8日の辞任会見で「どうか選手の皆さん、将来東京オリンピックに参加できなくても、その次のオリンピックもある。頑張ってください」と呼びかけた日本ボクシング連盟の山根明氏。吉森照夫副会長によると、山根氏は緊急理事会で何度も「会長の役職を続けるならば、東京オリンピックへの出場派遣が難しくなる可能性がある」と説得されたという。
宮崎県ボクシング連盟の菊池浩吉副会長は同日、「聞きようによっては、"東京オリンピックはダメだろうね"という風に聞こえた。ここに至ったのは連盟と山根会長が今まで行ってきたことによるものなので、その責任を感じて頂きたいと感じた」と憤った。
JOC(日本オリンピック委員会)の加盟団体規定によれば、加盟団体が管理運営に適正を欠いた場合、補助金・交付金の支給停止や減額、資格停止、除名などの処分を受ける可能性があり、資格停止や除名の場合、東京オリンピックに出場することができなくなる。JOCの竹田恆和会長は「ボクシングの選手たちがオリンピックに出られるように考えていきたいと思う。そのためには今のボクシング連盟がきちんとしたガバナンスを立て直していくことが大事だと思っている」と指摘、JOCの要請に基づき、日本ボクシング連盟は第三者委員会の設置を決定した。
11日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した川松真一朗都議(自民党)は「第三者委員会の調査では、かなり踏み込んだ結果が出てくると思う」と話す。「ボクシングのイメージがとても悪くなっていて、競技が行われる国技館周辺の街づくりをしている人たちからも、"ボクシング、いらないんじゃないの"という雰囲気が出始めていて、非常に悲しい」。
山根氏がオリンピックへの参加に言及したことについて、告発状を提出し、現在は「日本ボクシングを再興する会」の代表を務める鶴木良夫・元日本ボクシング連盟理事は「"自分がいなくなればオリンピック参加はないよ"、ということを言いたかったんだと感じた」と指摘、「いち早く正常な状態に戻して、普通の競技団体にしたい」と話した。
■競技自体が外される可能性も
そもそもボクシング競技はIOC(国際オリンピック委員会)でも窮地に立たされている。2016年のリオオリンピックでの不可解な判定をめぐる八百長や買収疑惑に続き、今年1月にはAIBA(国際ボクシング協会)会長代行に就任したウズベキスタンのガフール・ラヒモフ氏について、アメリカ財務省が「ゆすりや自動車窃盗、ヘロイン売買にも関わる重大な犯罪者だ」としているのだ。
山根氏は、そんな"いわくつき"のラヒモフ氏とも交流があるといい、記者に時計を見せながら「これはね、ミスター・ガフールからのプレゼント。石はダイヤだ」などと語っていた。2月、IOCのバッハ会長は、ボクシングを東京オリンピックの実施競技から除外する可能性を示唆しており、今回の疑惑が審議に及ぼす影響を懸念する声もある。鈴木俊一オリンピック担当大臣も10日、「今のところ、東京オリンピックでボクシングが競技種目として採用されるかどうかはまだちょっと宙ぶらりんの状況だ」とコメントしている。
ロンドンオリンピック金メダリストの村田諒太選手は「ボクシングがオリンピック競技から外されるかもしれない中で公平性が保たれるかな。JOCが統括団体としての役割として第三者委員会を立ち上げればいいと思う」としている。
川松氏は「海外の上部団体に対するロビー活動ができる人材が日本には育っていないという課題もある。ボクシング連盟の場合も、山根氏以外、世界のボクシング団体を相手に渡り合える人がいなかった。もちろん、山根氏が育てなかったという側面もあるが、IOCが競技参加を認めた場合、世界とのパイプがなくなることを懸念する現場の声もある」と話す。
スポーツライターの小林信也氏は「このままだと日本はオリンピックに代表選手を派遣できないし、現状では競技自体が追放される可能性も高い」と話す。「政治家の方々は本当にスポーツを利用し過ぎだ。僕は東京オリンピック招致に一貫して反対し続けてきたおそらく唯一のスポーツライターだ。東日本大震災の復興ができていないのに、復興していると言い続け、スポーツ界では不祥事が続いてきた。しかし政治家、政府も"これは一部の人がやってきたことで、スポーツ界の問題ではない"と否定し続けている。これらの問題が解決していないのに、なぜスポーツを推進するのかを問いたい。日本政府、JOCも今回の問題が出てきて困っていると思う。平昌オリンピックでメダルを取った選手たちはそういうことを超越したところで非常に自発的、主体的だった。自分の感性の中で喜んだり緊張したり、練習をしている選手がたくさんいて、共感も呼んだと思う。そこがこれからの手がかりになるのではないか」。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)