
(取材陣に向けての写真撮影でも山下から目を離さない伊藤)
6月3日から開幕する東京女子プロレス恒例のトーナメント「東京プリンセスカップ」1回戦、伊藤麻希に大きなチャンスが到来した。
5月23日の抽選で決まった初戦の相手は山下実優。現シングル王者にして旗揚げメンバー、エースとして団体を引っ張ってきたトップ選手だ。
伊藤にとって山下はデビュー戦で敗れた相手でもある。今回はリベンジの機会であり、ノンタイトル戦とはいえチャンピオンに勝つことは大きな勲章だ。
組み合わせ抽選と同時に行なわれた記者会見でも、伊藤は山下への敵意をむき出しに。「強さは私のほうが上」と言う山下に「伊藤より強いって、何が強いんだよ!」と食ってかかる。
「チャンピオンだよ!」と返した山下に、伊藤は「チャンピオンの何が強いんだよ! ベルト巻いてるだけだろうが!」とベルトの権威を真っ向から否定してしまう。それでいて「必ずお前のこれ(ベルト)を奪い取るからな!」、「これ(山下)とやるならこれ(ベルト)しか興味ない!」とも。トーナメントではベルトはかけられていないのだが「趣旨分かってんの?」と聞かれると、「分かってないよ!」と堂々の答え。
いわゆる「言葉の意味はよく分からんが、とにかく凄い自信だ」状態の伊藤。山下も「勢いはある」と認めている部分もあるようだ。
福岡のアイドルグループ・LinQに所属していながら、1人上京してプロレスに邁進してきた伊藤。レスラーデビューしたかと思えばLinQ再編で卒業、別グループ結成となり、それでもしたたかに東京女子プロレス内で「伊藤リスペクト軍団」として再アイドルデビューを果たしている。今年に入ると5月19日の下北沢大会でタッグ王座に挑戦、5月22日の「DDT LIVE! マジ卍」では一時的とはいえアイアンマンヘビーメタル級のベルトも巻いた。
以前は「勝ち負けよりもインパクト」と言っていた伊藤だが、最近は「チャンピオンになる、トップを取る」と、明確に結果を求めるようになった。狂気性すら感じさせる前のめりなファイトに“実績”という説得力を加えられるか。キャリアの転機にもなりうるトーナメントだ。
一方の山下にとっては、トーナメントは鬼門。過去4回、優勝どころか決勝進出も果たせていない。伊藤に勝って自分が勢いをつけるか、それとも勢いに飲まれるか。「トーナメントは苦い思い出しかない」と言う山下には伊藤との対戦は試練だと言っていい。
山下vs伊藤と同ブロックになったのは、のどかおねえさんvsまなせゆうな。昨年、フリーのまなせが東京女子プロレス初戦で当たったのがのどかだった。

(山下vs伊藤、のどかvsまなせが並んだこのブロック。まなせは王座戦のリベンジもしたいところだ)
グラビアタレントとしても活動、「ミス東スポ」に選ばれたこともあるまなせ。対するのどかは、東京女子にちびっ子ファンを呼び込むべくデビュー、試合前の「ピンポンパン体操」が定番となっている。
カカト落とし、ネックスクリューホールドに加え、かつてのタッグパートナー・のの子との特訓で鍛えたバスト(大抵の攻撃は跳ね返す)も武器とするまなせ。今年、鎖骨の手術のため2ヶ月ほど欠場したが、それは「2月にタイトルマッチで負けて、もっと強くなろうと思ったから」。当然、意識するのは優勝であり山下への再挑戦だ。
キャリアからすればまなせが有利。しかし、のどかも今年に入ってタッグ王座に挑戦するなど“バラエティ班”の枠に収まらない活躍を見せている。バックフリップ、WARスペシャルといった重量感のある技のチョイスも印象的だ。
「私は来る日も来る日も(ピンポンパン)体操をしてきたので。その差が試合で出ると思います」とコメントしたのどか。それが勝利に直結するかどうかは不明だが、自分のスタイルを貫く強さは間違いなくある。まなせにとっては復帰して初のシングルマッチでもあり、試合勘の部分ではのどかに分があるとも言えるだろう。5月3日の後楽園大会では実の妹、愛野ユキもデビュー。「お姉ちゃん」としても成長したところを見せたい。
このブロックの本命はやはり山下。だが王者にしてエースが抱く、トーナメントへの苦手意識が勝負を左右することも充分に考えられる。そもそも、今年のトーナメントは出場選手のほとんどが優勝候補もしくは台風の目と言える状況。ベスト4に誰が残っていてもファンが納得してしまいそうなのが、現在の東京女子プロレスの恐ろしいところだ。

(会見中、ひたすら挑発し続けた伊藤に山下もドン引き……)
なお、1回戦の全対戦カードは以下の通りとなる。
〈6.3新宿村大会対戦カード〉
才木玲佳vs優宇
ハイパーミサヲvs沙希様
山下実優vs伊藤麻希
のどかおねえさんvsまなせゆうな
ミウvsヒカリ(Take a chance枠決定戦)
〈6.9新木場大会対戦カード〉
アズサ・クリスティvs辰巳リカ
中島翔子vs黒音まほ
坂崎ユカvs瑞希
小橋マリカvsTake achance枠
文・橋本宗洋
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