『ワンダフルライフ』で1998年に銀幕デビューを飾った井浦新(当時はARATA名義)は、本年で俳優として20周年を迎える。様々な人物となり、スクリーンで躍動している井浦だが、「映画の世界でキャリアを積ませてもらって、勉強させてもらった」、「映画に対しての愛情は当たり前にものすごく深い」と、てらうことなく映画への想いを本インタビューにて語った。役や作品への向き合い方は、年を経て手練れになるどころか、「一本勝負の連続だ」と話し、真摯な姿勢に惹きつけられる。それこそが、唯一無二の存在として光り、オファーが引きも切らない理由なのかもしれない。

 井浦の10年来の朋友・かなた狼監督が手掛けた映画『ニワトリ★スター』では、深夜のバーでアルバイトをする傍ら、大麻の密売をし日銭を稼ぐ草太をエネルギッシュに演じた。草太とともに自堕落な毎日を過ごす楽人(成田凌)とのままならない、けれども、かけがえのない日々が、奇想天外な映像と、ロマンティックなタッチで綴られていく新感覚の物語。3月17日に公開を迎えて以降、井浦らの精力的なPRや口コミでの人気で全国でじわじわと輪が広がり、楽人の故郷でもある沖縄でも、4月23日よりロードショーとなった。そこで、第10回沖縄国際映画祭に来訪した井浦を直撃、他の作品では持ち得ない本作の魅力を語ってもらった。

ーー10年越しの約束を経て出演した『ニワトリ★スター』には、並々ならぬ思いがあるのではないでしょうか?

井浦:2016年の夏に撮影していたので、今、2年が経とうとしているんです。僕は10年ほど前に、かなた狼(監督)と友人として出会って、そのときは、まだ彼も監督ではなくアーティストでした。出会って間もない頃に、「いつか映画を撮りたいと思っているから、撮ることになったら新、頼むな」という話をされたので、「準備ができたら、いつでも声をかけてきてください。こっちはスタンバイして待っていますよ」と言ったんです。共通の友人がいたりもしたので、いろいろな意味で、僕も「この人とは、ちゃんと決着をつけないといけないな」というのは、ちょっとありまして。

ーー井浦さんは、ずっと「待って」いらしたんですね。

井浦:そうですね。その間にも、「『ニワトリ★スター』という小説を作った、映画化するために、今こういう動きをしているんだ」という話を聞いていました。映画が作られていく過程を僕は、傍らでずーっと見ていて。ようやく、こうやって公開されていった感じなので、思い入れとしてはやっぱり強いです。もちろん、普通にお仕事をいただいて、いい関係性で、現場で芝居をやらせてもらって心に残る作品ができたら最高ですし、そうした経験もこれまであります。けれども…、映画がゼロから作られて飛び立っていくまで、その全部を傍らで見ていられることは、役者の仕事をしている中でも簡単にはあることではないから。

ーー本作への想いを言葉で表すなら、どうなりますか? 一言では難しいと思うんですが。

井浦:うーん…、どっちなんだろうなあ…。今、ふたつの言葉が浮かんでいるんです。「愛」か「けじめ」か。最初は「けじめ」、結果的に「愛」なんですよね。僕は正直、どんな役でも良かったんです。かなた監督が、『ニワトリ★スター』を作ってきて、「新には、これをやってもらう」と、いただいた役でけじめをつければいいと思っていたので。でも、主演をいただいたので、その「けじめ」のつけ方も広範囲になってくるし、よりぶっといものを求められるので、監督との勝負という感じでした。そこには映画や監督に対する愛情がありました。

ーー今回バディ役には成田さんがキャスティングされました。お相手によって随分作風が変わってくる印象も受けます。

井浦:僕は当時、凌の存在自体を全然知らなかったんです。オーディションをしている時期は、監督が東京に来て、「今日、こんな奴に会ってきた」という連絡はくれたので、話を聞いてはいたんですけど、なるべく僕は口を出さないようにして、助言もしませんでした。自分の意見も、なるべく言わないようにして。

ーーそれは俳優・井浦さんのスタンスなんでしょうか?

井浦:僕は、かなた監督よりかは、少なからずこの映画の世界でキャリアを積ませてもらったので、映画監督の大変さ、苦しさ、映画を作ることの難しさなどを肌身で感じていました。苦しんでいる監督たちの姿を、これまで何度も見てきていますし、巨匠と言われる人でも、時期や時代によっては映画が撮れないときもあったりもします。一方で、新人監督が、ちゃんと一本の映画を撮るために、どれだけ大変な思いをしているのかという姿も見てきました。かなた監督は仲間でもあるし、決着をつけなきゃいけない人でもあるからこそ、自分がそこで助けていったら、監督のためにならないと思った。だから、自分はとにかく監督からのGOサインが来るまで、話は聞くけど、お互い甘えはナシでいて。時にはサラっとあしらって(笑)。

ーーあしらったんですね(笑)。「アドバイスを求めたい」風であっても、井浦さんはあえて選択肢を投げないと言いますか。

井浦:大事なことや核心は言わないようにしました。「こっちもいいし、あっちもいいけど、それは監督が決めるんじゃないの?」みたいな。「こうしたほうがいい」と誘導していくことは、絶対にしないように心がけていました。監督が全て決めていく、生む苦しさというのをちゃんと知らないと。だって、そうじゃないと、現場が始まってからのほうが、もっと大変ですから。作られていくまでも大変だけど、現場はもっと大変で、さらに、撮り終わってから編集になると、またさらに大変になる。その先の先まであるから、撮る前の段階から、ちゃんと監督としての力をつけていかないといけないんです。

 かなた監督は、見事にそれを全部やり切っていきましたからね。だから、すごい人間力だと思っています。監督という仕事は、人間力があるかどうか、なんですよね。センスや技術的なことももちろん大事ですけど、トータルではやっぱり人間力なんです。『ニワトリ★スター』の現場に限らず、人間力がなければ、映画の現場で様々な部署の猛者たちを束ねていくことなんて、本当にできないので。かなた監督は、誰からも教えてもらっていないのに見事に発揮していましたね。だから、「ついていこう」、「今の自分の持っているもの全てを、この監督にぶつけていこう」という思いにもなりました。そういうところも、正直あるんです。僕の中では一番大きいですね。

ーーだからこそ、かなた監督の要求も非常に高かったのではないでしょうか?

井浦:『ニワトリ★スター』では、今まで、自分でさえも見たことのない自分を表現することを求められました。それは、自分のためではなく、かなた監督に対してどんどんぶつけていくというような…。やっているときは無我夢中で、かなた監督も現場に入ったら、僕のことを本当、殺しにかかってくるんで。例えば、「今まで新がやったような芝居をちょっとでも見せたら、俺、絶対にオッケーを出さないからな」と言われてね。僕の生理的な癖みたいなものが無意識に出てしまったりしたときは、「はい、もう1回」みたいな感じで言われましたし。

ーーかなた監督は観たことのない井浦さんの画が欲しいし、井浦さんからもそういうのを出したいというような思いがあったんですね。

井浦:もちろん、もちろんです。監督が映画の撮影までに、どんなことをやってきたのか、どんな苦しみの中から、やっと、この撮影初日を迎えられているのかも、全部知っているので。どんな仕事でも真剣勝負ですけど、これはまた、真剣勝負の度合いもちょっと違うというか、自分の今までやってきたマックスの状態をやっても通用しないものなので…やっかいな仕事でしたね(笑)。でも、やっかいだからこそ、僕の中の一生ものになっていくんだろうなって思いましたし。

ーーそうした井浦さんの作品への取り組み方は、成田さんや世代が下の俳優には特に刺激になるのでは?

井浦:どうでしょうね? 凌は…ないんじゃない(笑)? 紗羅(マリー)のほうは、共通の仲間もいて、プライベートでも一緒にいる時間があったりもした、稀な関係性だったんです。『ニワトリ★スター』で、まさか紗羅が参加してくることになるとは、想像もしていなかった。紗羅にとって、初めてのお芝居への挑戦だったんだけど、「女優をやりたいから、やりたい」というような話ではなく、僕と同じような感覚がちょっとあるんだろうなと感じていました。それに、紗羅なら乗りこなしちゃうんだろうなっていうのも、どこかで思ったりもしていて。彼女は努力家だし、そもそも持っている才能もしっかりある人なので。凌よりかは、僕は安心していたところは正直あります。

ーーそうだったんですね。

井浦:うん。だから、結局、何のアドバイスも紗羅にはしていないです。僕はもう見守っているだけで、「それが正解だから、大丈夫。紗羅のやっていることは間違っていない」と思っていました。プライベートでも、紗羅とは特に熱く語っているわけでもないですけど、現場への愛情というもの、愛を持って映画に飛び込んでいっているという姿だけは、言葉にせずとも行動で自分がやっていれば、紗羅はちゃんと届くタイプだなというのは分かっていました。紗羅には伝わっただろうけど、凌は…伝わっているかどうかはわからないです(笑)。

ーーまた成田さんは違うタイプなんでしょうか(笑)。井浦さんは様々な役者から共演を望まれるイメージが強いですが、下の世代への想いなどはありますか?

井浦:いやあ、逆に、自分のほうがニューウェーブの表現を楽しみたいと、こっちのほうが求めている感じはあります。僕なんかは年齢的にも、キャリア的にも、すごく今、本当に真ん中な感じなんです。この作品でも奥田瑛二さんなど、大先輩たちからまだまだ学ばなきゃいけないこともたくさんありますし。同世代の人たちと、現場でそれぞれが何十年か学んできたことを、ぶつけ合いながら楽しむやり方だって、もっと可能性はあるだろうし。僕は、自分の恩師から、ぎりぎり昭和の良き時代の映画作りの息吹というか、息遣いを直接教えてもらったりしたんです。一番映画がいい時代に自分が芝居をしていなくても、そういうときに何が起きていたのか、どんな人たちが、どんな思いでやっていたのかを直接聞くことができたので、そこを大切にしているんです。

 けれども、凌のように、そういうものにとらわれてない世代は、ものすごい生き生きと、伸び伸びしているんですよね。何にもとらわれてないからこそ。でも、それは、今なんですよ。凌の世代の人たちは、本当に今が一番きっといろいろなことをとらわれずにできる、いい時だと思う。数年経つと、またいろいろな共演者の方たちと出会い、いい関係を作っていくようになると、反面、否応なく、映画史だったり、先輩方から学ぶことの大切さをもっともっと感じていってしまうんです。何かが色濃くなっていく側面があれば、伸び伸びしていたものがギューッと固まっていく部分もあって。それは、いい意味で。凌は、2年前、この撮影をしていた当時は、何にもとらわれてなかったんです。だから、きっと「あの芝居をもう一回やれ」と言っても、凌はもうできないんですよ。あれからの2年間の経験があるから。それは僕も同じで、「また同じことをやれ」と言われると、できない。

ーーキャリアを重ねることでの変化がある、とても興味深いお話です。

井浦:凌たちの世代の人の本当に伸び伸びと表現を楽しんでいる姿は、僕にとっては、すごく刺激をもらえるんです。自分は、映画の世界でキャリアを積ませてもらって、勉強させてもらったから、映画に対しての愛情は当たり前に、ものすごく深くなっています。自分が芝居をやり続けられるうちに、どれだけ映画と携わっていけるかというのが、ひとつの自分の大きなテーマでもあったりもします。でも、凌の世代の場合は、芝居であれば、映画でも、テレビでも、あと表現であれば、歌も歌うし、という。そこの伸びやかな感性は、僕はすごくうらやましいと思うところもあるし、もう自分にはできないことでもあるから。そういう感性も、凌を通して僕も学んだりとかは、今でも全然します。

ーー井浦さん、銀幕デビューが『ワンダフルライフ』(1998年)ですよね?

井浦:はい、そうです。

ーー今年で20周年になります、おめでとうございます。

井浦:いえいえ、全然まだまだです。10年一区切りとかも言いますけど。20年経っていますねえ…。振り返れば、10年目を迎えたときは、「10年経ってしまっているんだ」という思いが強かったんですけど、20年目って全然、何もなくて(笑)。

ーー特に感慨のようなものは?

井浦:何にもないですね。「20年間も芝居をやらせてもらえたな」という、20年経ったことに対しての感謝、ただただ感謝しかない。「自分が20年経ったから、後ろを振り返ってみようか」とか、「これからの30年に向けて、どうやっていこうか」なんていうのはもう、大げさにはないです。20年やらせてもらえただけでも、自分の中では、すごく奇跡的なことだと思うんです。だから、30年目なんて、30年目を目指す、何かの抱負みたいなものなんて全然なくて。自分の中では本当に、一本勝負の連続が、いつの間にか10年経っていた、という感覚なんです。常に、その現場でどんな監督と出会えるのか、どんな作品や役と出会えるのかの一本勝負で、「その次はどうするか」とか「3年後、5年後にはこういうことを目指していたい」とか、そんなの全くなくて。目の前の一本勝負の繰り返しのまま、10年から20年があっという間で、もしかして50代、60代になっていったら、また違うとらえ方ができるようになっているのかもしれない……いや、わからないんですけど。きっと、役者をやらせてもらっている限りは、その繰り返しなんだろうなと思うんです。

ーー常に一本勝負ができることが、井浦さんの魅力かもしれないですね。

井浦:でも、インタビューだってそうじゃないですか?一本勝負の連続じゃないですか?僕は「どうなっていたい」とか、「どんな役を演じたい」とかも、本当になくて。歴史が個人的にはものすごく好きなので、歴史上の人物で好きな人物を「役を通して出会えたら、何て幸せなんだろう」というのはあるけれども、「その役をやるために、自分はどう動くか」なんていうような貪欲さは、あまり持っていません。出会いだなあ、と思うんです、全ては。あるがままにしていれば、一本勝負の連続を繰り返していれば、出会うときは出会うだろうし、全くすれ違わないままの人たちもいっぱいいるだろうし。自然にね(笑)、身を任せています。

取材・テキスト:赤山恭子

写真:You Ishii

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