先月28日、厚生労働省が国の障害者雇用の水増しの実態を公表した。障害者雇用促進法では、行政機関に対して障害者を2.3%以上雇うように義務付けているが、実際の雇用率は1.19%に過ぎなかったことがわかった。これまで約6900人の障害者を雇用しているとしてきたが、実態はその半数以上の3460人が"水増し"されていたのだ。不正は27省庁で行われ、最も多かったのは国税庁の1022人で、続いて国交省の603人、法務省の539人となっている。
また、衆議院と参議院の事務局、そして朝日新聞によると全国の裁判所でも不適切な算入が確認されており、行政、立法、司法の三権で水増しが行われていたことになる。さらに地方自治体や教育委員会など約2600カ所で約5万人の障害者が雇用されているはずだったが、共同通信によると少なくとも37府県で不適切な算入が行われていたという。
自身も脳性まひの子どもを抱える慶應義塾大学の中島隆信教授は、「嘘をついたのが一番良くなかった。役所は人的なリソースも減らされ、仕事をどんどんアウトソーシングしていっていはいるが、結局、真剣味や危機意識があまりなかったのだろう。"できない。どうしたらいいのか"と素直に頭を下げて聞けば良かった」と指摘する。
「元々障害者の雇用義務が発生した時は身体障害者が対象で、設備をある程度整えれば受け入れはそれほど大変ではなかった。しかし知的障害者の場合は適した仕事を探さないといけないし、特に今年から義務化された精神障害者となると、好不調の波があったり、長時間働けなかったり、過去の失敗体験を抱えていたりする。民間企業でもかなり工夫し、苦労している中、役所に"雇え、雇え"と言うだけでは、なかなか難しい。労働時間が長く働き方も変則的で、人事が硬直的なところにどうやって入れていくかという知恵もセットで出していかないといけない」。
精神科医の木村好珠氏は「日によって調子の良いときもあれば悪かったり、休みがちだったりする方もいらっしゃるので、職場環境が非常に大事。国にはそういう方たちにどう働いてもらうかの指針を示し、見本になってもらわないといけないと思う」とコメントした。
政府は関係閣僚会議を開催し、法定雇用率を達成する計画を10月中にまとめる方針を決めた。菅義偉官房長官は「各大臣におかれては、今回の事態を深く反省し、障害者の雇用の確保や安定を図る責務を有していることの認識を改めて徹底していただくようお願いする」と述べた。しかし、麻生太郎財務大臣は「一斉にこういったものが出ると障害者の人の数も限られているから、この数を取り合うみたいな形になると、また別の意味で障害、弊害が起きる」とコメントしている。
日本維新の会の足立康史衆議院議員は「難しい状況にあるんだったら言えよと。ところが建前、綺麗事で動いているので、誰も本当の事を言わない。当事者意識を持った官僚も少ないと思う。制度を作るのが僕ら国会議員の責任だが、国会でも本当のことを議論していない」と指摘した上で、「政府は10月中に対策をまとめると言っているが、アホじゃないかと。厚生労働省に他省庁の調査をする権限が付与されていない。そもそも雇用することがノーマライゼーションだと、正規雇用が一番良いんだという考えで進んで来たが、就労継続支援A型という制度では、補助金をもらうために雇うだけ雇って障害者は働いていないという弊害も生まれている。これを機に議論をして、根本的な対策も取っていなかいといけないのに、どうやってやるんだ」と話した。
■みのもんた「情けない」
中島氏は今後の議論について「メディアの報道を見ていて、納付金についての誤解があるように感じた。これは基本的には罰金ではなく、雇用率を満たしていないところから集め、基準を超えているところに配っている。逆に言えば、全ての企業が雇用率を達成してしまうと補助金が出せなくなってしまう仕組みだ。しかも達成できないのは中小企業が多いので、中小企業から集めたお金を大企業に回すというおかしな仕組みになっている。制度自体を見直さないといけないと思っている。手帳を持っている・持っていないに関係なく、職場で不当な差別をしてはならないと謳っている障害者差別解消法でカバーできる部分もある。その一方で、法定雇用率で縛られているが、その元になっている統計をちゃんと取ってほしい。予算を付けさえすれば障害者にとって幸せな職場ができるわけではない。ここはぜひ議論をしてほしい」と訴える。
足立議員は「いわゆる作業所の中には、ホームページを作るなど、多種多様なものがある。企業が障害者を雇うだけではなくて、そういうところに発注することにも意味があるので、そこも含んだ制度を作っていかないといけない。数字だけでバサッとやると、また嘘をつくヤツが出てくる」と指摘した。
自らも企業を経営している司会のみのもんたは「大企業は余裕もあるし、ノウハウもある。しかしうちのような中小零細は経営に手一杯でなかなか難しい。以前は僕たちも、"罰金を取られる"という感覚でいた。でも県の担当者に"テレビでご活躍してくれるみのさんだから"と言われ、頑張ろうと思った。やっぱり最初は戸惑った。3時間に1回くらい大きな声を出す方がいて、同じ部屋で仕事してる人は驚いていた。でも、どうしたら慣れるか話し合って、他の人もたまに大きな伸びをして、声を出すことから始めてみた。身体がこわばってしまう人がいたら、10分休憩しようとか、背中撫でてようとか。そういうことを繰り返しているうちに、意志の疎通が難しいで人も目を見てくれるようになるし、職場の環境は本当に変わる。働いている人も誇りを持てる。本来はそういうことが目的だったと思う。それが役所がこういうことやっていたとはね。情けない」と怒りを露わにし、「国会議員だって、オリンピックとパラリンピックのユニフォームの違いも答えられない。ある時、パラリンピックの選手のユニフォームがバラバラだった。話を聞いたら、"私達は買わないといけないから"と言われた。怒った。そういう意識がまだまだ足りない」と政治家たちにも苦言を呈していた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)