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(HARASHIMAに渾身のビーストボンバーを決め、防衛を果たした入江)

(C)DDTプロレスリング/宮木和佳子

7月22日のDDT・後楽園ホール大会は、KO-D無差別級王者である入江茂弘にとって「忘れることのない」ものになった。

DDTシングル最高峰のベルトを持つ入江が今大会で迎えた挑戦者はHARASHIMA。団体初期から活躍し、何度もKO-D無差別級王座を獲得している。5年前、初戴冠時の入江からベルトを奪ったのもHARASHIMAだった。

HARASHIMAは「いつでもどこでも挑戦権」というシステムを使っての挑戦だったが、入江は「そんなものは必要ない」というスタンス。HARASHIMAであれば無条件で挑戦を受けるし「熱い気持ちがあるなら誰が挑戦してきてもいい」と語っている。

入江にとっては、選手がシステムやルールに縛られているのが気に入らない。その怒りの矛先はプロデューサーである男色ディーノに向けられた。対するHARASHIMAは長くDDTを牽引してきただけに、ルールやシステム自体は否定しない。むしろ「今のDDTはつまらない」という入江の発言に不満を感じていたようだ。

そんな対立の構図があったこのタイトルマッチだが、試合が始まると攻防の激しさが主義主張、その正否を凌駕していくことに。入江は相手の死角からぶつかっていく「交通事故タックル」をはじめエプロンの角に相手を叩きつけるパワーボム、全体重を浴びせるキャノンボールと激しく攻め込む。

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(HARASHIMAも顔面蹴りなど容赦ない攻撃が目立った)

(C)DDTプロレスリング/宮木和佳子

HARASHIMAはボディブロー、スワンダイブ式フットスタンプなど腹部への攻撃でダメージを与え、必殺技である蒼魔刀を背後から決めると、容赦ない顔面蹴りも。

“エグい”と表現したくなる闘いに打ち勝ったのは入江だった。フィニッシュは両手を広げて立ちはだかったHARASHIMAにぶち込むビーストボンバー。まさに渾身のスリーカウント奪取だ。

ついに“HARASHIMA超え”を果たした入江は、チャンピオンとして壁を乗り越え、大きな一歩を記したと言えるだろう。この勝利は「自分のキャリアにとって、凄く大事なこと」と入江。

HARASHIMAも「悔しいけど嬉しさもありますね。試合前はいろいろ言ったけど、僕たちは闘うことでしか表現できない。チャンピオンは強かったです」と入江を称えた。

試合後、入江は海外でのタイトルマッチを表明。これをプロデューサーとして許可するとしたディーノには「お前に決められる筋合いはねえ! こっちはもう決めてんだ」と毒づいた。

そこへリングインしてきたのは、入江と行動をともにしてきたサミー・ゲバラだ。この日の大会、前半戦で「いつどこ権」の一つを獲得していたゲバラは、試合を終えたばかりの入江に挑戦。すぐさまタイトルマッチが緊急決定する。

入江とHARASHIMAの激しい闘いに触発されたというゲバラは「みんないつどこ権を使わないのは彼(入江)を怖がってるからだろ。でも俺はチームメイトだからな」と純粋な思いで試合に臨んだようだ。

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(追加で急遽決まった王座戦、ダメージの残る入江を追い込んだゲバラ。リバースG2Sも的確にヒット)

(C)DDTプロレスリング/宮木和佳子

空中殺法を武器とし、試合ごとに日本のファンの心を掴んできたゲバラ。入江とのタイトルマッチでもリング内・外かまわず飛びまくり、入江のパワーに対抗していく。またリバース式(相手をアルゼンチン・バックブリーカーに捉えた形から)のgo2sleepで顔面を蹴り上げるなど、多彩かつ難易度の高い技で観客を驚愕させた。

それでも、最後は入江が交通事故タックル、キャノンボール、ビーストボンバーと得意技を続けざまに放って勝利。入江は「いつどこ権」というDDTのルール、システムを乗り越えて1大会で2度の防衛に成功した。

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(入江のユニット名はRENEGADESに決定。国際色豊かなところも魅力だ)

(C)DDTプロレスリング/宮木和佳子

試合後のリング上には、入江、ゲバラに加え渡瀬瑞基、ジェイソン“ザ・ギフト”キンケイド、“ネオン・ニンジャ”ファサードと入江軍が揃って登場。インタビュースペースでは、これまで入江軍と呼ばれてきたこのユニットの正式名が「RENEGADES(レネゲイズ)」となることが入江から告げられた。「RENEGADES、つまり俺たちは反逆者で裏切り者なんです、DDTにとって」と入江は言う。

入江がDDTの体制に反旗を翻すようになったのは、海外武者修行を重ねたことがきっかけだった。自分自身を、そしてDDTを世界に広めたいという思いが入江にはある。そのために必要なのが、体制に逆らう「自由」だというわけだ。また入江が呼び寄せる外国人選手たちが、DDTの新たな魅力になっていることも見逃せない。入江vsゲバラのタイトルマッチには、間違いなくフレッシュな盛り上がりがあった。

チャンピオンであり反逆者。しかし単に反抗するだけでなく、入江はDDTを確実に前進させてもいるのだ。

文・橋本宗洋

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