを受けていないものがある。天下りは形式的には違法。ただ、あっせんのレベルが分からないから(前文部科学事務次官の)前川氏のように本当に違法だと言われる人はちょっとしかいない」
また、自身が再就職である経緯を説明し「実力で再就職している人とそうでない人を分けて欲しい」と述べた。
天下り先で高待遇を受ける例として、ある文科省人事課OBの場合、2009年に一般財団法人と保険代理店に再就職し、年収は財団法人が週3日程度の勤務で700万円、保険代理店が500万円の計1200万円だった。そして2013年に財団を退職し、生命保険会社の顧問に就任。そこでは月2日の勤務で年収が約1000万円だったという。
このような待遇で天下りを受け入れる企業側にメリットはあるのだろうか。
元経産官僚で政策アナリストの石川和男氏は「私は80年代に役所に入った人間。その頃の感覚で言うと、OBを雇っている企業はそれなりに競争上優位であることは否めない。ただそれは昔の話で、今2010年代にOBを雇うメリットがどこにあるのだろうかと思う」との考えを示す。一方で、90年代から2000年代にかけて官僚の不祥事があったとし、「国家公務員倫理法もできて、官と民が阿吽の呼吸でやってきた部分が分断された。阿吽の呼吸をしたというのは傍から見たら嫌だと思うし、競争上おかしい。ただ、民間のビジネスの実態と予算やルールを作る霞が関が乖離してしまう。今のやり方だと官と民の距離が離れすぎてしまって、ニーズに合わないことが行われてしまう」とデメリットを指摘した。
2007年に国家公務員法が改正され、(1)同僚やOBの再就職あっせん禁止、(2)在職中、利害関係のある企業への求職活動禁止、(3)離職後2年間は元職場への働きかけ禁止といったルールが、一部例外はあるが定められた。
石川氏は「(2)が実際は拡大解釈されて、企業側が『こういう人が欲しい』というのもダメになった。白黒はっきりし過ぎ。忖度がいいとは思わないが、ちょっとくらいグレーなところがないと窮屈で仕方がない」との見方を示しつつ、「少し見直さないと。私がいた経産省は、安全のルールがやたら細かいけど、それを知っているのはやっぱり役人。その役人が仮に規制されている企業のアドバイザーになったら、的確に指導することができる。それが拡大解釈のせいでできない。官と民が離れすぎて、どこかで弊害が出てくると思う」と主張した。
この法案を企画したという高橋氏は「法律には『“自ら”求職活動をするのは禁止』と書いたと思う。関係業界に自分から行くというのはダメ、それだけの話」と述べた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)