この記事の写真をみる(4枚)

 米朝首脳会談を控え、約2年半ぶりに開催された日中韓首脳会談。安倍総理が北朝鮮問題を議論の柱とし、3か国による共同文書の調整が進む中、拘束されていた3人のアメリカ人が解放されたと、トランプ大統領がツイートした。

 韓国の聯合ニュースは9日午前、米朝首脳会談の準備のため北朝鮮を訪問していたポンペオ国務長官がと金栄哲副委員長が会談したと伝え、3人を専用機に載せ、そのまま帰国させる可能性が高いと報じていた。トランプ大統領も会見で「アメリカ人は帰国できるのか」との質問に「もうすぐ分かる。釈放されればそれはすばらしいことだ。もうじき分かる」と答えていた。

拡大する

 9日夜に放送されたAbemaTV『AbemaPrime』に出演した『週刊現代』編集次長の近藤大介氏は「ここで解放するかしないかは大きいと思っていた。もともと北朝鮮はトランプ大統領との会談後に3人を差し出す予定だった。しかしトランプ政権側が"これは会談の前提条件だ"とハードルを上げてきた。会談と同時に返すこともできたはずなので、北朝鮮内部にも葛藤があっただろう」と話す。

 「これまでの北朝鮮の交渉を見ていると、意見が分かれていることが分かる。1つは金正恩委員長も含む融和派。金委員長はあの性格なので気前が良い。出すものは出して、大きいものを取ろうとする。もう1つが軍の強硬派だ。今の所、その対立で融和派が勝っている」。

 一方のトランプ大統領は8日、「合意には欠陥があり、イランの核保有を止められない」として、イランの核開発を大幅に制限する見返りに経済制裁を解除するとした2015年の核合意から離脱すると発表した。これについてボルトン安全保障担当補佐官は「不十分な合意は認めないという北朝鮮に対するメッセージだ」とコメント、米朝首脳会談に向けてけん制する狙いがあると明かしている。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「トランプ外交は特徴的だ。普通、多国間の外交はパワーバランスを崩さないように、ということで行われていく。しかしトランプ大統領の場合、"ディール"と言われるように1対1、2国間の取引しか考えていないように見える。金委員長も、その"ディール"的な考え方に沿って、"3人を解放するから、代わりに譲歩してほしい"と上手く合わせている感じがする」と話す。

拡大する

 近藤氏は、そんな金委員長に対し北朝鮮内部で不満が高まっている可能性を指摘する。

 「金委員長は経済含め全てを仕切ってきた120万人の朝鮮人民軍を減らし、解体して、改革解放をしようとしている。先月には朝鮮労働党大会まで開いて決議もした。北朝鮮の歴史からすると、金正恩委員長こそ先走っていることになるので、揺り戻しが当然来ると思う。夏にかけて食料も厳しくなってくるので、軍の抵抗が起こってくると思う。3月の北京会談の時には軍幹部をほとんど連れてこなかったので、中国政府側が驚いていた。これも軍と対立している証拠なのかもしれない。また、外交の成り行きによっては軍の中で優遇されてきた核・ミサイル部門が削られることになるので、その関係者も不満を持ち始める。今は幹部を入れ替えることによって軍を掌握できているとは思うが、今後は分からない。既得権益層によるクーデターも十分あり得ると思う」。

 気になるのは、鍵となる中国の思惑だ。日中韓3か国の共同文書に「非核化」の文言が一応盛り込まれたとはいえ、"本気度"どれ程あるのだろうか。

拡大する

 「中国として、喫緊の問題は豊渓里(プンゲリ)からの放射能漏れ問題。実は中国まで100kmしかない。長期的には貿易や台湾問題、南シナ海の問題がある中の一つの側面として北朝鮮問題がある。中国はトランプ政権をどう揺さぶるかということを前提に、北朝鮮の非核化問題を考えていく。基本的には北朝鮮の核は無くしたいが、北朝鮮が完全に従うのであれば、中国にとっては絶対的な目標ではない」。

 その上で近藤氏は、米朝首脳会談に向けた中国の思惑について「在韓米軍を撤退させるくらいの会談にしてほしいと思っているだろう。米韓合同軍事演習を止め、THAADミサイルも撤去するということが理想」との見方を示した。

 近い内に日時と場所が発表されるとみられる米朝首脳会談への注目が高まる。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


▶放送済み『AbemaPrime』の映像は期間限定で無料視聴が可能。

AbemaPrime | 動画視聴はAbemaビデオ(AbemaTV)
AbemaPrime | 動画視聴はAbemaビデオ(AbemaTV)
見逃したAbemaPrimeを好きな時に何度でもお楽しみいただけます。今ならプレミアムプラン1ヶ月無料体験を実施しています。
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(4枚)