持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」の予選Cブロックの1位決定トーナメント1回戦(三番勝負)が7月15日に放送され、5月に初タイトルを獲得した高見泰地叡王(25)が阿久津主税八段(36)を下し、1位決定戦へと進出した。勢いのある若手とA級棋士のぶつかり合いは、不慣れな超速将棋の中で攻守が目まぐるしく入れ替わる展開に。フルセットの末、2勝1敗で高見叡王が勝ち上がった。
将棋を愛する若者が、未体験の超早指し戦で将棋に愛された。第1局、高見叡王が終始冷静な指し回しを見せ109手で勝利したが、一転して2局目は阿久津八段に作戦勝ちを許した。そして勝負の3局目。相掛かりで始まった対局で駒損し、苦しい展開で終盤を迎えたが、ここから粘りの王手ラッシュ。とにかく食らいついた。解説していた木村一基九段が「攻めている方が早指し将棋は楽。攻めている方は1つでもパンチが入ればいいんですが、受けている方は全部受け止めなくてはいけないので」と指摘したとおり、ひたすら繰り出すパンチの中で、阿久津八段に生じたすきを逃さなかった。
熱い3局を終えた高見叡王は「いい時はそのままで、悪い時は相手についていく。決断よく指していけば、結果はついてくるものだと思います」と振り返った。その言葉どおり、タイトルホルダーらしい落ち着きと、若手らしい勢いと粘り。とことん将棋を愛する男に、ぎりぎりのところで勝利の女神が味方した。
※高見叡王は対局当時、六段。
◆AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治竜王が着想した、独自のルールで行われる超早指し戦によるトーナメント。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生竜王が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選は藤井聡太七段が登場するAブロックからCブロックまで各4人が参加し、各ブロック2人が決勝トーナメントへ。シードの羽生竜王、久保利明王将を加えた8人で、最速・最強の座を争う。
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