財務省の福田淳一事務次官が女性記者にセクハラをしたとされる問題で、テレビ朝日は18日、福田次官からセクハラ被害を受けていたのが同社記者だったことを明らかにした。女性社員は、一年半前から福田次官との1対1の会食を重ねていて、その際にセクハラ発言が多数あったことから、途中から会話を録音していたという。一方で、福田次官は19日の記者団の囲みに対してもセクハラを否定している。

 19日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、改めてテレビ朝日の記者会見をノーカットで放送するとともに、女性記者や会社の対応の是非、報道機関の取材のあり方などについて議論した。

■「取材先からのセクハラは我慢しろ」という風潮

 まず、メディアで働く女性を巡る問題について、国際政治学者の三浦瑠麗氏は「福田次官は接客業の女性を例に出したが、そういうことを女性記者に対してするのも当たりという前の文化、風潮があるということが、ここ数日でどんどん明るみになってきている。つまり"素人"である女性記者が、なぜか"玄人"的に扱われる空間が日本には存在するということだし、"お得意様"である取材先からのセクハラは我慢しろ、という風潮は他の業種よりもあると思う」と指摘。

 その上で三浦氏は「メディア業界にはもっと酷いセクハラを受けてきた女性記者もいるはずだが、先輩の女性記者が"受け流し方"を若い女性記者に教えるような場面もあっただろう。また、男性記者が"あいつカラダを使ってるんだよ"みたいな噂を流す場合もある。今回、すでに"接待要員として使っていたのかよ"というようなヘイトも出てきている。そういう二次被害も大きな問題だと思っている」と懸念を示した。

■『週刊新潮』に音声データを渡したことの問題点

 しかし、そもそもメディアには「取材した情報を第三者に渡してはならない」という原則がある。にもかかわらず今回、女性記者は無断で会話を録音、さらにその音声データを所属先ではない"第三者"の『週刊新潮』に提供してしまった。会見でもテレビ朝日側はこのことを「不適切な行為だった」としている。

 女性記者が音声データを提供するに至った背景には、セクハラ被害を訴えられた上司が適切な対応を取らなかったという事実もある。番組には「やってはいけない行動を取らせたのはテレビ朝日」「テレビ朝日も加害者だと思う。一年半、"看過できない"と言いながら何もしなかった。そうなると失望、絶望して他にチクるしかなくなるよな」との意見も寄せられた。街の女性たちからも「自分の会社がテレビ朝日のような対応をとる会社だったら、ちょっと嫌」など、厳しい意見が相次いだ。

 毎日新聞の元記者で、弁護士の上谷さくら氏は「自分の身を守るためだったと思うし、会社も守ってくれないという中で週刊誌の力を借りようとした中でのこと。そこまで責められるだろうか」との見方を示し、『東洋経済オンライン』の山田俊浩編集長は「新聞記者がオフレコ懇談の内容を雑誌に匿名で流すということは従来からあった。第三者に流してはいけないというのは建前で、実態は結構流されている」と説明した。

 一方、三浦氏は「『週刊新潮』の記事には、福田氏が麻生大臣に言及する箇所など、セクハラとは関係ない政治的な発言も含まれている。場合によってはセクハラを告発する目的だったということでは済まなくなるので、テレビ朝日としてはそこも問題視しているはずだ」と指摘した。

 さらに三浦氏はテレビ朝日の会見について「メディアに対してメディアが取材するという状況で、お互いに色々分かっているとうこともあり、質疑はひとつひとつが的確だった。ただ残念な点を挙げるとすれば、この問題は『週刊新潮』の報道によって初めて世に出たわけなので、週刊誌およびネットメディアの記者も参加させても良かったのかなと思う」と指摘した。

■小松アナ「信頼は地に落ちた。一から出直さなければ」

 番組MCのテレビ朝日・小松靖アナウンサーに対して、視聴者からは「今日の小松さんはおとなしい」「歯切れが悪い」といったコメントも寄せられていた。

 小松アナは「今回の件で、メディアの取材の仕方の問題点が浮き彫りになっている。自分でこういう言い方をしながら、若干卑怯だなと思うのは、あたかも引いた目で、自分に関係ないもののように取り扱わなければいけない」と、言葉を詰まらせながら話し、「テレビ朝日の公式なステートメントやスタンスをしっかりと表明しながら、私個人として話そうとやっている中で、"やっぱり今日だけは違うんですか"と思われるのとても苦しい。でも、それは我々の責任、身から出た錆だと思う。はっきり言って、テレビ朝日の報道の信頼は、地に落ちたと言っても過言ではないと思う。取材対象者に無断で録音し、それを取材で得た情報と位置付けて報道してしまうような放送局なのではないかという不信感。あるいは業務を遂行する中で身体的・心理的なダメージを受けた従業員を守ってくれない組織だという不信感。テレビ朝日はセクハラの被害者である女性社員を抱える、ある種の被害者であると同時に、この女性記者を守りきれなかったということも事実。だからこそテレビ朝日の社員として向き合わなければいけない、一から出直さなければいけない」と語った。

 さらに、テレビ朝日の会見をAbemaTV「AbemaNewsチャンネル」が生中継しなかったことについて問われた小松アナは「いつもはあれだけ迅速に中継ができるメディアが、なぜ自局内での会見を中継できないのかという疑問を持たれるのは当然だし、その批判は甘んじて受けなければいけない。その理由が説明できなければ、我々が言っていることを信頼してもらえなくなるのも認めざるを得ない。避けたというわけではなく、"会社の判断"としかお伝えしようがないのが実情。いつも"本音"だ、"大人の事情をスルー"すると言いながら『AbemaPrime』をやっているので、言い訳はできない。そういう批判や失望を一身に受け止める覚悟がないと、社会を斬る、時には人を不幸にしてでも事実を伝えるという資格がない」と絞り出した。

 山田氏は「今の状況では、飛び出した女性記者だけが"秩序を乱した"と叩かれてしまう可能性がある。こうした問題を根絶すべきいい機会になるので、一人の戦いにせず、ぜひ他のメディアも自社の記者にヒアリングして仲間になったらいいと思うけど、どうもテレ朝叩きの方向に行ってしまう動きが懸念される」とコメント。

 上谷氏は「今回テレビ朝日が非常に非難されているが、これが他社だったらどうしたかというと、私は自分のメディアで報道できた社はないと思う。抗議や配置替えはあったとしても、同じように対応したと思う」と指摘した。

 三浦氏は「テレビ局は遺族の了解を得ずに実名報道するなど、散々権力をふるってきた。そういうダブルスタンダードが見えてきてしまう。あえて断定的に言ってしまうが、女性記者が一人で頑張って告発をして、結果的にテレ朝も財務省も、それから行為をしたとされる財務次官本人も討ち取られたということだと思う」と話した。

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