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 お笑い賞レース界の新たな刺客が選んだのは、M-1グランプリの「漫才」でも、キングオブコントの「コント」でもなく、「下ネタ」だった。

 AbemaTVが実施した「AbemaTVオープン化コンテンツプログラム」に番組作品を応募し、見事にレギュラー化を掴み取ったのは、番組制作会社ジーヤマに務めるディレクターの五島大徳さん(36)を含む5人のクリエイターたち。その喜びを五島さんは「だろ!? そうだろ!? やっぱりみんな好きなんだろ!!」と、鼻息荒く語った。

 そもそも「AbemaTVオープン化コンテンツプログラム」とは、従来の枠組みに囚われない斬新な企画や熱狂を生むコンテンツをオープンに募集し、提供する枠と予算に対して「企画・制作・話題化」まで、全てのプロデュースを担ってもらうことで、ヒットレギュラー番組を生み出していくAbemaTV独自のプロジェクトだ。

 「ドリフやカトちゃんケンちゃん、ダウンタウンのごっつええ感じ、ウッチャンナンチャンのやるならやらねばなどのコント番組ばかりを見て育ちました。必然的にネタ番組を作りたいとこの業界に入ったのですが、実際に飛び込んでみるとセットやら何やらで制作費は嵩むわ、そもそも、『やりたいことがやりにくい(表現しにくい)』世界になってきているんですよね」

 そんな時に五島さんたちに舞い込んだ今回の話。仲間5人で2カ月を費やして議論した結果、たどり着いたテーマが「下ネタ」だったのだという。

 「実は下ネタはただのエロじゃないんですよ(笑)。仕事柄、日常的に芸人さんのライブに足を運んでいるのですが、そこで気づいたこととして、どの芸人さんにも『下ネタ』がある。そして、プロの技によって作り込まれた下ネタは、もはやエロではないんです」

「下ネタは絶対共感領域」 

 番組名はズバリ「シモネタGP2018」。漫才やコントにある垣根を、下ネタという一つのテーマで括ることによって取っ払った、お笑いのジャンルに囚われない新たな賞レースの誕生だ。

 「インターネットテレビでやる以上、普通のお笑いをやっても意味が無いという考えもありました。ジャンルに囚われず、自分たちが面白いと思った芸人さんたちに芸を競ってもらうためには、漫才やコントなど既成の枠を取っ払う必要があったんです。そういった意味でも、「下ネタ」というテーマ設定は絶妙でしたね」

 また五島さんたちには、年齢性別問わず、多少の濃淡はあっても「下ネタは絶対共感領域」というどこか確信めいたものもあった。とはいえ、その実現。とくに参加メンバーの選定には苦労したという。

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2週間毎日、頭の中が「下ネタ」でいっぱい

 コンセプトの決定に思いのほか時間を要したことで、メンバー選定に残された時間はわずか2週間だった。

 「最初は100組の芸人さんをリストアップし、そこから“下ネタ面談”を重ねて36組に絞りました。放送作家やプロデューサー、ディレクターなど15人を総動員して、人海戦術で何とかやり切りましたが、その間、朝8時から夜8時まで、文字通り朝から晩まで下ネタのことで頭の中がいっぱいでした(苦笑)」

 その噂を聞きつけた芸能事務所、芸人から直接の売り込みも多数あった中で選んだ36組の芸人たちと始まった下ネタ真剣勝負。収録の様子を五島さんは次のように振り返る。

 「こっちの本気度を示すことで、芸人さんたちにも“本気の下ネタ”を求めました。お金をかけてしっかりとセットを組み、一切手を抜くことができない舞台を用意しました」

合言葉は「昇天させてやろうぜ!」

 しょーもない下ネタに全力を注ぎ、芸人はもちろん、制作一同が「昇天させてやろうぜ!」という合言葉によって一つになった「シモネタGP2018」は、去る5月に4週連続で放送され、好評のうちに幕を閉じた。今回の経験、そして次回作への野望について、改めて五島さんに総括をお願いすると、五島さんがまず言及したのが、やりたいことが実現できた「インターネットテレビ」という視聴環境についてだった。

 「昨今、地上波ではネットなどで上がる批判や少数意見に耳を傾けすぎて、やりたいことがやりにくくなっている。その点、インターネットテレビでは少数意見を理解しつつ、その他大勢の意見もバランス良く理解しているので許容範囲が広い。何より今では視聴環境の変化によって『家族で観る』ことの方がレアケースだし、スマホなど個々で楽しんでいる場合、つまらなかったり、不快だったりすれば指一本でチャンネルを変えればいい。ある意味シビアですけど、今回、そういった中でやりたいことをやらせてもらった結果、番組制作において『眠っていた思考』が刺激を受け、目を覚ますことができました」

 気になる次回作に関しては?

 「もちろん、下ネタです(笑)。今回は時間の制約上、関東近県の芸人さんに限定しました。次回作では、東海から関西まで範囲を広げるつもりです。コント、ものまね、歌、漫才、落語に手品まで、まさに『ピンク・オールスターズ』ですね」

 そう話す五島さんには密かな野望があるという。それは、インターネットテレビだからこそ実現できる野望でもある。

 「通勤時間帯の満員電車の中で、綺麗な女性がスマホを見て必死に笑いを堪えているんです。それが、シモネタGP。こっそりと、とんでもないものを観ている。仮にそんな状況が実現したら、もう、それがゴールですね。心の中で『だろ!? そうだろ!? やっぱりみんな好きなんだろ!!』と叫んでやりますよ(笑)」

 キングオブコント2013の王者・かもめんたるが制した「シモネタGP2018」。その続編、さらにAbemaTVオープン化コンテンツプログラムの第一弾企画となる「シモネタGP2018シモ半期」は、MCにケンドーコバヤシを迎え、9月17日(月)22時から12回にわたって放送される。第2代の「シモネタ王者」に輝くのは果たして誰か……注目だ。

(C)AbemaTV


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