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 これまで国際的な批判をものともせず核・ミサイル実験を繰り返してきた北朝鮮。20日、盛大な拍手で迎えられた金正恩委員長は「核の兵器化完結が検証された状況で、もはや我々にいかなる核実験や中・長距離ミサイルや大陸間弾道ミサイルの発射実験も必要なくなった」と突然の宣言を行った。

 北朝鮮情勢に詳しい拓殖大学大学院の武貞秀士特任教授は「27日の南北首脳会談、5月末から6月はじめにかけて予定されている米朝首脳会談に向け、韓国、アメリカ、国際社会の期待に一部応えようとする姿勢を示し、外交交渉の波に乗ろうとしている。外交にチャンネルを切り変えたという意味では大転換だが、あくまでも核兵器を持ち続けた上での切り替えだという風に見なければならないし、核を廃棄することはないだろう」との見方を示す。

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 その上で武貞氏は「南も北も、本音は統一の問題を考えている」として、南北首脳会談の真のテーマは朝鮮半島の非核化以上に"南北統一"だと読み解く。

 「北朝鮮は2012年、憲法序文の中に核保有国であると書き込んだ。さらに、核兵器がなければ北朝鮮主導での南北統一は難しいと考えている。朝鮮半島をアメリカの介入なしに統一するための絶対必要な装置が核兵器だと思っているので、統一が実現するまで捨てないはずだ。北朝鮮としては、どんどん韓国が近代化し、時刻との格差が広がっていけば、統一した時に韓国に仕切られるのではないかと恐れている。そのため、できるだけ早い時期に自分たちの手で統一を実現させたい」。

 一方の韓国の思惑については「朴正煕大統領の頃には、ゆっくりと体制の競争をしながらどちらのイデオロギーが国民を幸せにして、繁栄できたか競争しようという戦略だった。ところが統一が先送りされればされるほどアメリカや中国に途中で介入して口出しされる可能性が出てきたため、韓国なら北朝鮮を説得できると考えて結んだのが南北共同宣言」だと指摘する。

 2000年、韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記によって実現した初の南北首脳会談で結ばれた共同宣言では、「わが民族同士、互いに力を合わせて自主的に解決していくことにする」と謳われていた。

 「金大中氏がやろうとしたのは、連邦制・連合制のような形で、少しずつ朝鮮半島を統一に持っていくこと。あくまでも在韓米軍の助けは借りず、各国がしっかりと優しい心で、太陽で外套を脱がすような包み込み方をすれば北も感謝して統一に向かうに違いないと。その過程で自然と休戦協定は平和協定に変わるし、北は軍事的な圧力をかけるのをやめ、在韓米軍も要らなくなる、そんな考え方だった」。

 しかし金大中氏は志半ばで死去する。「金大中氏は、文氏に"君の代でやってくれ"と言って亡くなった。そしてお弟子さんの文氏は政治家になり、大統領になった。だから文大統領は心の中に統一を秘めている。文在寅政権の支持率も高くなっており、平昌オリンピックをきっかけに論理よりも感情の方に韓国社会がどんどんスイッチしている」。

■日本は直接対話に乗り出すくらいの覚悟でいなければならない

 各国の思惑が絡み合う中、日本が解決したいのは拉致問題だ。

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 武貞氏は「日朝間で拉致問題は最大の問題だが、トランプ政権は非核化が重要、韓国はやはり民族の統一が重要。国際社会が日本のことをいつも考えて、首脳会談の雰囲気が悪くしてでも"日本のことをもっと考えてくれ"と追い詰めてくれるというのは期待過剰ではないか。直接対話に乗り出すくらいの覚悟でいなければならない」と指摘。

 その上で「新聞記事にした途端に潰れることがあるのが日朝関係だが、ニューヨークには国連代表がいて、スイスやストックホルムやフィンランド、マレーシア、中国、双方の大使館があるので、そういったところで首脳会談の可能性について打診はしているという情報は聞いた。タイミングについては南北首脳会談、米朝首脳会談の後だということで大体の人の意見は一致している」と明かした。

 しかし武貞氏は「それでは遅すぎる」とも話す。「南北首脳会談、米朝首脳会談の後では、拉致問題の重要性は薄れていく。今でさえ周回遅れの日朝外交が2周、3周遅れになりかねない。このタイミングで、やはり何らかの形で日朝国交正常化も視野に入れ、関係改善、拉致問題解決に動きたい。拉致問題解決は2002年に小泉総理と約束したことであるから、突拍子もないことではない。しかるべきルートを通じて平壌でお願いするべきだ」と主張した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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