7月17日正午、麻雀のナショナルプロリーグ「Mリーグ」の発足会見が行われ、日本中の麻雀ファンが湧いた。7社の一流企業が既に参加の名乗りを上げており、今まで想像もできなかった規模である。藤田晋チェアマンの言葉の通り、これはまさしく革命的。麻雀界の新たな時代がスタートするのだ。
選手の選考方法に注目が集まる中、既存の5つのプロ団体所属の選手たちからドラフトで指名されることが発表された(連盟、最高位戦、協会、麻将連合、RMU)。最低年俸400万円、優勝賞金5000万円。いよいよ立派な職業としてのプロ麻雀選手が誕生するわけだが、それではこれまでの「プロ雀士」とは何だったのか?
ただプロと名乗っていただけ、などと揶揄する声も聞こえてくるが、私は従前のプロ選手たちの姿勢がプロフェッショナルでないとは少しも思わない。私見であるが、少しここで「麻雀プロ」について考えてみたいと思う。
確かにこれまで、競技で報酬を得るという実態は多くの麻雀プロが伴っていなかったかもしれない。しかし自ら「プロ」と名乗るのは勇気がいるものだ。「麻雀の腕で生きて行くんだ」という強い気持ちと自信がなければできないことだ。たとえ実際の食い扶持が麻雀店の給与であっても、本業の傍ら競技会に参加して、賞金を獲得できずに帰ることがほとんどであっても。
寝る間も惜しんで対局を検討し、戦術を研究し、共有して更なる高みを目指す。私はそんなストイックな姿勢で麻雀技術を磨き続ける人たちをたくさん見てきた。また一方で、どうすれば本当に麻雀で暮らしていけるようになるのか?本来ならば麻雀馬鹿として競技のみで生きて行きたい選手たちが、懸命に話し合いを重ね、手弁当で苦手な組織運営や渉外活動も行ってきたのだ。
今回Mリーグの所属選手が、既存のプロ団体からの指名となったことも、彼らの卓越した技術と専門性が認められてのことだろう。麻雀についてはやはりプロ選手が一番だよね、ということだ。これは誇るべきである。これまで耐え忍びながら牙を磨いてきた選手たちには、大きな舞台でド派手に戦ってほしいと思う。
ただ、ここからはより大きな責任が生まれることを忘れてはならないだろう。スポンサー企業は多くの人を背負っている。経営陣・社員・子会社・株主・顧客・消費者…。 それらに加え、選手たちは、これから倍増するであろうファンからの期待・社会からの視線も背負うことになる。
麻雀プロたちは、一つの行いが一体何万人に影響を及ぼすことになるのか、しっかりと考える時である。大きな舞台で渡り合っていくために、一人一人がコンサルテーションやマネジメントの専門家の協力を得ることも当然必要になるだろう。一つの打牌で、何万人を感動させることができるかもしれない舞台なのだから、大切に育てて行ってほしい。
まずは地に足をつけて一歩一歩を刻んでいこう。麻雀界をどう変えていくことができるか、関係者たちも、ファンたちも、活発に意見を交わしていきたい。長年プロ雀士たちが夢に見てきた世界へ続く大いなるステップを、今夏、Mリーグが踏み出させてくれたのだ。課題は山積みだが、およそ半世紀におよぶプロ麻雀界の情熱と知見をもってすれば、きっとできるはずである。
「麻雀プロ第一号」と呼ばれた小島武夫プロが存命であったならば、この歴史的一歩にどんな言葉を寄せただろうか。天国のミスター麻雀を笑顔にできるような世界になっていけば良いと切に願う。まずは8月7日、ドラフト会議は絶対に見逃せない一日となるだろう。 【麻雀キャスター・小林未沙】(C)AbemaTV