2年ぶりにバルドラール浦安に復帰した深津孝祐。スペインでの武者修行では何を感じ、何を学んできたのだろうか。新指揮官の下、苦しい戦いが続く浦安の救世主となるため、深津が考える若いチームに必要なこととは――。
若い選手にはプレーで伝えたい
「スペインではプレーヤーとしてはもちろん、人間的にも成長を遂げたい」
2016年8月9日。バルドラール浦安の公式HPで衝撃的なリリースが流れた。チームの主力として活躍してきた深津孝祐のスペインリーグ挑戦が発表されたのだ。
当時のチームは2016/2017シーズンの第11節を終えた時点で3勝2分け5敗で9位と低迷。苦しいチーム状況の中で深津は、自身最後となった名古屋セントラルでの2試合を2連勝で終えて、スペインへと旅立った。
スペインでは、2016-17シーズンにサラゴサでプレー。2017-18シーズンにはリベラ・ナバーラでプレーすると出場機会を得て、チームをプレーオフに導く活躍を見せた。しかし今年の6月14日にリベラ・ナバーロからの退団を発表。自身のツイッターで日本復帰を明かすと、同月21日には国内数クラブの競合の結果、古巣である浦安への復帰が発表された。
迎えた7月7日七夕のDUARIG Fリーグ2018/2019 ディビジョン1第4節、バサジィ大分を浦安市総合体育館に迎えた一戦で、深津は約2年ぶりにFリーグのピッチに帰ってきた。4分が経過する頃に2ndセットとしてピッチに立つと、ディフェンスでは大分のキーマンである上福元俊哉をマーク。オフェンスでは、積極的なフリーランニングで攻撃のリズムを作るなど違いを見せた。
しかし、これらの動きはスペインに行く前から見せていたもの。一体、深津はスペインで何を学び、何が変わったのか――。
「もともと、ドリブルからシュートに持っていくような選手ではありません。(自分の良さは)味方を生かす動き、味方に生かしてもらう動きです。その中で、細かな部分へのこだわりやハードワークが(スペインに行く前と)変わったところです」
深津がこだわるようになったこの「細かなところ」。これこそがスペインと日本の大きな違いの1つだと感じているという。
「スペインでも大雑把な試合に見えることはありますが、実際には、どの試合でも本当に細かな部分までこだわっています。数メートル単位、数歩単位での寄せの部分。体の向きにもこだわります」
たしかに、浦安のスペイン人指揮官であるアルベルト・リケル監督は、試合中でもピッチ上の選手に大きな身振り手振りで細かく指示を送る。ベンチに戻ってきた選手に対しても、すぐに修正点を伝えるなど、座っている姿は見られない。深津は、そういった細かなことの積み重ねが今の浦安には必要なことだと考えているようだ。
「監督は練習から非常に細かく指示を出します。そういった細かな部分や小さなことを積み重ねていく。それが相手の嫌がることだったり、こちらが優位性を出せる部分だったりするので、今すぐ結果は出ないかもしれないですが大事なことです」
また、31歳を迎え、年齢としてはフィールドプレーヤーでディドゥダに次いで上から2番目となる深津には、チームを引っ張るベテラン選手としての役割も大事になってくる。浦安のフィクソといえば、小宮山友祐や荒牧太郎(現ヴォスクオーレ仙台)といった闘将タイプの選手が多い。
しかし深津は、スペインでの武者修行で得た経験を元に「若い選手たちには、監督がいっていることはこういうことだよとプレーで伝えたい」と自然体で臨む。
新指揮官の下、1勝1分け2敗と苦しんでいる浦安。しかし深津の復帰は、今後のチームの成長を考えると大きなものとなりそうだ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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