![“無断マイニング”はマナーの問題? 国内初の摘発で裁判に 「急に家宅捜査に来て…」男性が証言](https://times-abema.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/724w/img_482d5d5e7a9476de761e1611027623d9196457.jpg)
去年秋から今年2月までの間、無断で他人のパソコンに仮想通貨を獲得するための計算、いわゆる“マイニング”をさせた疑いがあるとして先月14日、警察は国内で初めて一斉に取り締まりを行った。
今回摘発されることになったポイントは、他人のPCを無断で使用し行った不正なマイニング。ITジャーナリストの三上洋氏によると、事件の焦点は「コインハイブ」というプログラムの使い方にあるという。そもそも、コインハイブとはどのようなプログラムなのか。
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「仮想通貨を生むには計算が必要。コインハイブは、この計算をウェブサイトを見ている人全員にやってもらう、今見ているコンピュータ上でもマイニングしてもらうプログラムと考えていい。単純に言うと、見ている人のコンピュータの計算能力を使ってサイト運営者側が少しお金をもらう仕組み」(三上氏)
コインハイブは去年9月にアルゼンチンで開発されると、すぐに注目が集まり世界中の様々なサイトに広がった。記憶に新しい「漫画村」のサイトでも、コインハイブが使用されていたという。
元々コインハイブは、より多くのユーザーが仮想通貨のマイニングに参加できるように、と開発されたもの。これによってマイニングによる「募金」も可能になり、ユニセフでも広く寄付を募る手段としてコインハイブを導入している。実際にサイトを覗いてみると、どのくらいの計算(CPU)を使うのか、20~80%までの範囲で設定できるようになっている。
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ユニセフでも使われている最新プログラムの一体どこに問題があったのか。ユニセフのサイトでは、他人のPCでマイニングをする際に許可を求める画面を表示しているが、今回そういった許可を取っていなかった点を問題視した警察は摘発に踏み切った。
■Aさん「急に家宅捜査に来て…」
『けやきヒルズ』(AbemaTV)では、この摘発に異議を唱え裁判を起こしたAさんに話を聞くことができた。
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「サイトで話題になっていたことがきっかけで存在を知り、面白そうだなと(思って始めた)。新しい技術があったら、とりあえず技術者としては試してみたいところがある。(その後)普通に仕事をしていたら急に(警察から)電話が掛かってきて。家帰って令状を見せられて、その時点でも全然何の事だかわからなかった」(Aさん)
プログラムのリリース当初に導入を決めたAさん。しかし、自分が罪に問われるとは想像もしていなかったという。
「(何が悪いのか)明確にされないまま急に家宅捜査に来て、(取り調べの)最後の方には『結婚して奥さんもいるんだろう?反省してるのか?犯罪になってるんだよ』と、結構問い詰めるようなこともありました。ほんとに不安しかなかったですね」(Aさん)
この件について警察庁は、「閲覧者に無断で行われる行為が社会的な合意を受けているとはいえない」「パソコンの動作が遅くなったり、電気代が高くなったりするなどの影響もある」「不正指令電磁的記録 取得・保管罪、通称『ウイルス罪』に該当する」と主張している。
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Aさんは罰金10万円の略式命令を言い渡されたが、これを受け入れず正式な裁判を求めており、行為が罪に当たるかどうかは今後法廷の場で争われることになる。Aさんは「(今後)広告じゃない新しい収益化の形もたくさん出てくると思いますし、そこに水を差す形にしたくない。法律的にどこが良くてどこがいけないのか明確なラインを知りたくて、今後、業界が萎縮してしまわないように明確な基準を判例として残せればいいなと思っています」と話した。
■警察「社会的に許容できない」、弁護側「マナーの問題」
コインハイブを巡る裁判は今後どう展開していくのか。ネットの問題に詳しい田中一哉弁護士は、「今回の不正マイニングが、(刑法に規定されている)『不正な指令』に当たるかどうか、という点が一番の争点」だと指摘する。
一方、コインハイブ自体は「多くの可能性を秘めた技術」と三上氏。「同意さえあればCPUの使用でお金がサイト運営者側にいく、もしくは寄付ができる。これは、コインハイブのような新しい技術でウェブサイトがビジネスになるいい仕組み、頭のいい仕組みじゃないかなと思う。新しい技術によってインターネットの世界がより便利になるという技術発展を、(今回の裁判が)阻害してしまう可能性がある。これさえあればいいというようなルールを決めていただきたい」と訴えた。
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今回コインハイブを巡っては、警察と弁護側で主張が対立している。例えば、「意図に反する動作」をさせるかについて、警察は「無断マイニングは社会的に許容されていない」「画面に表示されないため閲覧者が認識できない」としているのに対し、弁護側は「ホームページによって閲覧者のCPUが使われるのはある程度予想されていること」「黙って金儲けするのが許せないのはマナーの問題」などと主張している。
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こうした両者の意見に対して、政治学者で東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信氏は、政府や警察側の対応が後手に回っていると指摘。「漫画村の問題もそうだが、新しい技術が出てきた時に政府や警察の規制が後出しで、慌てて対応している印象が強い。法律がどう適応されるべきかの十分な検討がされていなく、弁護士や学者、業界団体も批判しているような状況。こうした問題はこれからどんどん出てくることが想定されるので、統一的に決めてスキームを作るべき」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)