キングオブFリーグ森岡薫の後継者として、早くから期待されてきた平田ネトアントニオマサノリ。しかし、強力外国人選手たちやメンタルコントロールの部分で過去2シーズンは苦しんだ。迎えた3年目の今シーズン。立川・府中アスレティックFCとの一戦では、飛躍を感じさせるプレーを見せた。
勝負の3年目で飛躍を目指す
森岡薫2世。一度は耳にしたことがあるフレーズではないだろうか。名古屋オーシャンズの平田ネトアントニオマサノリは、サテライト時代から大先輩の後継者として大きな期待を背負っていた。
2013年から所属する名古屋オーシャンズサテライトではエースとして活躍。2015年には東海1部リーグのベスト5に選ばれるなど目に見える結果を残し、Fリーグのピッチで活躍する日を今か今かと待ちわびていた。満を持して2016年からトップチームに昇格を果たす。しかしFリーグの舞台では苦難の連続となった。
優勝を義務付けられた名古屋は、常に強力な外国人が所属してきた。平田が昇格した2016/2017シーズンは、シーズン途中にダニエル・サカイ(現ペスカドーラ町田)が加入。外国人枠の関係で平田はFリーグの登録メンバーを外された。翌2017/2018シーズン、平田は日本国籍を取得して臨むも、ラファ、ヴァルチーニョ、ルイジーニョの強力ブラジル人トリオの前に出場機会を奪うことは難しかった。
しかし、出場機会はそういった外国人選手の加入だけではなく、平田自身にも問題があった。強靭な肉体を持つ平田だが、相手選手とのマッチアップで優位性を生み出すことはできず、逆にパワーコントロールを誤りオフェンスファウルを取られる場面が散見された。さらに平田はこういったプレーで苛立ちを隠せず、警告をもらう場面も目立つ。また、いい形でボールを受けても自分で仕掛けることはなく、味方につなぐプレーを第一に選択していた。
森岡2世と期待されていたが、そういった外国人選手とのポジション争いやメンタル面、自身のプレーの問題で平田は長く苦しんだ。
しかし、今シーズンは大きく成長した姿を見せる。立川・府中アスレティックFCとの第3節では、相手とのフィジカルコンタクトでファウルを取られる場面があっても苛立ちを見せず。さらに、ボールを受けるとゴール方向に仕掛けるなど積極性を見せた。迎えた18分には、相手陣内の左サイドでボールを受けると、そのまま前方にボールを運びGKクロモトと1対1に。平田は左足でボールをまたいでクロモトの体勢を崩すと、そのまま左足でシュートを蹴り込んだ。今までの平田には見られなかった冷静さの中で生まれたゴラッソだった。
試合後のミックスゾーンでゴールシーンを振り返ってもらうと「いつもはシュートを打つまでに何をやろうかと考えてしまいます。今日のシュートはいつも練習してきた形。自然と出せて、一番うれしいゴールですね」と喜ぶ。
この2年間は厳しい現状を突きつけられていたが、平田にとっては全てが自身の糧となったようだ。世界レベルのプレーを見せるラファとヴァルチーニョのプレーを間近で見て、さらに積極的にアドバイスをもらっていたという。
「去年まではメンバーを外されてメンタル的に落ちることもありました。でもあの2人(ラファとヴァルチーニョ)を見ていると仕方ないなと。彼らとはポルトガル語でコミュニケーションをとっていますが。そこで自信を持ってシュートを打てといわれました。それができれば必ず決まると。そういうメンタルの部分は今日のゴールに生きています」
ようやく自分のポテンシャルを発揮できるようになってきた平田。一般的に、一人前になるためには3年の時間を要するといわれている。平田は今年、ちょうど3年目のFリーグを迎える。「やらなければいけないですね。でも今年は自信を持ってやれています」と自分の成長に手応えを感じているようだ。
覚悟を持って臨む今シーズンは15ゴールを目標に設定しているという。しかし「サテライト時代から見てきた憧れの選手」である森岡薫は3年目の2016シーズンに16ゴールを奪っている。日本のフットサル界を背負って立つ偉大な先輩だが、彼を下回る目標には少々残念な気持ちになった。プレー面と同様にもう少し我を出すことができるようになった時、“森岡2世”ではなく森岡を越える“平田ネトアントニオマサノリ”となれるだろう。今シーズンが飛躍のシーズンとなるか見届けたい。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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