財務省の福田淳一事務次官が女性記者にセクハラをしたとされる問題で、テレビ朝日は社員が福田次官からセクハラ被害を受けていたことを明らかにした。
事態が大きく動いたのは18日の夕方6時20分ごろ。麻生外務大臣は急遽会見を開き「福田次官から『疑惑について引き続き身の潔白を明らかにしていきたいが、この報道をきっかけにした現在の状況を鑑みると、職責を果たすことが困難である』として辞職の申し出があり、私としてはこれを認めることにしている」と発表した。
その30分後には福田次官が会見を行い、辞任の意思を表明したうえで「週刊誌に掲載された私に関する記事については事実と異なるものと考えており、裁判の中で争ってまいりたい」と引き続き裁判で争う姿勢であることを説明。音声データとして残されている女性記者との会話については「新聞記者の人とは、男女問わず1対1で会合を持つことはもちろんある。ただし、あそこに書かれているような発言をしたことはない。あんなひどい会話をした記憶はない」と発言を明確に否定した。
「福田氏は先ほど財務次官を辞任する旨を発表して、週刊新潮が指摘したセクハラ行為を否定している。しかし、当社社員に対するセクハラ行為があったことは事実であると考えている」
きょう未明、テレビ朝日が会見を開き、篠塚浩報道局長は社員の女性記者が福田次官からセクハラ被害を受けていたことを明らかにした。続けて、「女性社員は精神的に大きなショックを受け、セクハラ行為について『事実をあいまいにしてはならない』という思いを持っている。当社は福田氏による当社社員を傷つける数々の行為と、その後の対応について財務省に対して正式に抗議をする予定」との姿勢を示した。
テレビ朝日の説明によると、女性記者がセクハラ被害を受けたのは1年半ほど前から数回で、取材のために福田次官と1対1で会食をした時。その度にセクハラ発言があったため、女性記者は自らの身を守るために録音していたという。テレビ朝日は社内調査の結果、福田次官によるセクハラ行為があったと判断した。
女性記者が週刊新潮に情報を提供した経緯について、篠塚報道局長は「（当社社員が）上司に『セクハラの事実を報じるべきではないか』と相談したが、上司は放送すると本人が特定され、二次被害が心配されることなどを理由に報道は難しいと伝えた。そのため、財務次官という社会的に責任の重い立場にある人物による不適切な行為が表に出なければ、今後もセクハラ被害が黙認され続けてしまうのではないか、という強い思いから週刊新潮に連絡をし、取材を受けた」と説明。社内で適切な対応ができなかったことについては「深く反省をしている」と謝罪しつつ、「当社社員が取材活動で得た情報を第三者に流したことは報道機関として不適切な行為であり、当社としては遺憾に思っている」と述べた。
この会見を受けて福田次官はきょう午前、記者の「セクハラはなかったのでは？」と問いに「そうですよ」と改めてセクハラ疑惑を否定している。
財務省は調査の方針として女性本人に名乗り出て欲しいとし、その対応には被害者への配慮が足りないと批判も起こっていたが、ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏も財務省の対応は「ありえない」と憤りを露にする。
「被害を受けた方が今どんな気持ちで、名乗り出ることがどれだけ心の負担になっているかを全く考えていない。セクハラ疑惑が本当だとしたら信じられないし、その後の対応も信じられない」
一方、テレビ朝日側にも苦言を呈する。セクハラ被害を訴えた女性記者に対して上司が「報道は難しい」と話したことについては「反省しすぎても足りないぐらい。二次被害はもちろん注意しなければいけないことだが、報道する以外にも財務省に抗議をするとか、社内に対策窓口を作るとかいくらでも方法がある。」と指摘した。
こうした状況を受け女性記者は週刊新潮にデータを渡したが、それに関しては「他のメディアに持っていくというのは、報道機関であるテレビ局の社員であればその意味合いは大きいはず。それほど悩んでいたということは想像できる」と推測。テレビ朝日の「第三者に情報を渡したことは報道機関として不適切な行為であり、遺憾に思っている」とのコメントには、取材とセクハラから身を守るための行動を混同しているとし、「テープを聴く限り、（録音は）あくまでもセクハラを防止するために取った行為。女性記者が批判されるべきではない」と反論した。
では、セクハラ被害の相談があった場合、どのように対処すべきなのか。竹下氏は「大事なのは、相談を受けたらまず『あなたの立場に立ちますよ』と強いメッセージを出して、セクハラ・パワハラを許さないとトップが表明すること。この問題に全力で取り組むということを相談した本人に表明して、相談窓口があるとか、自分でなければ弁護士に相談してほしいと次の手段を提供する。その後に調査や今後どうするかを考えるべき」と述べた。
（AbemaTV／『けやきヒルズ』より）
▶︎放送済み『けやきヒルズ』の映像は期間限定で無料視聴が可能。
