名古屋オーシャンズはこの8月、昨シーズンのFリーグ王者として、インドネシアで行われたAFCフットサルクラブ選手権に臨んだ。アジアでも有数の力を誇るだけに、2年ぶり4回目の優勝が期待されていたのだが……。
結果は、元フットサル日本代表監督のミゲル・ロドリゴ率いるベトナムのタイソンナムFCに敗戦。準々決勝で姿を消すことになった。
名古屋でフル稼働した橋本優也は、今回が自身2度目のクラブ選手権。2016年に出場した前回は優勝、今回はベスト8。橋本は今大会で、どんな経験を得たのか。
自分がチームの中で一番下手
「負けはしましたけど、今後自分が成長するためにはすごくいい大会になりました。2年前は、トップチームに昇格して2カ月ぐらいの出来事で、あっという間に終わってあっという間に優勝させてもらったみたいな大会でした。だからそのときよりも得たものは大きかったです」
橋本は今回、本当の意味でチームの“イチ選手”として大会に臨んだ。サテライト(下部組織)から昇格したばかりの2年前とは、何もかもが違った。
「チームの中心として活躍しなきゃいけないという責任感もあり、その中でプレーできたことは自分の中でポジティブなことだと思います。国際大会での悔しさはなかなか経験できないと思うので、そういうものはすごく収穫かなと思います」
そういった責任を感じながらプレーしたからこそ、2年前には見えなかった課題も浮き彫りになった。それは、国際大会における「対応力」の必要性だ。
「Fリーグでは経験できないような守備のバリエーションや、守備のやり方、個々の選手の特徴など、まったく知らない相手と対戦するので、そういった意味でも、普段のリーグ戦とは少し違った大会でした」
情報がない未知数の相手だからこそ、その場その場での臨機応変な判断力が必要になる。Fリーグでは味わえない経験が、橋本の中にストックされたのだ。
クラブとして大きな目標に定めていたタイトルを取れなかったことで、名古屋はこれまで以上にリーグ優勝を逃せなくなった。だから橋本自身も、この大会で培ったものを最大限に生かして飛躍して、チームに貢献しないといけない。まだ24歳で、チームでは下から2番目。ただし、年齢は言い訳にできない。
橋本は「自分がチームで一番下手」だと言う。その言葉こそ、決意の表れだろう。
「練習で補える部分はたくさんあると思うので、この(プロクラブとしてフットサルに専念できる)環境があるからこそ、練習でも毎日毎日、成長できるので、その一秒一秒を無駄にしないで過ごしていれば、必ずいい方向に向かうと思います」
橋本は、小学生のときも「チームで一番下手だった」のだという。それでも、努力を重ねて着実に成長した。高校3年生のときには一度、名古屋サテライトのセレクションに落選した。それでも翌年に再挑戦して、合格をつかみ取った。
橋本はだから、努力が必ず実を結ぶことを知っている。小学生のときとも、高校生のときとも置かれている状況は違うが、やることは同じだ。日々の積み重ねの先に、名古屋で、日本代表で、不可欠な選手に成長していける“はず”――。
しかし、その保証はどこにもない。名古屋はプロクラブであり、選手としての評価は、基本的には結果で査定される。「努力」ではないのだ。だから橋本は今、その努力の証として目に見える結果にもこだわっている。
「大事なところで点を取って、2桁ゴールする。その目標はぶらさずにやります」
クラブ選手権で学んだ「対応力」というリアルな課題、クラブで直面している自分の立ち位置、そして、この先の自分のキャリアのこと。考えることはたくさんある。しかし、やることはいたってシンプルだ。
「2年後のワールドカップですか? もちろん出場したいという気持ちはありますけど、今はまだそんなに考えていなくて……。考えてないって言ったらウソになるんですけど、まずはこのクラブで結果を残して。まだまだ満足できないので、まずはこのクラブで中心選手となって活躍することを目指しています」
名古屋の“イチ選手”から“中心選手”へと変貌していく、今まさに、そのときだ。
文・舞野隼大(SAL編集部)
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