村の面積の約９割が「山」だという、岡山県西粟倉村。この人口1500人ほどの小さな村では林業の復活に取り組み、なんとこの10年で30社以上が起業、総売上は年間15億円にも上っているという。
子ども用の家具や遊具の販売で約２億４千万円を売り上げる「木の里工房 木薫」や、これまで見向きもされなかった間伐材を活用した事業やゲストハウス事業などで年間約７千万円の売り上げを達成した「sonraku」といったベンチャーが活躍、「ローカルビジネスのシリコンバレー」とも呼ばれている。
同村では、村役場が中心となって雇用対策協議会を作り、移住や起業をサポート。総務省の「地域おこし協力隊」などの制度も活用してきた。そして村の森林でしっかり稼げる仕組みを作りたいと、2009年に掲げたのが「百年の森林構想」だ。
役場が所有者から森林を預かって、間伐や作業道を整備する取り組みもはじめた。地域の資源を活かした商品開発や販売を行う「西粟倉・森の学校」代表の牧大介氏は、「周囲の自治体と合併するはずだったが、結局村を残すことにした。覚悟を決めた以上、森や木が好きなんだ、何かやりたい、という人を呼んでこようと、役場中心に進めてきた。役場としても、柔軟に攻め続けることができた」と振り返る。
村の外から新しく入ってきた人やビジネスを受け入れることについて牧氏は「地域のために自分たちが頑張るんだという人だと、かえってややこしくなる。地域に引きずられないように、自分が本当にやりたいことをやっている人たちを応援することを徹底している」と話す。
「村内だけでなく村外にもいた1300人ほどの山主（地権者）に役場が総当たりでぶつかりながら、村全体の山をまとめる努力を進めてきた。そして、自力で管理をされない所有者様の山を役場が預かって管理するという体制を整えた。山主様も山に愛着があるので、当初は役場に任せることに抵抗がある人も多かった。粘り強くやっているうちに売上も立って、若い人も増えてきた。次第に理解も深まり、全体の機運が高まってきた。山主の気持ちに反するような乱獲は避け、一生懸命に育ててきたものにさらに手をかけていいものにしていき、その中で出てくる間伐材を外に売っていく。過疎だった村が、今では子どもの数も増えてきた。雇用も増え、将来的には村で育った子が林業に就職できる可能性も出てくる」。
■林業の経営を変える可能性がある"林業IOT"
最先端テクノロジーも、林業再興の可能性の立役者になりそうだ。
「woodinfo」代表の中村裕幸氏が開発している技術に、山を3Dでスキャンするというものがある。「３次元のレーザースキャナーで森林を計測する。写真のように見えるが、ひとつずつが細かな点の集まりで、色々な情報をもっている。それを解析することで、森林の生産に役立つ情報が得られる。木一本ずつの場所がわかるので、どういう順番で木を切っていけばよいか、どの木を切ってどの木を残すかといった計画をすることができる。木の上の方までデータが取れているので、どういう風に切れば今の相場で最も高く売れる切り方にできるかという判断材料にもなる」。
「今までの森林経営は、数字を見てこなかった。しかし山に生えている木を在庫だと考えれば、本当は計画を立てるべき。この3Dデータを導入することで、近代的な経営を森林の中に持ち込める。森林の従事者は全国に4万5000人しかいない。しかもそのうちの７割が日雇いという状況なので、若い人たちがなかなか林業に興味を示さない。数値に基づく林業経営をしてもらい、それをひっくり返したい。日本中の立っている木全てに背番号をつけたい」。
このデータを導入した岩手県の森林組合連合会では取引量が３倍に増え、材木の売り上げが増加したという。中村氏によると、鳥取のある森林組合では生産量が３年で３倍に向上、周辺産業も含めて100人以上の雇用を生み出したのだという。
牧氏が「日本国内で消費しきれないくらい山がたくさんあって、供給過剰になってきていて、中国からの需要に対応している企業も増えてきている。中国にも木はあるが、伐採せずに資源を保護しているので、アメリカやニュージーランドから大量に買ってきて加工する工場がたくさんある」と話すように、日本の木材の輸出量は実は年々増えているという。
中村氏も、「ただ日本が売っているのは丸太なので、中国で加工され製品として日本に戻ってくる。結局は出せば出すほど損しているということになる。本当は日本で加工して製品にしないといけない」と指摘する。林業に携わる人々の熱意と新しい技術で、日本の林業が元気になれる可能性がまだまだありそうだ。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
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