海外に比べ、遅れていると言われている日本のサイバー防衛。防衛省は2020年にもサイバー防衛の司令部機能を持つ専門組織を発足させ、いわゆる「サイバー防衛隊」も150人に増員する方針だと報じられている。一方、自民党の安全保障調査会は「自衛隊がサイバー攻撃能力を備える必要がある」という、一歩踏み込んだ内容を含む提言書をまとめた。小野寺防衛大臣は衆議院安全保障委員会で「いわゆるサイバー攻撃という手段を我が国が持ち得ることは否定されない」と答弁している。
安倍総理もサイバーセキュリティ戦略本部第2回会合で「オリンピック・パラリンピック東京大会を成功させるためにも、我が国のサイバーセキュリティに万全を期す必要がある」と指摘。８月29日に開かれた、新たな防衛計画の大綱の策定に向けた有識者会議の初会合でも「今やサイバー空間や宇宙空間など新たな領域で優位性を保つことが我が国の防衛に死活的に重要になっている」「もはや陸海空という従来の区分にとらわれた発想では、あらゆる脅威から我が国を守り抜くことができない」と訴えた。
５月３日付の読売新聞によれば、新防衛大綱にはサイバー反撃能力の保有が明記される方向だという。これは国家の意思に基づく組織的・計画的な武力行使と認められるサイバー攻撃への反撃は専守防衛の原則に矛盾しないという考え方に基づくものだが、第三者のサーバーなどを経由する可能性が高く、国家によるものかを認定することの困難さも予想されるため、反撃は通常兵器による攻撃も受けた場合に限定される模様だ。
１日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ！』に出演した安全保障アナリストの部谷直亮氏は「先日、サイバーセキュリティの定義はされたが、政府・防衛省のサイバー攻撃の定義があやふやで、誰の責任で対応するのかも決まっていない状態だった。今回、日本に対する攻撃の場合には防衛省が頑張る、という意思表示がされた。ただ、今の日本がサイバー攻撃について国際社会が認めるような証拠を出す能力があるかというと、それはちょっとあやしい」との見方を示した。
国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、日本のサイバー防衛体制について「他国に比べるとかなり劣ると思う」と指摘。「中国は10万人、アメリカは"サイバー軍"を作ったが、それだけで6000人を超えている。北朝鮮ですらハッカーが6000人を超えている」と指摘。ジャーナリストの福島香織氏は「中国での養成は2001年ごろからが始まったが、軍だけで10万人も養成できるのか不思議に思っている。10万人の中にはすごく腕がいいハッカーをスカウトしたり、個人が"愛国ハッカー""サイバー民兵"として攻撃に参加したり、という部分もあるのではないか」と推測した。
部谷氏も「自衛隊内でのサイバー部隊の評価もまだまだ低い。"行きたい"という人に対して、"君はエリートコースなんだからそんなことをしたらダメだ"と言われて自衛隊を辞めた人もいるという。アメリカでは政府機関や銀行、大手企業がハッキング大会をやって、若者を表彰している。一昨年に行われた国防総省の大会では人工知能同士でサイバーの攻撃と防御をやらせていた。これからは人工知能が、攻撃も防御も追跡もする」とし、日本政府への提案として「サイバー対策の専門部署は総務省に」「情報操作に踊らされない意識改革」「武力行使ではない"新しい戦争"への理解」を訴えていた。（AbemaTV／『みのもんたのよるバズ！』より）
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