クリスティアーノ・ロナウドは世界最高の選手だ。
それについて、誰も異論はないだろう。もちろん、バルセロナでプレーするリオネル・メッシも世界最高の選手の一人だろう。奇しくも同じ時代を生きる彼らは、唯一無二のライバルであり、もう10年以上も「世界最高」の座を競うようにしてお互いを高め合ってきた。
それでも、ロナウドをNo.1に推すファンは圧倒的に多い。その理由の一つはバロンドールだ。
「世界最高」のその先へ
年に一度、「世界最高の選手」に与えられるこの賞を、ロナウドは5回も獲得してきた(2008、2013、2014、2016、2017)。メッシも同様に5回も獲得してきただけに、2008年から2017年までの10年間は、本当に2人だけが“世界最高”に君臨してきた。まさに甲乙つけがたいところだろう。
しかしこの賞は、所属クラブの成績が加味される側面もあるため、個人の成績で考えれば、ロナウドの方が結果を残したシーズンでも、リーグタイトルや欧州最強のクラブを決めるチャンピオンズリーグ(CL)のタイトルを獲得できなかったためにメッシに譲ったこともあった。その意味で、わずかにロナウドの方が「世界最高にふさわしい」と言われることがある。特に、過去にCL決勝のピッチに6回も立って、4点を決めるなど、大舞台に強いという彼の強烈なインパクトは、多くのファンの心に刻まれているのだ。
ほかにもロナウドは、クラブでも代表でも個人としても、プレミアリーグやラ・リーガの得点王、CL得点王をはじめ、数え切れないほどのタイトルを獲得してきた。メッシもそうだが、彼が唯一獲得していないのは、ワールドカップの優勝だけかもしれない。それくらい、すべてを手に入れてきた。
それほどまでにタイトルを手にできた理由はただ一つ。圧倒的なゴール数だ。FWのロナウドはいつも、誰の目にも明らかな「ゴール」という結果で自身の力を証明して、チームを勝利に導いてきた。
大西洋に浮かぶポルトガルのマデイラ島出身の彼は、幼少期に街一番の選手として有名になり、周囲のサポートを受けながら、母国の名門・スポルティングの育成組織からプロキャリアをスタートさせた。その頃からすでに、結果に対してどこまでも貪欲で、誰よりも負けず嫌いだったロナウド少年は、「世界最高のクラブでプレーする」ことを夢見て、結果を残し続けてきた。
スポルティングとマンチェスター・ユナイテッドとの親善試合で当時の敵将、アレックス・ファーガソンに見初められてマンチェスター・Uに加入すると、圧倒的なスピードで成長し2009年に待望のレアル・マドリード入りを果たした。移籍金は当時のサッカー史上最高額の8000万ポンド(約104億円)。本拠地サンティアゴ・ベルナベウで行われた入団発表には10万人が詰めかけた。ただの入団発表に、である。
ロナウドは、このプレッシャーに屈することなく、ここでもゴールという結果で周囲の期待に応え続けてきた。公式戦でキャリア通算761試合・573得点。そのうち、レアルに在籍した9年間は、438試合・451得点。誰もが認める圧巻の数字をたたき出してきたのだ。
世界最高のクラブで、最高の結果を残した。彼にはもう“これ以上”はないのではないか。だが――。
7月10日、レアルからロナウドの退団が発表され、続いてセリエAのユベントスへの加入が発表された。移籍金はセリエA史上最高額の1億ユーロ(約135億)。セリエAを新天地に選んだのだ。
欧州4大リーグと呼ばれる、プレミア、ラ・リーガ、セリエA、ブンデスリーガのうち、3つ目のリーグで戦うことになる。セリエAは、今でこそプレミアやラ・リーガに人気、実力で劣るとされているが、かつては世界最高のリーグと呼ばれていた。しかもユベントスは、昨シーズンに史上初の7連覇を達成したビッククラブだ。ロナウドの新たなチャレンジとしては、申し分のない舞台だといえるだろう。
レアル時代は、3トップを組んだウェールズ代表のギャレス・ベイル、元フランス代表のカリム・ベンゼマの頭文字を取った「BBC」という象徴的な攻撃ユニットが話題を集めたが、セリエAの開幕を前に、早くも新たなユニットが話題となっている。それは、3トップの右にアルゼンチン代表のパウロ・ディバラ、左にブラジル代表のドウグラス・コスタ、中央にロナウドが並ぶ「DDC」だ。
BBCでは、やはりロナウドが飛び抜けた得点力を見せたが、ユべントスで実現する最強の攻撃ユニットでもまた、彼が圧倒的なゴールでチームを前人未到のリーグ8連覇、そして23年ぶりのCL制覇へと導いていくのだろうか。“世界最高の選手”のプレーからは、これからもまだまだ目が離せない。
予想サイトの『SUPERCHOICE』では、日本時間19日の1時にキックオフを迎えるユベントスの開幕戦を対象にした「クリスティアーノ・ロナウドはキエーボ戦で何ゴール決める?」に対して2.84倍の「1ゴール」が2番人気だが、「2ゴール」も4.22倍、「3ゴール以上」も10.58倍と票が入っている(※15日19時現在)。これまで、大舞台で何度も世界中のファンを魅了してきただけに、C・ロナウドの圧倒的な決定力には、相変わらず大きな期待が集まっているようだ。
文・本田好伸(SAL編集部)
写真・アフロ
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