横田めぐみさんの弟・横田拓也さん、田口八重子さんの長男・飯塚耕一郎さんら拉致被害者家族と、支援団体「救う会」がゴールデンウィークにアメリカを訪れた。

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 現在、北朝鮮にはアメリカ人3人が拘束されていて、この人権問題と結び付けられ、アメリカでは日本人の拉致問題へもかつてないほど関心が寄せられている。米朝首脳会談が6月にも開催されるとの予測が広がるなか、拉致問題の進展に期待が高まる中での訪米となった。

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 一行は3日、北朝鮮に拘束され帰国後に死亡した大学生オットー・ワームビアさんの家族と面会、連携を訴えた。また、加藤勝信・拉致担当相と国連本部のシンポジウムにも出席。拉致被害の現状を報告するとともに、国際社会に向け協力を呼びかけた。7日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、「拉致被害者を救う会」の会長で、政府高官らの訪米にも同行した西岡力氏に話を聞いた。

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 まず西岡氏は、アメリカ側のスタンスに大きな変化があったと振り返る。

 「家族会、救う会は2001年からほぼ毎年訪米し、拉致はテロなので一緒に戦ってほしいといい続けてきた。当初は拉致問題そのものについて説明しなければならず、"あなたたちが考える拉致問題の定義はなんなのか。全員助けないといけないと言っているが、全員とは何人なのか"と言われた。また、"8人は生きている"と主張しても"証拠はなんですか。北は死んだと言っている"と言われたこともあった。今回はそれが一切無かった。しかもNSCのポッティンジャー・アジア担当上級部長は、政府が認定していない方も含めて帰って来ないとだめだとまで言っていた。また、ジョン・ボルトン安全保障担当大統領補佐官も拉致問題に大変理解のある人。これまでに6回会ったが、我々が訪米すると絶対に会ってくれた。彼はいい加減な譲歩をしない人。安倍総理がトランプ大統領にかなり説明されてたのだろうし、日本政府もかなり努力をしていると思う。日本の中にも、アメリカの中にも色々な意見があるが、少なくともトランプ政権と安倍政権は我々が求める"全被害者の即時一括帰国"という点でも一致していると感じた。トランプ大統領は、金正恩に返せと言うだろう」。

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 これに対し、評論家の宇野常寛氏は「西岡さんのおっしゃる通り、全員が帰ってきたら最高だ。ただ人権問題というのはリップサービスに使われてきたし、善意に期待しすぎるとしっぺ返しを食らう可能性もあると思う。楽観的な観測に基づいてシミュレーションしても仕方がないし、議論すべきなのは、トランプ大統領の発言がただのリップサービスだった時にどうするかだ。トランプに"ふざけるな"と言い、国際社会から孤立してでも強く主張するのか。それとも、あくまでもトランプ大統領に付いていき、被害者家族に"ちょっと待ってくれ"と言うのか。その腹案が弱すぎるのではないか」と厳しい口調で指摘。

 西岡氏は「アメリカの反応が良かったことは事実だが、確かに北朝鮮が被害者を帰すかどうかはわからない。私もリップサービスの可能性がゼロではないと思っているし、今のシナリオが必ず上手くいくとも思っていない。だからこそトランプ政権に全力を尽くして働きかけをすべきだ」とした上で、米朝首脳会談が実現した場合の"3つのシナリオ"を挙げた。

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 「1つ目は、アメリカが拉致問題を棚上げし、自国の利益だけを考えてICBMだけを廃棄させ、核は"廃棄の前提"ということにするパターン。実際、アメリカはそういうこともやってきた。2つ目は、短期的に核・ミサイルの問題を解決するリビア方式を北朝鮮が飲み、拉致被害者を返すパターン。このために、我々の主張する拉致問題の解決の定義をアメリカにインプットしなければいけないということで渡米した。日本に届くミサイルも化学兵器も全部廃棄させ、拉致被害者を返せばODAを出してもいいということ。それができないなら制裁を緩めないという姿勢を続けるべきだと。3つ目が、決裂だ。戦争に向かうという可能性も残されている。それぞれの可能性を考え、どうやって被害者を助けることができるか準備しなければいけない」。

 さらに西岡氏は「アメリカはリビアに核廃棄をさせ、国交正常化はしたが援助はしなかった。客観的に見て、トランプ政権も北朝鮮に対してODAを出すつもりはない。一方、金正恩氏が核廃棄を決断するよりも、拉致被害者を全員返す決断の方が容易だ。それができれば日本も国交正常化することができるし、平壌宣言に基づく大規模な経済支援をすることができる。アメリカにお願いするということではない。日米同盟の対等な関係の中で、安保法制も作ってきた。トランプ大統領はディールの人だ。日本のお金を使うことをわかった上で、それに乗って"拉致が動かないと絶対お金は出さない"と、アメリカを脅すことも含めてやらないといけない」と主張した。

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 宇野氏は「日米同盟が対等な関係だった信じているんですか?」と疑問を投げかけたうえで、「日本が外交関係の中で蚊帳の外に置かれているということは屈辱的なこと」として日本の現状を憂いた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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