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 先々週、カナダで開催されたG7。プラスチックごみによる海洋汚染について協議され、合意文書が取りまとめられたが、日本は国内法の未整備などを理由にこれに署名をしなかった。

 各国に遅れをとる形となった日本だが、この問題を語る上でポイントとなるのが「マイクロプラスチック」。非常に小さなプラスチックで、海に無数に漂っているものだが、このマイクロプラスチックが環境に与える影響とは。『けやきヒルズ』(AbemaTV)はリサーチを行った。

■日本周辺はマイクロプラスチックの「ホットスポット」

 先月、タイの海岸に打ち上げられたクジラの胃の中から、プラスチック製の袋約80枚が見つかったニュースが報じられ、世界に大きな衝撃を与えた。

 しかし、こうした出来事は世界各地で頻発している。口にプラスチックの輪がはまり無残な姿で死んでいるアザラシに、鳥の体内に残った大量のプラスチック片。プラスチック製品による環境汚染が今、世界規模で深刻な問題となっている。

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 このような事態を受け欧州連合(EU)は先月、海洋生物保護のために使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する法案を提出した。フランスでは、既に小売業でのプラスチック製ポリ袋は使用禁止となっている。また、土に還るバイオマス原料のポリ袋でなければ罰金を科されるなど、プラスチック削減に向けた取り組みが盛んに行われている。

 プラスチックの影響は目に見えないレベルで私たちの生活に迫ってきている、とプラスチック汚染の専門家・東京海洋大学の東海正教授は指摘する。

 「プラスチックって基本的に壊れてもプラスチック。分解されない」

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 そう言って東海教授が取り出したのは「マイクロプラスチック」。直径5ミリ以下の小さなプラスチックで、これらは海に多く漂っているという。南極海をはじめ、多くの場所で調査を行っている東京海洋大学。特別に細かく編まれたネットで海の浮遊物を採集したところ、ある事実が明らかになった。

 「世界での平均的な海に比べると、日本は(マイクロプラスチック密度数が)一桁多い。日本の周りはマイクロプラスチックの『ホットスポット』」(東海教授)

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 黒潮によって、プラスチック排出量の多い東南アジアからの海流も入ってくる東京湾。そこで獲れたイワシを調査したところ、8割からマイクロプラスチックが検出されたという結果も出ている。海洋汚染への対策として今月8日、マイクロプラスチックを国内法で抑制する初めての改正案が国会に提出され、日本国内での対策強化が今求められている。

■ラベルなしボトル、紙のストローで“脱プラスチック”

 そんななか、先月ある商品を発売し話題となったのが、大手飲料メーカーのアサヒ飲料。環境に配慮し、ペットボトルにラベルを付けず商品名は箱にだけ、という思い切った対応に踏み切った。

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 マーケティング本部の河野裕一郎副課長によると、通常のロールラベルとラベルなしのペットボトルに貼られているシールでは、使っている資材が約90%削減されているという。

 一方、原宿の人気ハンバーガー店「ザ グレートバーガー」でも、プラスチックを減らすための取り組みが行われている。

 お客から「かわいいなって」「普通プラスチックだけどすごいなって」との声があがるのは、「紙ストロー」。この店では、紙でできたストローの使用を推進。導入の理由について、車田篤代表取締役は「きっかけは見た目がレトロで可愛いなっていうのが最初で、あとは紙製品なのでプラスチックの石油製品に比べて環境や身体に良いんじゃないかという思いから」と話す。

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 1本あたり5円するストローを月に1万本も使用するというこの店。プラスチック製ストローの約10倍とかなり割高だが、このようにプラスチック消耗品から脱却することが、マイクロプラスチックの発生源を断つことにも繋がっているのだという。

■石灰石から“半永久的”にリサイクル可能な素材を開発

 一方、マイクロプラスチックよりも小さな「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチック粒子も今問題となっている。

 マイクロビーズは、成分にもよるが汚れを落とすためのスクラブ剤などがそれに当たり、洗顔料や歯磨き粉、化粧品などに含まれていることもある。排水溝から簡単に海へ流出してしまうマイクロビーズ。そして、その小ささゆえに、かなりの小型生物でも体内に取り込んでしまう恐れがあり、環境への影響が懸念されている。このため、花王や資生堂などの大手企業は、代替素材への切り替えを行うといった動きを見せている。

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 続いて訪れたのは、銀座の一角にある株式会社TBM。TBMでは、石灰石による新素材「LIMEX(ライメックス)」を開発。山口太一執行役員は「これは地中に戻っていくものなので、今まさに問題として挙げられているマイクロプラスチック問題に対して貢献できる新しい商品です」と説明する。

 ライメックスは、(1)まず石灰石を粉状の石灰にする、(2)それを紙にしてメニューや名刺などにする、(3)再利用のために固形物(ペレット)にする、(4)スマホカバーなどの商品にもなるといった特長があり、つまり素材はそのままで一連のリユースが可能な「マテリアルサイクル」。同じ素材で半永久的にリサイクルが可能なため、環境負荷が少なく「脱プラスチック」に貢献する。

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 また、ライメックスで作った紙は水に強く劣化しにくいため、長期間の利用が可能とされている。ライメックスは2014年にその特許を取得して以来、数百件もの問い合わせを受け、今また新しい商品を開発している。

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 「脱プラスチック」に向けて企業も様々な取り組みを見せる一方、世界では取り上げられているこの問題が日本では報じられていないことを指摘する声もある。ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「EUは便利さと地球への優しさとの折り合いを日常レベルで、草の根レベルで考えている」としつつ、「ライフスタイルの設計というのは日本も本当は得意だと思うので、ゴミの分別なども守るべきルールではなく、地球問題に関わってくるという広い視野に繋げられたら」と意見を述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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