
安倍晋三首相とトランプ米大統領は7日午後(日本時間8日未明)、ワシントンのホワイトハウスでの会談を終え、共同記者会見に臨んだ。
トランプ大統領は「我々は引き続き緊密に連携していく。その中には日本の拉致問題も含まれる。安倍総理にとってこれが個人的にも重要なことであると理解している。シンガポールでの会談は北朝鮮にとって新たな明るい未来の始まりとなるだろう」と話し、12日の米朝首脳会談で拉致問題を議題とすることを明言した。
一方の安倍総理は「米朝首脳会談において拉致問題についてどのような話をするかという具体的な中身ついてはお話することは控えさせていただくが、約束をしていただいて本当に嬉しく思っている」と述べ、「最終的にはやはり私と金正恩委員長、日朝の間で解決しなければならないと決意している」として、日朝首脳会談を行う意欲も示した。
日本政府関係者が「様々なことをすり合わせることができた」と話す今回の会談の狙いについて、AbemaTV『AbemaPrime』(8日放送)に出演した国際ジャーナリストの春名幹男氏は、「日本としては拉致問題を取り上げて欲しいということと、"最大限の圧力"を続けてほしいということを頼みに行ったのだろう」と話す。

「その結果、ちゃんと拉致問題を議論するとトランプ大統領が言ったので、安倍さんは安心しているかもしれないが、私はちょっと不十分だと感じている。拉致問題の歴史を紐解いてみると、2002年に小泉さんが訪朝した際、アメリカに尋ねてから行ったわけではなく、自らのイニシアチブで行った。成功するか失敗するか分からない段階で乗り込んでいった勇気に金正日総書記が驚いたと言っている。安倍さんも北朝鮮と直接交渉することを考えるべきだ。今回、日朝首脳会談への意欲を示したが、そのためにも日朝間が接触をしなければ実現しない。アメリカがそのための道筋をつけてくれるかどうか。そこのワンプッシュがあればよかった」。
また、"非核化"についても、「日本にとっては、すでに100基以上が配備され、核搭載能力もある中距離弾道ミサイルも廃棄させないといけない。しかし、念押しのためにお願いに上がる、というスタンスだったので、その点での強い要求できなかったのではないか」と推測した。

日米はこれまで、北朝鮮が行動するまで制裁は解除しないということで合意してきたが、この会見では「最大限の圧力」という言葉は使われず、トランプ大統領は「"最大限の圧力"が効果を上げてきたが、この言葉はもう使わない。友好的な交渉を行いたいと思っているからだ」とコメントしている。この"最大限の圧力"という言葉についてトランプ大統領が「使うと交渉がうまくいかなくなる」とも述べていた。
春名氏は「アメリカが"やめる"といったのは、"新しい制裁はしない"という意味だと河野太郎外務大臣は説明しているが、非常に苦しい。アメリカに追従してきた日本としては、トランプ大統領のスタンスが急に変わったので、立場がなくなったところがある」と指摘した。

トランプ大統領は共同会見で「数千億円にのぼる追加の米国製品(戦闘機、農作物など)を購入すると安倍総理が言ってくれた」と、貿易についても言及している。
春名氏は「今回、G7サミット開催中ではなく、予定を早めて会談を行った。G7に備え、貿易についても話し合いたかったのだろう。安倍さんの口からは出なかったが、トランプさんは"日本がいっぱい買ってくれる"と言った。安倍さんとしても驚いたのではないか。これはヨーロッパの首脳たちにとっても寝耳に水」と指摘。「日本はこれまでも投資したり、日本企業がアメリカ人の労働者を増やしたりと努力してきた。そのことをはっきり言ったほうがいいと思う。記者会見で安倍さんの何も言わなかったが、アメリカに対する姿勢が弱すぎると思う」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


