10日、映画『終わった人』の完成披露記者会見が行われ、舘ひろし、黒木瞳、広末涼子、田口トモロヲ、ベンガル、原作者の内館牧子氏、同作のメガホンを取った中田秀夫監督が登壇した。

広末は、舘と黒木との共演に「大好きな黒木瞳さんと、小さい頃から大好きで見ていた『あぶない刑事』の…まさか小学生のときに憧れていた舘さんとご一緒できるなんて夢にも思っていなかったので、久々に緊張しました」と興奮の様子。

『終わった人』という衝撃的なタイトルに慣れるのには時間がかかったというが、「本を読んだときに暖かい切実なお話で、すごく感じる部分とコミカルで面白い部分とがあって、すごく素敵な映画だなということで受けさせていただきました」と、引き受けた理由を説明。さらに「舘さんと黒木さんというキャスティングをお聞きしたときに、一気にこの映画の世界観が広がりました。あ、そうくるんだと思って。やっぱり終わってない人がやらないとって。これ(『終わった人』は)本当にちょっと切ない人のキャスティングだと、悲しくて重たい話になってしまうなと現場でも思っていて(笑)。正直お二人が美しすぎて、こんな夫婦現実にはいないから、どうなるんだろうと思っていたんですけど(笑)。でも衣装合わせや現場に入ると、すっごく生活感とかリアリティが伝わってきて、美しい中に切なさがあって、映画ってすごいなと思いました。あんまりにも現実味がありすぎても辛いんですけど、映画ってこんなに素敵なメッセージにしてくれるんだなって」と二人のキャスティングによって映画の可能性を改めて感じたと語った。

広末の言うように、舘は同作でかっこいいだけではない切なくて面白い三枚目な魅力を披露している。中田監督は「舘さんはヒッチコックの映画に出てくるゲイリー・クーパーのようでした。でも、浮気もどきがバレてあたふたする姿は植木等さんのようでした。すごくキュートで、面白くて。現場で面白いって場合は、編集ではイマイチということが多かったんですけど、今回は現場でも面白くて編集も面白かったです」と絶賛。舘は「監督はのせるのがうまいんですよ(笑)」と照れ笑いを浮かべていた。

ストーリー
大手銀行の出世コースから外れ、子会社に出向させられたまま定年を迎えた田代壮介。これまで仕事一筋だった壮介は途方に暮れる。
日々、やることがない。時間の進みが遅すぎる…。このまま老け込むのはマズイと感じ、スポーツジムで身体を鍛え直したり、図書館で時間を潰そうとするのだが、よく見ると周りにいるのは “終わった”ように見えてしまう老人ばかり…。美容師として忙しく働く妻・千草には、ついグチをこぼし、次第に距離を置かれてしまう。
「俺はまだ終われない」と、職業安定所で職探しを始めるも、高学歴と立派な職歴が邪魔をして思うように仕事が見つからない。妻や娘からは「恋でもしたら?」とからかわれる始末…。 そんな時、大学院で文学を学ぼうと思い立った壮介が、勉強のために訪れたカルチャースクールで出逢った女性と恋の予感が…。
また、スポーツジムで知り合った新興のIT企業社長との出会いにより、壮介の運命の歯車が回り出す──。
映画『終わった人』は6月9日(土)全国ロードショー。




写真:野原誠治
テキスト:堤茜子
この記事の画像一覧
