昨年6月、「豊洲、そして築地、これらを両立させることが最も賢い使い道ではないか」として小池百合子都知事が突如打ち出した、玉虫色の2大市場構想。「築地は守る、豊洲を活かす」とし、「築地のブランド力と地域の魅力を一体化させた食のワンダーランドを作りたい」と述べ、5年後をメドに築地を食のテーマパークとして再開発する一方、競りなどの市場機能を持たせ、希望者は築地に戻れるという構想だが、これが混乱に拍車をかけた。その築地の再開発についても食のテーマパークにするのか、取りやめるのか、未だ具体案は決まっていない。
4日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した自民党の川松真一朗都議は「僕にはいっぱいアイデアがあるので、知事が聞いてくれれば市場の移転問題はもっと明るくできた。築地市場の用地ではなくて、東京都全体が食のテーマパークであって、それを目当てに世界から人が集まってくるんだから、新たなテーマパークは必要ない」と話す。
築地市場仲卸の渡部惠子氏は「場内の社長たちとテレビを見ていて、(小池都知事が)"再整備"という言葉を使ったので、"築地で再整備なんだ"と沸いた。でも記者が"本場(ほんじょう)はどこに"と聞くと、"本場は築地に移転させる"と。玉虫色にしたことがすぐに分かった。なぜ惑わすような言葉を使うんだろうと憤りを感じた。やるんだったら築地でやりたいが、帰れないのを分かった上で小池さんを信じて付いていこうとした仲卸さんたちもいっぱいいた。何店舗も持っている仲卸さんは従業員が何十人もいて、10億円かけて豊洲に移転する。おいそれと帰れるのか。いい加減なことを言わないでほしいという声もあった」と明かした上で、「築地には80年の歴史があって、場外も頑張ってきたし、おいしいものがたくさんある。ただ"テーマパーク"とざっくり言われても、何だろうと。道の駅のお魚版のようなものは作っていただきたくない」と訴えた。
元「都民ファーストの会」の音喜多駿都議も「真剣に検討していたとは思えない。私が小池都知事と親しかった時期、ブレーンと呼ばれる方に"豊洲に行って戻ってきたら何十億もかかる。現実にこんなことできるのか。食のテーマパークを作れるのか"と聞いたら、"外資の水産業者を呼んで、フィッシャーマンズパークみたいなを作ればいいんだ"と言った。仲卸のことを考えているのではなく、単に小池都知事が新しいものを作ったというパフォーマンスに築地を利用しようとしていると思った。今の迷走の根本には"築地を何とかしよう。仲卸を救いたい"ということよりも、"何か新しいことをしよう。選挙のために乗り切ろう"というのがあったと思う。築地の意見、豊洲に行きたい人の意見の両方にいい顔をしようとした。その結果、引っ込みがつかなくなって、いまだに具体案ができてこない」と指摘。
「小池都知事が"選挙が終わり次第速やかに築地の再開発の方針を示して、賃料160億円を築地から生み出して、築地と豊洲の両方を活かすプランを立てる"としたことを私も信じた。それを履行しないのは極めて遺憾だと思う。私自身も事前にしっかりコントロールできなかったのが、大変申し訳ないと思っている。次の選挙で審判を下すしかないのが現実」。
音喜多氏の話を受け、川松氏は「市場の未来に向けて持続発展性を考えたら、パッと移転して、市場をどう盛り上げるかという一択しかなかったと思うあの頃は小池都知事が言うことが全部正しくて、自民党の言うことは嘘で、全部が悪、という雰囲気があった。僕らが"豊洲市場の方がいい。両方保つことは無理だ"と言っても"あなたたちには豊洲に利権があるからだ"という雰囲気だった。何もないのに」と振り返った。
■「これを機に仲卸業者の方にも真摯に謝罪して向き合ってもらいたい」
そんな中、豊洲に観光施設「千客万来」を作る予定だった「万葉倶楽部」が、「築地に同じような施設ができれば採算が取れない」として撤退の検討を始めた。今年5月には小池都知事自らが事態打開のため同社を訪れ陳謝。しかし高橋弘会長は「私ではなくて、都民の選択だからしょうがないと。明確に"会長、申し訳ありません"ということは言わなかった」、高橋眞己専務も「(築地の)方針がはっきりしない中で豊洲の方だけ判断しろと言われてもできない」と述べ態度を硬化させた。
交渉決裂が現実味を帯びる中、小池都知事は再び謝罪。「万葉さんへの配慮ということが十分ではなかったということについてはお詫びも申し上げた。本格着工についてはオリンピック後、2020年大会後に進めるということで決着した」と明かし、「千客万来」の開業が大幅にずれ込むこととなった。
音喜多氏は「豊洲の住民の方とのお約束でもある。地域住民の中には、朝から晩まで騒音がするような市場は欲しくないという人もいる。そこで千客万来という施設を作ることによって、地域全部で盛り上げていきましょうというお約束をしていた。だから市場だけが先行開場し、お約束だった賑わい施設が来ないというのは約束違反だろうということで怒っている方がいらっしゃる」と説明。「千客万来が2020年まで着工できないので、それまでの2年間は暫定事業で盛り上げる約束をしているが、そもそも何の予算でやるのか、カジノをやるのかステージパフォーマンスをやるのかなど、その実態も全く見えてこない」と話す。
「残れると聞いてたのに方針が撤回された以上、ちゃんと説明がなされない限り一歩もどきませんと言われれば、都も反論できない。だから小池知事は基本方針について"できそうもありません"と腹を割って話さないと座り込みのような状況も起こりかねない。今回、遅きに失したとはいえ小池都知事は初めて自分のやった選択について謝罪した。これまでの謝罪は、"これまで東京都がしてきたことに対して、私も都知事として謝罪する"、というもの。謝るようでいて、石原都政を攻撃していた。これを機に仲卸業者の方にも真摯に謝罪して向き合ってもらいたい」との考えを示した。
川松氏も「都知事の判断が鈍って、万葉倶楽部さんに先延ばししてくれということを勝手に密室で決めてしまった。しかも2か月経ってもいまだによく分からない状態だ。暫定事業の予算を渡部さんたちが納めているお金から出すのか、都民の税金から出すのかということさえ決まらないまま、形だけ先行している。都知事は今後、財源の問題が苦しくなると思う2年限定となると、本腰を入れてやろうという民間業者もなかなか出てこない。小池都知事も素直に謝るところは謝った方がいいと思う」と指摘していた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)