9月19日に戦いの火蓋が切って落とされるUEFAチャンピオンズリーグ。1955年にフランス誌『レキップ』のガブリエル・アノ氏の提案で始まってから今シーズンで64回目を迎えた同大会は、1992-93シーズンに『ヨーロピアン・チャンピオン・クラブズ・カップ』から現行の名称となった。
ヨーロッパ最強は俺たちだ――。
まさにクラブのプライドを懸けた戦いだけに、多くの選手が今大会に相当な思いを持って挑んでいる。と同時にこの大会は、己の存在価値を誇示するための個人の戦いの舞台でもある。そう、得点王争いだ。
フットボールの花形はFWであり、彼らの出来がクラブの勝敗に直結する。だからこそ「得点王」は誰の目にも明らかな結果であり、それは特別なものとして、クラブの成績とは関係なく評価される。「大会でもっとも多くのゴールを決めた者」だけが、「ゴールデンブーツ」と呼ばれる栄誉ある賞を手にできるのだ。
今シーズンは、誰がゴールデンブーツを獲得するのか?
過去11年は、2人のスターが君臨してきた
意外にも、いや、フットボールファンはもはや驚きすら覚えないのかもしれないが、過去11シーズンの間にCLの得点王となったのはわずか3人しかいない。しかも、ほぼ2人が独占している。
クリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス)とリオネル・メッシ(バルセロナ)だ。
2007-08:(8得点)C・ロナウド ※優勝(マンチェスター・ユナイテッド)
2008-09:(9得点)メッシ ※優勝(バルセロナ)
2009-10:(8得点)メッシ
2010-11:(12得点)メッシ ※優勝(バルセロナ)
2011-12:(14得点)メッシ
2012-13:(12得点)C・ロナウド
2013-14:(17得点)C・ロナウド ※優勝(レアル・マドリード)
2014-15:(10得点)C・ロナウド、ネイマール、メッシ ※優勝(バルセロナ)
2015-16:(16得点)C・ロナウド ※優勝(レアル・マドリード)
2016-17:(12得点)C・ロナウド ※優勝(レアル・マドリード)
2017-18:(15得点)C・ロナウド ※優勝(レアル・マドリード)
C・ロナウドが6年連続を含む7回で、メッシが4年連続を含む5回。2人以外が獲得したのは、2014-15シーズンにトップタイとなった当時バルセロナでプレーしていたネイマールだけだ。
しかもC・ロナウドは7回中5回、メッシは5回中3回が所属クラブの優勝時に手にしている。本大会から出場する場合、32チームが4チームずつ8グループに分かれて2回戦総当たりのグループステージを戦い、ラウンド16、準々決勝、準決勝までは各2試合ずつ、決勝は1試合であるため、最大で13試合を戦う。つまり、1試合でも多くの試合をこなした選手が有利なだけに、優勝クラブから受賞者が出ることは必然なのだが、得点王のゴール数からもわかる通り、コンスタントに得点を積み重ねなければ達成できないものだろう。
C・ロナウドとメッシは11年間、まさに自らのゴールでチームを勝利に導いてきたのだ。
だからこそ今シーズンも2人が得点王の最右翼であり、とりわけ「C・ロナウドが前人未到の7年連続得点王を獲得できるのか」が話題を集めているが、今年の争いはそんな単純な構図にならないかもしれない。
下記の得点王候補者リストを見てもらいたい。
クリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス/セリエA)
モハメド・サラー(リヴァプール/プレミア)
ロベルト・フィルミーノ(リヴァプール/プレミア)
エディン・ジェコ(ローマ/セリエA)
ハリー・ケイン(トッテナム・ホットスパー/プレミア)
エディンソン・カバーニ(パリ・サンジェルマン/リーグ・アン)
ネイマール(パリ・サンジェルマン/リーグ・アン)
リオネル・メッシ(バルセロナ/リーガ)
ロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン/ブンデスリーガ)
ロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド/プレミア)
カリム・ベンゼマ(レアル・マドリード/リーガ)
マリオ・マンジュキッチ(ユヴェントス/セリエA)
セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ/プレミア)
ガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ/プレミア)
キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン/リーグ・アン)
ガレス・ベイル(レアル・マドリード/リーガ)
アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード/リーガ)
3連覇中のレアル・マドリードの4連覇に目がいきがちだが、その立役者であるジネディーヌ・ジダン監督は退任して、C・ロナウドもユヴェントスへ移籍したため、群雄割拠の様相が増したといえる。
昨シーズンのプレミアリーグで32得点の新記録を樹立したモハメド・サラーや、前年度の得点王・ハリー・ケインといった25歳前後の伸び盛りのアタッカー、ブンデスリーガの得点王・ロベルト・レヴァンドフスキや、リーグ・アンの得点王・エディンソン・カバーニなど30歳を超えて脂が乗った点取り屋がそろう。
さらに、W杯で存在感を示したブラジル代表のガブリエル・ジェズスやフランス代表のキリアン・ムバッペなど、20歳そこそこの超新星も虎視眈々とその座を狙っている。彼らがゴールを量産しながらクラブを頂点へと導いていくストーリーは、まさに欧州フットボールの未来予想図だろう。
クラブの威信を懸けた争いとともに、ゴールデンブーツの行方にも注目しながら、いよいよスタートする今シーズンの“欧州王者を決める戦い”をぜひ楽しんでもらいたい。
文・本田好伸(SAL編集部)
写真・ロイター/アフロ
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