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(次期挑戦者、HARASHIMA(左)と対峙する入江。その先には「男色ディーノ体制」への怒りもあった)

写真:(C)DDTプロレスリング/宮木和佳子

6月24日のDDT・後楽園ホール大会で、入江茂弘がKO-D無差別級王座防衛を果たした。

団体トップの証を竹下幸之介から奪った入江は、今回が2度目の防衛戦。挑戦者はかつてタッグを組んでいたこともある樋口和貞だった。

DDT屈指のパワーファイター対決だけに、試合は“肉弾戦”と呼ぶに相応しい展開となった。チョップ、エルボー、頭突きだけでもフィニッシュになりそうな迫力だったが、加えて入江は場外で倒れた樋口にトップロープ越えのセントーン・アトミコ(前方に回転しながら背中を叩きつける)も繰り出していく。

一方の樋口は場外への投げでテーブルクラッシュ。最後まで勝負の行方が分からない真っ向勝負を制したのは、全体重を乗せて放つ入江のラリアット「ビーストボンバー」だった。

「体はボロボロだけど、これがプロレス。プロレスを体に感じてます」と試合後の入江。自身の海外遠征、DDT戦線離脱でタッグ解消となった元パートナーとの闘いは、観客を充分に満足させるものだった。

不穏な空気となったのは、むしろ試合後だ。リング上、次期挑戦者として名乗りをあげたのは「いつでもどこでも挑戦権」を持っているHARASHIMAだった。

2013年の「第一次入江政権」時、両国国技館のビッグマッチでタイトルを奪っていったのがHARASHIMA。王者として乗り越えなければいけない相手であり、入江としても対戦に異論はない。むしろ「いつどこ権」がなくても挑戦を受けるつもりだったようだ。

しかし、エースとして長く団体を支えてきたHARASHIMAはあくまでシステムに則って挑戦表明。また保持するEXTREME級王座をかけてのダブルタイトルマッチは拒否している(この王座に関してはアントーニオ本多を挑戦者に指名)。

入江vsHARASHIMAが行なわれるのは7月22日の後楽園大会。それまでの試合でHARASHIMAが黒星を喫することがあれば「いつどこ権」は失われ、タイトル戦も白紙になる。それがルールなのだが、入江はそこに噛み付いた。

「挑戦者と王者がやるって言ってるんだ。こんな飾り(いつどこ権)いらねえだろ。ルールに縛られてるから、熱のない選手ばっかりになる。ルール、ルールてうるせえんだよ。プロレスラーなら気持ち見せてくれ!」

ここでリング上の全権を司るプロデューサー・男色ディーノが「いつでもどこでも挑戦権のシステムが気に食わないの?」と問いかけると、入江は「まだ気づかねえのか? 気に食わねえのはお前だよ! お前がプロデューサーになって何が変わったんだよ」。

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(両者とも場外で大技を決めるなど、入江vs樋口の王座戦は凄まじい迫力に)

写真:(C)DDTプロレスリング/宮木和佳子

退場していく入江に、観客からはコールも発生。今大会、試合で誰よりもファンを熱くさせたのが入江であることは間違いない。その説得力はやはり大きいと言えるだろう。

入江はインタビュースペースでも“体制批判”を展開してみせた。

「僕は(以前から)誰でも挑戦してこいって言ってるのに誰もこない。それはみんながDDTで窮屈に生きてるからじゃないですか。SNSだってみんな同じような告知文で、同じタイミングでツイッターに動画載せて。それが(男色)Pのやり方なら、僕はあの人が気に入らないし認めない。あの人を潰します」

入江は「いつどこ権」争奪バトルロイヤルで「ハズレ」となり罰ゲームを受けることになった大家健に対しても「熱い気持ちがあるなら挑戦してくればいい」と語っている。システムを否定しているというより、システムから逸脱する自由さ、DDT流にいうなら「デタラメさ」が失われていることが不満なのだろう。

入江の王者としての最も重要なテーマは「自由」。トップの壁に阻まれ続けた時期に海外で活力を得た入江は、KO-D無差別級王座の防衛戦を海外で行なうという目標も持っている。

入江は海外で様々な経験をし、自由を味わった。だがそのことでDDTの試合を休んでいるため、他の選手たちには「このリングを守ってきたのは俺たちだ」という思いもある。

入江が海外で闘っている間に、日本ではDDTがサイバーエージェントグループ入りを果たし、AbemaTVでの露出が急激に増えていった。より“世間”に伝えるため、いわゆる“文化系プロレス”をよりベタに、分かりやすく見せる作業も必要になってくる。

たとえば(負傷で延期になったが)那須川天心による大家健へのケツキックをフィーチャーすること。試合より罰ゲームがクローズアップされるのだから異常事態と言えば異常事態だ。それは、一種の“偏った再生産”と言ってもいい。それを停滞と捉えるか、スケールアップと捉えるか。

入江の主張に対し、ファンもさまざまな意見をネットに書き込んでいる。一つ言えるのは、入江はDDTの現状に対して敏感だったということだ。そして自己主張は、団体を引っ張るチャンピオンに必要不可欠なものでもある。

文・橋本宗洋

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