日本時間の9月19日、欧州クラブの意地とプライドを懸けた2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグが開幕を迎える。ディフェンディングチャンピオンはレアル・マドリード。名称が“チャンピオンズリーグ”となって以降、初の3連覇を達成するなど無類の強さを見せている。
しかしその王者も今シーズンはエースのポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドが退団。さらにジネディーヌ・ジダンも指揮官を退任するなど、大きな転換期に。それだけに、多くのチームに“ビッグイヤー”を掲げるチャンスがある。
レアル・マドリードが4連覇を達成するのか――。それとも欧州の強豪たちが阻止するのか――。注目の今大会を展望していく。
ポジショナルサッカーの集大成! シティが一歩リード
今シーズンのUEFAチャンピオンズリーグを語る上で、1つ重要なファクターは“ワールドカップ”だ。
夢の舞台に参加した選手たちの疲労度は計り知れず、さらにクラブチームにとっては、新シーズンに向けた戦い方を定めるプレシーズンマッチに主力選手が不在で臨まなければならなかった。つまり、今シーズンのチャンピオンズリーグは、そういった選手たちをうまく起用する指揮官の手腕がものをいうことになるだろう。そこで本稿は、各クラブの指揮官にフォーカスして展望していく。
大会4連覇に期待がかかるレアル・マドリードは、上記にもあるようにエースと指揮官を失った。新指揮官のフレン・ロペテギ監督にとっては、就任1年目から難しいシーズンを過ごすことになるがネガティブな要素ばかりではない。
ロペテギ監督は、2013年に行われたU-21欧州選手権でスペイン代表を率いて王者に輝いている。その時のメンバーに選出されていたDFダニエル・カルバハルやMFイスコは主力として優勝に大きく貢献した。さらにロペテギ監督は、ロシア・ワールドカップでスペイン代表を指揮してFWマルコ・アセンシオを招集するなど、現在のレアル・マドリードには自身の教え子が複数いる。
中でもアセンシオは、退団したクリスティアーノ・ロナウドに代わる選手として、リーガエスパニョーラの開幕から3試合続けて左WGとしてプレーしている。3連覇中に3度の得点王に輝いたクリスティアーノ・ロナウドの穴をアセンシオが埋めることができれば、ロペテギ・マドリードの4連覇も見えてくるだろう。
レアル・マドリードと同様に、優勝候補に挙げられるバイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマンも新指揮官が就任した。
バイエルンの指揮官に就任したのは、守備のプライオリティが高いニコ・コヴァチ監督。バイエルンの指揮官として相応しいかとの議論がされているが、確かに横綱相撲で勝ちきることが可能なブンデスリーガでは、コヴァチ監督の戦い方では物足りなさを感じるかもしれない。それでも実力が均衡しているチャンピオンズリーグを勝ちきるなら、フランクフルトで見せたソリッドな戦いが必要となる。ブンデスリーガである程度の“トレーニング”ができる点も大きな利点となるだろう。
一方のパリ・サンジェルマンはトーマス・トゥヘル監督が就任した。ウナイ・エメリ前監督と同様に、屈指の戦術家として知られるトゥヘル監督。前任者が達成できなかったベスト4の壁を突破することが最低目標だ。FWエディンソン・カバーニ、FWネイマール、そしてロシア・ワールドカップで大活躍したFWキリアン・ムバッペら魅惑の3トップをどう生かすかに注目が集まる。
そのほかに、優勝候補としては当然バルセロナも忘れてはいけない。しかし今シーズンは例年以上に難しい立ち位置となるだろう。2年目を迎えるエルネスト・バルベルデ監督にとって重要なミッションは、加速する“メッシ依存”からの脱却だ。
昨シーズン限りでクラブの象徴であるMFアンドレス・イニエスタが退団。FWリオネル・メッシとともに“バルセロナのサッカー”を体現してきた。そのイニエスタの退団したことにより、バルセロナは今まで以上に“メッシ依存”が深刻となる。もはや、攻撃を司るのはメッシだけといっても過言ではない。そのため、メッシに変わるゲームメーカーの存在が不可欠だ。
現在はイニエスタが務めたインサイドハーフにMFイヴァン・ラキティッチとMFセルジ・ロベルトを配しているが、正統な後継者は新加入で“8番”を背負うMFアルトゥールとなるだろう。期待値の高い選手であることに間違いないが、独特なバルセロナのサッカーにフィットするまでには時間がかかる。ただ、アルトゥールがフィットしてチームの中心に成長できれば4年ぶりの優勝も見えてくる。
また、今大会を語る上でユヴェントスは欠かせないだろう。1995-96シーズン以来、優勝から遠ざかっているビアンコネリ(=ユヴェントスの愛称)にとって、同大会を5度制覇し、得点王に7回輝くなど“チャンピオンズリーグに愛された男”クリスティアーノ・ロナウドの加入は心強いことだ。
また指揮官のマッシミリアーノ・アッレグリ監督は過去4シーズンで少しずつチームをアップデートして強化してきた。そこにクリスティアーノ・ロナウドが加入したことでどのような化学反応が起きるかに注目だ。
そして最後は、集大成となる3シーズンを迎えたペップ・シティ。バルセロナではFWの選手を下げて中盤で数的優位を作る“0トップ”戦術、バイエルンではサイドバックを中央にずらして中盤で数的優位を作る“偽サイドバック”戦術など、革新的なスタイルでポジショナルサッカーを体現してきた。
マンチェスター・シティでも同様に“偽サイドバック”戦術を用いる中、昨シーズンはUEFAチャンピオンズリーグでベスト16に終わるも、プレミアリーグでは勝ち点100を奪う圧倒的強さを見せた。
また、新加入はレスター・シティからMFリヤド・マフレズを獲得したのみに留めるなど、これまでの戦い方の継続路線となる。それだけに集大成となる3年目は、こだわりを見せるポジショナルサッカーで欧州制覇が至上命令だ。
全世界が注目を集めるチャンピオンズリーグは、日本時間19日の午前1時55分から始まる。今大会はどんなドラマが待っているのだろうか――。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
写真・ロイター/アフロ
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