■森本敏・元防衛大臣が説明する"横田配備のメリット"
政府は先月、在日米軍がオスプレイを横田基地に正式配備すると発表した。まず5機を先行配備し、2024年までには10機・450人態勢とする計画だ。
背景にあるのは、中国の脅威を念頭にトランプ大統領が打ち出したアジア太平洋を重視する戦略があるとみられており、菅官房長官は4月、「日本の防衛及びアジア太平洋地域の安定に資すると考えている」とコメントしていた。
8日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元防衛大臣の森本敏氏は、横田基地にオスプレイを配備する狙いや、これを運用する部隊について次のように説明する。
「米軍には中央軍、インド太平洋軍、欧州軍、北方軍、南方軍など地域を担当する地域別の部隊"地域コマンド"と、戦略軍・空輸軍や、今後作られる宇宙軍とかサイバー軍など、軍隊として特殊な性格を持つ部隊がある。今回、横田基地に配備されるのは、米空軍の第353特殊作戦群という、内陸に入って人質を奪還してくるとか、災害時に人命救助を行う特別な部隊の一部で、作戦時に必要な輸送を行うものだ。すでに沖縄の嘉手納基地には2つの飛行部隊があり、中東や湾岸まで飛べるEC-130という輸送機を運用している。そして横田基地にオスプレイを持ってくるのは必ずしも沖縄の拒否があったからではない。日本には嘉手納・横田の他に三沢空軍基地があるが、ここでは北寄り過ぎる。一報、横田には在日米軍司令部と第5空軍司令部があって要人を運ぶこともできるし、沖縄や東シナ海などの南西方面、そして朝鮮半島に行くのに便利だ。日本での災害派遣にも使える」。
■元宜野湾市長の伊波参院議員「初日から約束は破られた」
2016年2月には沖縄県名護市沿岸でオスプレイが大破し2人が負傷。また、去年8月にはオーストラリア沖での墜落で3人が死亡するなど、重大事故は5年間で10件、死亡事故は8年間で4件発生し、"未亡人製造機"と揶揄する声もある。もし日本で墜落事故が起きれば、2004年8月に起きた沖縄国際大学でのヘリ墜落事故のように、日米地位協定を盾に米軍が現場を封鎖し、日本側が立ち入り調査を行えない、といった事態を懸念する声もある。また、横田基地の半径10km以内には200以上の学校や大学が点在。約38km離れた六本木にある米軍のヘリポートまで、都心の上空を飛行するのではないかとの見方もある。
森本氏はオスプレイが普天間基地に初配備された際の防衛大臣でもある。今も根強い安全性への懸念について「様々な異論のある『事故率』というのは、飛行時間10万時間に対し、Aランクの事故(=1件の損害額が200万ドル以上及び死者が出た場合)の発生件数で計算する。普天間基地にある海兵隊仕様のMV-22に対し、今回配備される空軍仕様のCV-22はまだ4万2000時間程度の飛行時間しかないので、他の機種やヘリと事故率の比較はできない。ただ、沖縄にオスプレイを持ってくる時に、日本政府は独自で安全性の分析・評価をした上で受け入れた。アメリカで訓練場実施した、空中でエンジンを止めて降りてくる"オートローテーション"についても、我が方から人を派遣して何度も確かめ、日本政府としては確認していると考えている」と説明、飛行制限についても「私が防衛大臣だった2012年9月、岩国に上陸したオスプレイを沖縄に持ってきた。沖縄の要望もあり、最初に運用する時には安全を維持するため、学校の上を飛ばないとか、約150m以下の高度では飛ばないといった飛行制限を含む日米合意を作った。横田に持ってくるのに際しても、基本的にはこの合意を遵守するということを日米合同委員会で合意した。東京上空で訓練することもない」と話す。
しかし、オスプレイ24機が配備される普天間基地を抱える宜野湾市の元市長で、参議院会派「沖縄の風」幹事長の伊波洋一参議院議員は異論を唱える。夜10時以降の飛行は禁止されているが、沖縄では頻繁に繰り返されている。また住宅街の上空を飛ぶ際、不安定な変形飛行もなし崩しにされてきた実態があるからだ。
「当時は民主党政権だったが、合意したことが配備のその日に破られ、今日まで守られていない。夜11時を過ぎても飛んでいる。飛ばないという約束だった日曜日にも当たり前のように飛んでいる。横田でも同様のことが起こるのではないか。アメリカでは砂漠に落ちるが、日本では住宅地に落ちる可能性がある。日本政府は"日米が合意した"と発表しているが、本当に合意したのかどうかは分からない。日米合同委員会の正確な内容はほとんど外に出てこないし、出てくる文書には大抵"運用上はその限りではない"と書かれているからだ」。
■日米安保を日本人全員が考える機会に
福生市や瑞穂町など54市1町自治体にまたがる横田基地。オスプレイ配備を受け入れについて、東京都はどう考えているのだろうか。自民党の川松真一朗都議は「最近になって騒がれるようになり、周辺住民の皆さんは騒音の問題などの不安ばかりを煽られている。しかし、突然配備が決まったわけではなく、横田にオスプレイが来ることは、2016年の東京都知事選の時にも議論されていた。横田基地のあり方の議論も抜けているようだし、今なぜオスプレイが必要なのかという話を多くの人たちに理解していただき、生活をどう守っていくのかという全体像で考えていかないといけない」と話す。
「国の専管事項ではあるが、そもそも新潟から相模湾、あるいは伊豆半島までの広い範囲の空域がアメリカの航空管制で、日本の民間機が避けて飛ばなければならない『横田空域』の問題もある。特に石原都知事がこの問題を前に進めようとしていたが、それ以降は止まっているのが現状だ。都内に7つの米軍施設があり、軍民共用化の話も含めてアメリカの国防総省やシンクタンクのメンバーと議論している。陸上自衛隊のオスプレイの佐賀空港配備と、横田の話が一緒になって議論されている部分もある。災害が発生した場合、横田基地のオスプレイが自衛隊との連携で我々を助けてくれるケースもある。そういうことを考えれば、正しい情報をキャッチして、正しい理解を多くの人に広げていけるような環境が整えばいいと思う」とコメントした。
元財務官僚の山口真由氏は「ある意味、米軍の負の部分を沖縄に押し付けて日本は復興してきた。戦後すぐには本土にも米軍基地はたくさんあり、民間人が射殺されるなどの事件も起きたことから、基地反対運動は日本全国で行われていた。今回のオスプレイ配備で、改めて日米安保の矛盾が突きつけられることになるだろうし、そのことを私たち日本人全員が考える機会になるのではないか」と指摘した。
来月1日、オスプレイは東京都内に正式配備される。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)