ネイマール、ロナウジーニョ、原口元気、大津祐樹──。サッカー界には、幼少時代にフットサルをプレーし、その後トッププレーヤーに上り詰めた選手は多い。幼い頃にフットサルを学ぶことがサッカーにも役立つと言われるほどだ。サッカーとフットサルという、似て非なる競技の中で、逆にサッカーからフットサルに生かせることはないのだろうか?
大きなコートで戦うがゆえの視野の広さ
中村友亮。Jリーグファンならば耳にしたことがある名前かもしれない。むしろ懐かしく思うファンもいるだろう。静岡学園高からヴィッセル神戸に入団し、FC琉球では背番号10を背負ってプレーしていたあの中村だ。
中村が本格的にフットサルに転向したのは2011-12シーズン。バサジィ大分でめきめきと頭角を表すと、2014-15シーズンには地元である静岡のアグレミーナ浜松に入団。2014年にはフットサル日本代表に初招集されると、AFCフットサル選手権で公式戦デビューを飾り、翌シーズンには絶対王者・名古屋オーシャンズに加入するなどサクセスストーリーを歩んできた。昨シーズンからは再び浜松に復帰し、下位に低迷するチームを救うべくプレーしている。
迎えた8月4日の第8節、エスポラーダ北海道戦ではゴールこそなかったものの、中村の役割はチームの勝利に大きかったように思う。
本来はアラの選手だが、この日はピヴォの位置でプレーする場面が多かった。相手を背負って反転してシュートなど本来のピヴォの動きとは違い、中央でボールを収めてサイドにパスを捌き、さらには相手の裏をとって一気にゴールへと迫り、はたまたサイドに流れてから縦に仕掛けるような動きが多かった。
「1stセットだと前目の位置をとったほうが良いかなと思っています。セット内でも話していて、(日永田)祐作はアラで仕掛けてほしい。マサさん(山元優典)、ハギ(萩原洪拓)は後ろめでバランスとっているので、僕は前にポジションを取ったり、後ろから前に抜けるようなイメージを持ってプレーしています」
実際に中村は、この試合で前半に3度、後半に1度の決定機を迎えた。惜しくも決めきれず「あれは自分の力不足」と認めるも、チームの攻撃を牽引していたことは間違いない。
この試合でも中村のフィジカルの強さは目立っていた。154cmとリーグの中でも小柄な彼だが、球際の強さは際立っている。中村自身も「サッカーだともっと激しく潰されることもある中で、フットサルは5ファウルというルールがあります。確かにフィジカルの部分ではサッカーの方がきついものがありました」と自信を持つ。
しかしフットサル選手として戦う中で、サッカーが生きていると感じるのは「視野」だという。
「確かにフットサルは独特の動きがあって、適応するのは難しかったです。でもサッカーにはフットサルにないダイナミックさがあります。その中で、スペースを見つける動き、そこから縦に抜けるなどそういう視野の部分はサッカーが生きていると感じます」
フットサルは、フィールド上の4人が連動してスペースを“作り出す動き”がフォーカスされる。中村はそういったフットサル独特の動きの中から作り出されたスペースだけでなく、自然発生的に生まれたスペースを“見つける動き”で違いを作っているのだという。そういう状況を見る力、視野の広さこそ、サッカーから得たもののようだ。
中村の活躍もあり、浜松は今シーズンの初勝利を達成した。「選手である以上は目指さないといけない場所」と中村は代表復帰に意欲を燃やすが「まずはチームで結果を出すこと。自分のパフォーマンスが上がってくればもっと勝てると思っています」と地に足をつける。
そんな浜松は中断明けの17日(金)に中村の古巣でもある大分を浜松アリーナに迎える。中村がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。チームにとっても勢いに乗るために必要な2連勝。注目の一戦だ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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