8月25日の東京女子プロレス・後楽園ホール大会における注目カードの一つが、赤井沙希vs滝川あずさのシングルマッチだった。

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(変形のネックロックなど得意技を次々と繰り出していった赤井)

(C)DDTプロレスリング

滝川は女子アナ志望からレスラーになり、婚活中でママタレも目指すという東京女子ならではの選手。10月で団体卒業・引退することが決まっており、今回は最後の“聖地”後楽園登場だ。

その大事な試合で滝川が対戦を望んだ相手が赤井沙希だった。「赤井さんに勝ってオスカープロモーション(赤井が所属する事務所)のキャスター・レポーター部門に入りたい」という野望も口にしていた滝川。

真面目な話をすれば、芸能活動をしながらプロレスラーとして新人賞を受賞した赤井は、滝川にとって憧れの存在だ。相談相手になってくれる大事な先輩でもある。

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(試合後、最後まで食らいついてきた滝川を赤井が称える場面も)

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滝川は少し前までNEO美威獅鬼軍に洗脳(?)されアズサ・クリスティのリングネームで活躍。沙希様とのタッグでチャンピオンにもなった。この“アズクリ”期に、彼女はこれまで蓄えた実力を解放し、一気に開花した感がある。

もちろん沙希様と赤井沙希はあくまで別人であり、滝川もアズクリとしての記憶がおぼろげとのことなのだが、ファンにしてみれば「滝川あずさと赤井沙希としてのシングルマッチ」はこの上なくエモーショナルだ。

虚実の入り混じり具合が激しい東京女子らしい対戦、滝川は赤井の関節技を「マイクを握っての嘘実況でロープに逃げたふり」という得意の戦法で脱出。アズクリの必殺技クリスティ・アガペー、相手の両手を交差させる体固めも繰り出して大善戦を見せた。滝川だから、アズクリだからではなく、そのレスラー人生で培ったすべてを赤井にぶつけていったのだ。

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(中島翔子vs里歩(我闘雲舞)はノンストップのテクニカルな攻防の末、里歩が蒼魔刀で勝利。里歩は東京女子のビッグマッチに欠かせない存在になってきた)

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一方、会見で「試合では優しくしない」と語っていた赤井も、その言葉通り厳しい攻撃。容赦なく蹴りを叩き込み、最後はランニング二段蹴り「新人賞」で3カウントを奪った。 この技名の由来は、もちろんプロレス大賞の新人賞。滝川はプロレス界入りを決意した際、赤井の受賞を伝える新聞記事を持ち歩き「プロレスにはこんな素敵な人だっている」と周囲に見せていたという。他にも得意技がある中、赤井はあえてこの技でトドメを刺したのだろう。

「赤井さんは思っていた以上に強かった。でもそこに愛情があるというか、温かい強さ、怖さを感じました」と試合後の滝川。赤井は「私はいつまでも新人みたいなイメージで、自分でもフレッシュにと思ってやってるんですけど、こうやって下の子もいる。(滝川は)闘うのは初めてだけど、いつもそばにいる女の子で、愛があるからこそボコボコにしてあげたいって。こういう気持ちになったのは初めてです」と思いを明かした。

フィクションの中にリアルが宿る。タイトル争いではなく、団体の流れにも関係はない、しかし東京女子プロレスを見ている者なら誰もが忘れないであろう好勝負だった。

文・橋本宗洋

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