思わぬことで注目の的となってしまった大相撲・春巡業だけど、4月1日の「伊勢神宮奉納相撲」から始まって、今日27日の埼玉・越谷場所で千秋楽となる。
巡業は春夏秋冬4シーズンに行われ、「春(4月)関東、東海、近畿」、「夏(7~8月)東北、北海道、信越」、「秋(10月)東海、北陸、関西、中国、四国」、「冬(12月)九州、沖縄」と、日本全国をくまなく周る。この春巡業などほぼお休みなしで、おすもうさん、みなさん実に働き者だ。
そもそも巡業とは全国津々浦々の体育館などで、それぞれ地元の「勧進元」が主催者となって開かれる相撲興行で、その目的は相撲の普及とファンとの交流、地域の活性化などがある。また力士たちにとっては、巡業が別名「稽古場所」と呼ばれるように、日ごろは稽古がなかなかいっしょに出来ない「他の相撲部屋の力士たち」と稽古することが目的。
そんなわけで、私が今回見た「柏場所」(4月18、19日に開催)でも朝8時の開館と共に朝稽古がスタート。巡業には序二段力士から幕内力士までが参加していて、稽古も序二段、三段目、幕下と進んで行く。
序二段~幕下の稽古はそれぞれ土俵上に全員がみんな上がって、一組の実戦的な稽古(取組)が終わると、勝った方が土俵に残り、周りを取り囲んでいた力士が次々に「オレがオレがオレが」と手を挙げ、勝った力士が指名して稽古が続けられる。誰も彼もやる気にあふれていて、見ているだけでエネルギーをもらうよう。
しかし、ふと土俵下や周囲に目をやると、稽古熱心な十両、幕内の関取衆が早くもまわし姿で四股を踏んだり、ゴムチューブを使ったトレーニングをしていたり、準備運動をしていて、まったく目が離せない。この日も横綱・鶴竜が早々に土俵下でトレーニングをしていて、目が釘付けに。その後、十両、幕内の関取たちの土俵上の稽古が始まると、こちらはかなり白熱! 本場所の土俵さながらの真剣なぶつかりが見られて、稽古とはいえ、かなり興奮させられる。
柏場所ではご当地関取である十両の隆の勝が奮闘! 格上の関取たち相手に次々稽古に臨み、その度に「柏出身の隆の勝」とアナウンスされて場内から拍手が沸く。俗に「かわいがり」と呼ばれる、エンドレスか?と思うほどに激しく続けられていくぶつかり稽古では、隆の勝は身体中に土俵の土をつけながらも立ち上がり、がむしゃらにぶつかっていく。力士はこうして限界を超える稽古で強くなって行く。隆の勝、五月場所はかなり期待できそう。
またこの日、誰よりも熱心に稽古していたのが栃ノ心。身体をピンク色に染めて汗びっしょりで何度も何度もぶつかり稽古をしていた。大関昇進へ!の強い気持ちを感じた。
こうした稽古の合間には人気力士による握手会なども行われるが、実は握手会だけじゃなく、場内あちこちでファンと力士たちが直接交流できるのが巡業のお楽しみ。稽古を終えたときなどに「サインお願いします」「一緒に写真お願いします」というと、人気力士たちが次々気軽に応じてくれ、場内あちこちで興奮の瞬間だらけ! 特に赤ちゃんや小さな子を抱っこしての撮影には関取のみなさんニコニコ笑顔で応じていて、ほのぼの空気が広がる~。
実はこの日(19日)は熱があり、翌日からは肺炎で休場した横綱・白鵬もそんな事情は微塵も見せず、“神対応”でサインや撮影に応じていた。白鵬の巡業での神対応はすでにファンの間では有名なので、白鵬が出てくるとワッと大きな輪が拡がり、横綱はその全員のサインに応じ、撮影も笑顔でこなしていた。ちなみに白鵬@巡業で有名なのはもう一つ、取組の順番を待つ間に、呼出しさんの肩に寄りかかるポーズをキメること! ここ、インスタ映えポイントですから! 今後、巡業に行く人は忘れずに!
さらに、もう一つインスタ映え・ポイントといえば、力士のみなさんが仲良く話したり、ふざけあったりする様子でしょう。スー女たちは特にこの「力士たちのわちゃわちゃ」姿が好物で、あちこちからシャッターが切られ、巡業後にはSNSにそういう写真があふれるのだ。
巡業ではもちろん、序二段~幕内までの取組が行われるが、それだけでなく「お好み」という出し物がいろいろ見られる。この日は初切という、相撲の禁じ手を面白く紹介するショー的な見世物や、相撲甚句が歌われた。相撲甚句は力士独特の民謡で、哀愁ある節回しが美しく、相撲ブルースと呼びたい。
いろいろ話題となっている「子供たちと関取たちとの稽古」も、毎回行われ、柏場所では地元の相撲クラブに所属する、未来の関取たちが堂々たる体躯で、稽古を積んだ証しの相撲ぶりを見せて、おおっ!と驚かされた。いろいろな声が飛び交うが、土俵の上では子どもだってみんな真剣。今後どうしたらいいか?は当事者たちが意見を交わしてゆっくり決めていけばいいと私は思う。
楽しく見応えのある巡業、次は名古屋場所後になる。ちなみに体育館の中は土足禁止。巡業に絶対持って行かなきゃいけないものは、スリッパ(上履き)だってこと、何より声を大にして言っておこう。【和田静香】
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