9月20日、テアトル新宿にて映画『止められるか、俺たちを』の舞台挨拶が行われ、門脇麦、井浦新、白石和彌監督が登壇。白石監督が師匠・若松孝二監督から受けた影響、そして同日３選を果たした安倍晋三政権について語った。
『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』と昨今の日本映画界に “刃を突きつけるような”作品を撮り続ける白石監督が本作で描いたのは、1969年の若松プロダクションを舞台に命懸けで映画を作っていた若者たちの熱い青春。2012年10月17日の若松孝二監督逝去から6年。白石監督自ら企画した本作は、記念すべき若松プロダクション映画製作再始動第一弾となる。1969年に若松プロの門をたたいた助監督・吉積めぐみ（門脇麦）の目を通して、若松孝二（井浦新）とともに“ここではないどこか”を探し続けた映画人たちの姿が描かれている。
白石監督は同作について「僕にとってだけではなく、この映画に関わったスタッフはほぼほぼ若松監督にお世話になったものばかりで、禁断の企画ではあったんですけど、吉積めぐみさんという僕にとっては遥か彼方の大先輩の存在に気づいて、彼女の足跡を知ったときにいてもたってもいられず。これほどの衝動を持ってとった映画はないんじゃないかなというくらい、やらないとどうしようもなく、自分の気持ちの向けるところが見つからなく始めた作品です。出てくれた方をはじめ、実在する人を演じるのは大変だったと思うんですけど、その分いろんな人の思いがこの映画に詰まっています」とコメント。
禁断の企画をそれでもやらなければと思った理由については「僕自身が若松さんの映画作りの原点を見てみたかったし、体験してみたかった。今の日本映画界は……もちろんエッジの効いた面白い作品もたくさん出ていますが、当時『大手のメジャーがやっていることとは違うんだ！俺たちは！』と、若松監督がやっていた気概を自分の中に入れたかった」と語った。
劇中では、若松監督が大島渚に自身の映画作りについて「俺は世の中に刃を突きつけたいんだ」と熱く語るシーンも。それにかけてMCを務めた同作の脚本家・井上淳一氏より自分が刃を突きつけたいものは何か」という質問がされると、白石監督は同日行われた自民党総裁選挙にて安倍晋三首相が連続３選を果たしたことについて言及。
「多分若松さんも同じことを言うのかなと思うのですけど、今日、日本の政権は据え置きになることが決まり。とてもいい政権だとは、個人的には思えない中で、それを壊せない民衆、大衆、世の中に対して刃を突きつけたいと思います。でも、『じゃあお前はその大衆に対してそういったメッセージを送れているのか』という、自分に向けての刃もちゃんと向けて、自分の中にも刃を持ちたい。僕は映画を作ることが仕事なので、（そういう思いを持って）映画を作っていかないとなと思っています」（白石監督）
この回答を受け、井上氏から「デビュー作のインタビューでは『若松さんかが“映画を武器に世界と戦う”と言っていて、僕もそうしたい』って言っていましたが」とツッコまれると、「その思いは今も変わっておりませんよ」と白石監督。客席からは大きな拍手が贈られた。
写真：石井隼人
テキスト：堤茜子
