
トランプ大統領は20日、4月から取り締まりを強化した移民政策について、「非人道的だ」などといった批判の高まりから、親子の引き離し措置を停止する大統領令に署名した。
トランプ政権が4月に発表した「ゼロ・トレランス政策(不寛容政策)」では、入国書類を持たない不法移民は拘束され、親は収容施設に入れられて刑事訴追の手続きに入るが、その間子どもは引き離され別の保護施設に入れられていた。米国土安全保障省によると、4月19日から5月31の間で、メキシコ国境から不法入国した大人1940人から子ども1995人が引き離されたという。

そんな中、調査報道を行うアメリカの非営利団体「プロパブリカ」が、国境警備施設内で録音した音声を公開。そこには親から引き離されて泣き叫ぶ子どもの声が収められていた。
子ども:ママ!
国境警備隊員:おやおやオーケストラがいるみたいだね。指揮者はいないみたいだけど。どこから来たの?
子ども:エルサルバドル。
国境警備隊員:君は?
子ども:グアテマラ
国境警備隊委員:泣くなよ。
子ども:おばさんと一緒に行きたい。
国境警備隊員:行けるよ。ほらあの人が説明して助けてくれるから。
子ども:パパ!
子ども:ママがおばさんと一緒に行きなさいって。そしたら一緒に行けるって。
このような現状に、身内であるメラニア大統領夫人も「親子が引き離されるのは見たくない」と批判。トランプ大統領は親子の引き離し措置を停止したが、一方で不法移民の厳格な取り締まりは続くと強調している。ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「(親と)施設に入れられるのは変わらない。あとは強制送還」と懸念を示しつつ、音声が与えた影響を次のように述べる。

「移民の保護施設に映像が入って注目されたのも音声がきっかけで、この音声はアメリカのメディア、ネットでも駆け回っている。トランプ大統領はこれまで移民への憎悪を駆り立てて、国民もそれを支持していたが、子どもの声を聞いて今までの悪口や不法移民の数字といったものが生身の子どもの姿として浮かび上がってきた。トランプ大統領の家族でさえも批判する状況になっているので、アメリカ世論が大きく変わってきていると言える」
また、トランプ大統領の娘・イバンカ大統領補佐官がTwitterにあげた、イバンカ氏が子どもを抱く写真にもいま批判が集中している。竹下編集長はこの批判も音声が起因しているとし、「子どもと仲良くするトランプ大統領の娘と引き離されている不法移民ということで、『そんなことをやっている場合じゃないだろう』と怒りの声があがっている。これも子どもの音声があったからこそ。生身の人間のニュースとして批判につながっている」と述べた。

では、不法移民の取り締まり強化は続けるべきなのか。竹下編集長は、トランプ大統領に犯罪者や失業から国民を守りたい意識はあるとしつつ、「優秀な人材が入ってこなくなり、アメリカが建国以来大事にしている自由や多様性といった価値観が失われることになる。岐路に立たされている」との見方を示した。
一方、G7首脳会議で移民政策について議論する中、トランプ大統領は安倍総理に「君(の国)にはこの問題はないだろう。私が(日本に)メキシコ人を2500万人送れば君はすぐ退陣することになるぞ」と発言したと米ウォールストリート・ジャーナル電子版は伝えている。竹下編集長はこの発言の意図についてバカにしている部分があると指摘。「トランプ大統領からしたら、『日本はそんなことわからないだろう』『君はこの問題から外れているだろう』と言いたかったのでは。暴言ではあるがバカにされているところもあって、日本はそういう政策に正面から取り組んでいないだろうと言っているのかもしれない」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)


