
10日、「資(すけ)さんうどん」なるワードがインターネットを賑わせた。投資ファンドのユニゾン・キャピタルがうどんチェーン「資さんうどん」を買収したことで、全国展開されるかもと期待が広がっているのだ。
耳慣れない人も多いが、「資さんうどん」は福岡県ローカルのうどん店チェーン。1976年に1号店が開店して以来、北九州市を中心に42店舗を展開している。深夜営業、24時間営業の店舗も多く、北九州市民のソウルフードと言われている。

このニュースにTwitterは歓喜に沸きながらも、「ぼた餅最高なんだよなあ」「朗報すぎる。おでんと天ぷらで飲んだあとゴボ天うどん食べていなり買って帰りたい」「資さんうどんはうどんが名物じゃなくてかしわおにぎりとおでんです」と、うどん以外を勧めるツイートが続出した。実際にメニューを見ると丼もの、おにぎり、おでん、そしてぼた餅など種類が豊富で、この“なんでもあり”なところも魅力のようだ。
ユニゾン・キャピタルは過去、回転ずしチェーンの「スシロー」に投資し、業界トップに押し上げた実績を持っている。北九州のソウルフードと投資ファンドのノウハウが融合することで、新たな巨大うどんチェーンが誕生するのだろうか。
■ファンが公式応援歌を制作、地元に愛される「資さんうどん」
年間500杯のうどんを食べるというフリーライター、通称“うどんのお姉さん”の井上こん氏は「資さんうどん」を「北九州の雄」と語る。お店の人気No.1メニューは「肉&ゴボ天」。福岡県出身の井上氏によると「ゴボ天は福岡全体で定番の食べ物」だといい、甘辛く煮付けた鶏肉が乗っているメニュー「かしわ」も“北九名物”となっている。

「資さんうどん」の魅力について井上氏は「まずはトッピングの多さ。二十数種類のトッピングがある。2つ目はぼた餅やカレー、丼もの、朝の定食などがあって、いわばうどんファミレスのような存在であること。ここに行けば何かがあるという感じ」と語る。
「資さんうどん」を運営するのは「株式会社資さん」。1976年に大西章資氏が1号店をオープンし、42店舗の内訳は「うどん店」が39店舗、「ちゃんぽん店」が3店舗となっている。売上高は70億円以上(2017年8月期)、従業員は約1500人。モットーは「味良し、価格良し、元気良し」だ。福岡では、「牧のうどん」「ウエスト」と共にうどんチェーンの一角を担っている。

店舗戦略はドミナント展開で、井上氏は「北九州を中心に、近いエリアにどんどん出してきた。北九州のうどんという感じ。『牧のうどん』と『ウエスト』は割と広域で展開している」と説明。また、うどんは「トッピングに地域性がすごく出やすい面白い食べ物」だという。
「資さんうどん」には、創業者の大西氏にも認められているファン制作の公式応援歌が存在する。井上氏によると「福岡のうどん屋さんはテーマソングを持っているところが結構ある」そうで、さらに「北九州、小倉で育ててもらったと創業者もおっしゃっている。創業者はお亡くなりになった時に、遺産を北九州の施設に恩返しとして寄付している。そういう体質の会社」と地元で愛される要因を話した。
■ユニゾン・キャピタル下での店舗戦略は?
資産運用サービス「ウェルスナビ」の柴山和久CEOは、ユニゾン・キャピタルが「資さんうどん」を買収したことに驚きを示す。
「これまで色々な投資案件を成功させてきた有名なファンドで、そのファンドがどこに惹かれてこの『資さんうどん』を買ったのか。まず間違いなくあるのがブランド。お客さんが応援歌を作ってくれるブランドというのは、どのような経営のプロ、投資ファンドでも作れないので、それを買いにいったというのはあると思う」

ユニゾン・キャピタルは、東ハト(2003~2006年)、クラシエ(2006~2012年)、ミスター・ミニット(2011~2015年)などの案件を手がけてきた投資会社。柴山氏によると、投資ファンドには「コストを削減して業績をよくする」「売上げを増やしていく」の2パターンがあり、ユニゾン・キャピタルは「両方やる場合がある。プロの経営者を連れてきて、企業の業績を改善させていく実績があるファンド」だという。
そのユニゾン・キャピタルが着目したというのが大きなポイントだ。ユニゾン・キャピタルは今回の買収について「『資さんうどん』は、よい味とサービス、地域ブランドを持った本当のブランド、地域に愛されるブランド。ゆえに、成長させる価値があると判断した」としている。
柴山氏はこの見解について、「文字通りだと思う。ブランドは金融のプロ、投資ファンドには作れない。また成長させると明確に言っているので、店舗を増やしていくと思う。井上さんがドミナント戦略とおっしゃっていたが、1県1県攻めていくというパターンもあれば、一気に全国展開、海外展開するという両方のパターンがあり得る」との考えを示した。

同じ九州発で、東京から海外へと進出した企業に「一風堂」がある。柴山氏は、一風堂が東京進出に10年、ニューヨーク進出に23年かけたことを引き合いに「(ユニゾン・キャピタルは)店舗数の2倍、3倍を目指していると思うが、それも控えめだと思う。どれくらいの時間で達成するのかが戦略上は重要。(一風堂と)同じく九州から全国ブランド、国際ブランドに育てていくということを念頭において、それをどれくらいのスピードで実現させられるのかを考えていると思う」との見方を示した。
これを受けて井上氏も「一風堂は一昨年の6月に博多にある博多うどんの店を事業承継した。それで東京にも博多うどんの店を徐々に出して、うどん事業にも乗り出している。それがもしかしたらモデルになるのかな」と期待を寄せた。
「資さんうどん」の前には、讃岐うどんの2大チェーンである「丸亀製麺」と「はなまるうどん」というライバルが立ちはだかる。柴山氏は「追いつく側からすると厳しい差が開いていると思う。両方とも海外に進出していて、そうするとブランド力をどれだけ活かせるか(が重要)。また、一気に全国展開するとこういう会社と戦わないといけないので、戦線が伸びきってしまって補給が効かなくなる。恐らく1地域1地域を順番に制圧していくドミナント戦略を取ると思う」との見方を示した。
一方、井上氏は海外展開の見込みとしてアジアを提案。「『資さんうどん』のおつゆは少しだけ甘めで、やわらかい麺もアジア圏には馴染みがある。味付けも甘辛いのが好きなので、入りやすいと思う」と述べた。
ユニゾン・キャピタル下で「資さんうどん」がどのような店舗戦略を取るのか。今後の展開に注目が集まる。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)