
韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長の歴史的な会談後に署名された「板門店宣言」には、"朝鮮半島の完全な非核化"という目標が盛り込まれた。「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」が指すのは、在韓米軍やグアムの戦略爆撃機の核を意識しているのだろうか。
トランプ大統領はFOXテレビの電話インタビューに対し「私が大統領に就任した時、人々は核戦争になると思っていた。今、人々は北朝鮮問題が解決に向かっていると言っている。我々は非常にうまくやっている。まあ見ておけ」と話した。
28日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元在韓国特命全権大使の武藤正敏氏は「今まで在韓米軍は韓国を北朝鮮から守るということが主眼だったが、みんな言わないだけで、海洋進出してきて中国もその対象になってきている。だからアメリカは簡単に引くことはできない」と話す。

コリア・レポート編集長の辺真一氏は「アメリカの敵対政策が撤回されない限り、北朝鮮は核を持ち続ける。北朝鮮を攻撃しないということを宣言するだけではダメだ。私たちは北朝鮮に対して、完全で、不可逆的で、検証可能な非核化を主張している。北朝鮮も同じようにアメリカの体制保証が、完全で、不可逆的で、検証可能なものでない限りは非核化しないということ」とした。
金正恩委員長は21日、アメリカ本土が射程に入るICBMの発射実験の中止を明言した。しかし、日本が射程の短・中距離ミサイルには一切触れなかった。北朝鮮は短距離ミサイル「スカッド」や中距離ミサイル「ノドン」など1000発以上を実戦配備しているとされる。現時点では、これらの脅威がどうなるのか、先行きは見えない。
トランプ大統領との会談前、安倍総理は「ICBMだけが廃棄されたのでは日本にとって意味がないわけであって、中距離・短距離も含めて日本を射程に入れるミサイルもしっかりと廃棄されるべきと申し入れる」と語っていた。しかし、先月末に金正恩氏と事前会談を行ったアメリカのポンペオ新国務長官は「米朝会談の目的はアメリカが直面する核兵器の脅威に対処することだ。北朝鮮の指導者にアメリカを核兵器の危険にさらす試みを断念させる」と述べている。さらに南北会談の当日にICBM迎撃基地をテレビ朝日の他、世界8社に公開した。ICBMを開発しても無駄だという北朝鮮へのメッセージなのだろうか。もしアメリカがICBMの凍結や廃棄に交渉の焦点を合わせれば、短・中距離ミサイルの脅威は取り除かれないままになる。
朝日新聞によると、ある自民党の閣僚経験者は「トランプ氏は"アメリカの脅威を取り除いた"とアピールできる。一方で脅威が変わらない日本に武器を売ることも可能だ。北朝鮮の体制は守られ、日本は蚊帳の外もありうる」と話したという。

これについて辺氏は「アメリカがアメリカのことだけを考えるのは仕方がない。3億2千万人の国民の生命・財産に直結する問題が核ミサイルなので、まずはICBMを阻止する。今から16年前、小泉政権下での日朝平壌宣言の1か月後に国交正常化会議が開かれて、安全保障会議を開くことで合意した。安全保障会議で北朝鮮のミサイル問題が話し合われることになっていた。ところが拉致問題が進展しなかったために、今まで一度も開かれていない。北朝鮮としては日本との交渉のカードにノドン、スカッド、潜水艦弾道ミサイルを使おうという考えだと思う」との見方を示す。
自民党の青山繁晴参議院議員は「29日早朝に出発してハワイ真珠湾の太平洋総司令部で話をしてくる。自分の自由な意見を言いたいので自費で行く。去年5月、議員になって最初に行って、8月、12月、今回が4回目だ。そこで私は、短・中距離ミサイルをアメリカが認めたら、日本は核武装せざるを得ないと話した。誰がどう言ったかは棺桶まで持っていくが、日本の技術力で核兵器を作ることもできて、それをきっかけにブラジルもスウェーデンも持ってしまうことをアメリカはわかっている」と話した。

武藤氏は「ポンペオ氏が行った"アメリカを第一に"という議会証言だが、これはあくまでも議会での発言だ。議会の人たちの理解を得るためにという側面があると思う。あの発言を聞いて"えっ"と思ったが、鵜呑みにする必要はない。ただ日本人として、今までのように日本が平和愛好国であれば各国がそれを尊重してくれるという時代ではないという意識を持つべき。北朝鮮がいつ攻撃してくるかは分からない」と警鐘を鳴らした。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)

