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 株式会社スタートトゥデイが去年11月に発表、話題を呼んでいるのが身体のサイズを細かく採寸できるボディスーツ「ZOZOSUIT」だ。技術的に量産体制の構築がやや難しいということから、当初予定されていたセンサー方式から画像を読み取るマーカー方式に変更され、"水玉模様"の製品になった。

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 採寸は非常に簡単で、専用アプリに身長・体重・性別を入力、音声ガイダンスの案内に従い、付属のスタンドに置いたスマホで全身を撮影、測定していく。バスト・ウエスト・ヒップなどのスリーサイズだけでなく腕の長さや太もも周りの長さなど様々な部分がミリ単位で計測され、結果はすぐにスマホで確認することができる。このデータを元に、ZOZOTOWNで自分にぴったりのサイズの洋服を購入することができるようになる。現在、プライベートブランド「ZOZO」では、データを元にしたオーダーメイドのTシャツ(1200円)とデニムパンツ(3800円)を提供している。

■「服が人に合わせる時代」

 1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した同社の田端信太郎氏は「代表の前澤が一番大事にしていることは、"人と違う"ということ。『ZOZOTOWN』をやってきたスタートトゥデイがブランドとしての『ZOZO』を始めるときに、他のファッションブランドさんと同じようなことをやっても意味がない。ネット通販で服を買うときの最大の問題がサイズ。そこで『ZOZOSUIT』という手段を使い、体型に合った服を作らせていただくという"直球"を考えた。値段は既存のカジュアルブランドさんと変わらないが、品質は全然違う、一度戻れないという世界を実現したかった。たとえばメガネの場合、度数がS・M・Lのように3種類しかないのはおかしいので、それぞれが視力検査をして作るのが当たり前。服も、本来そうあるべきだ」と話す。

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 実際にZOZOSUITで計測、届いた商品を試着したAV女優の紗倉まなは「本当にびっくりするくらいジャストフィット。ピッタリだけど余白もあるので着心地もいいし、動きやすい」と驚きの声を上げた。

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 「ZOZOSUITはあくまで採寸のための手段だが、そのセンシティブなお客様の体型データを我々に教えていただくことで、気の利いたスタイリストやコンシェルジュのように、体型に合ったものをお届けすることができるようになる。ZOZOTOWNに出店しているブランドの商品はもちろん、プライベートブランドとしてのZOZOとしても、もっとラインナップを増やしていく。スーツや襟付きのシャツ、女性向けにはワンピースやランジェリーも良いと思う。サイズの問題は全世界共通の問題なので、海外展開も予定している。我々のキャッチフレーズは『人が服に合わせるのではなく、服が人に合わせる時代だ』。痩せているのがかっこいいということではなく、その人がその人らしくいられるように、体型の弱さを補完し、むしろ引き立たせるような服を出していければ」(田端氏)。

■「1円冷蔵庫」戦略

 実はZOZOSUITは1着あたり約1000円のコストがかかっているというが、ユーザが負担するのは送料の200円だけだ。すでに100万枚を配布、今後は600~1000万着を無料配布する予定だという。果たして採算は取れるのだろうか。田端氏は、その戦略を「1円冷蔵庫」という言葉で説明する。

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 「例えばビール会社さんが自社のビールを売ろうとしたとき、今だったらテレビCMを流したり、居酒屋にコンビニに置いてもらったりすると思う。でも、これは無駄だと思っている。これからは1円の携帯端末のように、センサーが付いていてIoTでネットに繋がる冷蔵庫をビール会社が配り、ビールが切れそうになったら自動で配達し、勝手に補充されているようにすればいい。そうすればテレビCMや小売店が抜いている分のお金も要らなくなるし、極端に言えば1円で冷蔵庫を配っても成り立つかもしれないということ。服も、これまでは遠いとか忙しいという理由で店に行けない人が仕方なくネット通販で済ませていた。また、店に行って試着して買うというのが理想だったかもしれないが、実は店に並んでいる商品の8割、9割は自分のサイズとは関係ないもの。店舗としても家賃や在庫は無駄だし、裾上げで切った分の生地なども無駄。ちゃんと身体を測って作れば余分な在庫を持たなくていいし、季節の風物詩みたいなセールもしなくていい。そういった意味では採算がとれるはずだ」。

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 今年3月にLINE株式会社から移籍した田端氏は著書で「ユーザーが必要な時に必要なものをオンデマンドで作るのが最強の広告」とも指摘している。

 「僕は広告の仕事を20年以上やっているが、広告の本質はモノを売るための、あるいはブランドを知ってもらうための機能を提供すること。モノが売れるためには、当然お客さんが欲しがっていないといけない。では、本当に欲しがっているどうかかをどうやって把握するのか。服であれば体型が重大なヒントだと思うし、広告になりうる。広告にも様々な種類があるが、新しいユーザーさんとの接点をつくり、商品を買ってもらうための機能を提供しているという意味ではZOZOSUITは2018年の最新型の広告だと言えるのではないか」。

■Amazon、楽天、ユニクロなども続々進出中

 ZOZOTOWNのライバルといえる各社も、インターネットを用いた新たなアパレル戦略を立案している。

 3D技術を持つ「Body Labs」を買収したAmazonが開発を進める、全身写真1枚で精緻にサイズを読み取ることができる技術が実用化されれば、ZOZOSUITの強力な競合になることが指摘されている。同社はアメリカ限定で「プライム・ワードロープ」というサービスを開始しているほか、東京などに「Amazon Fashion」の商品画像・動画の撮影専用スタジオを開設、消費者への訴求を強化している。

 楽天もアパレルに強い伊藤忠商事と年内にも共同出資会社を設立する予定で、伊藤忠系のアパレルブランドの商品を楽天経由で販売し、物流面でも連携していくという。ユニクロもネット通販の売上比率(現状6%程度)を30%にまで拡大することを目指す。ファーストリテイリングの柳井正社長兼会長は「ZOZOSUITもいいが、スマートフォンや店舗で瞬間的に採寸できるなど、より簡単にできる方法を鋭意研究中」と話している。

 ZOZOの未来について田端氏は「おまかせ定期便もあるZOZOに頼めば、毎日オーダーメイドの服しか着ない人生が送れるようになる。かつてはお金持ちしかできなかったが、テクノロジーによって誰でも自分専用のスタイリストを雇っているような時代が来る。モノを作ったり売ったりする側と買って使っていただける側がどれくらい深く分かりあえているかというところが、豊かさなのではないか」と語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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