
(9.17FREEDOMS後楽園。大流血戦の末に正岡に勝った葛西は竹田への再度の挑戦をアピール)
かつて伊東竜二との死闘でプロレス大賞の年間ベストバウトを受賞した“デスマッチのカリスマ”葛西。デスマッチ、ハードコアでの狂気に満ちた試合ぶりに加えマイクアピールのうまさ、コミカルな味も含めて圧倒的な存在感を誇る。
デビューは1998年8月。今年は20周年となり、その記念試合では竹田誠志と対戦した(8月28日、後楽園ホール)。ここで勝ったのは大日本プロレス(デスマッチヘビー級)および葛西も所属するプロレスリングFREEDOMS(KING of FREEDOM WORLD CHAMPIONSHIP)の“デスマッチ2冠”を保持する竹田。この葛西戦は後者の2度目の防衛戦であり、竹田は葛西を相手にベルトを守ったことで“デスマッチキング”の座をさらに揺るがぬものにした。

(リングを降りると、待ち構えていた竹田と睨み合う)
今やデスマッチファイターとして、竹田は独走状態。だが葛西も、キャリア21年目をおとなしく過ごすつもりはない。
9月からはDDTにスケジュールが許す限りレギュラー参戦。DDT総選挙にも立候補している。DDTの若い選手たちとの対戦は新鮮で、お互いにとって刺激になるはずだ。
9月23日の後楽園大会では、サブゥー、菊タローと組んで竹下幸之介&彰人&勝俣瞬馬と対戦する。元KO-D無差別級王者で、同王座の最多防衛記録を持つ竹下と葛西の遭遇を含め、豪華で異色、頭脳も肉体もフル稼働となるであろう一戦だ。
また古巣・大日本への久々の参戦も決定。11月11日の両国国技館大会という大舞台で“黒天使”沼澤邪鬼とのタッグ「045邪猿気違's」を復活させる。しかも相手は同時代を生き、ベテランの域に達するようになった伊東竜二とアブドーラ・小林だ。当然、デスマッチでの対戦である。
ホームリングのFREEDOMSでは、9月17日の後楽園ホール・旗揚げ9周年記念大会のメインで正岡大介に勝利。まったく衰えを知らぬ壮絶なデスマッチで、フィニッシュの前には自らの頭に小型ノコギリを突き立ててみせた。こうして覚悟と狂気を見せつけることで、葛西は“カリスマ”と呼ばれるようになったのだ。
試合後には、血まみれのままマイクを握り「誰もアクションを起こさないなら俺っちがいく」と竹田への再挑戦を要求。自身のプロデュース興行、恒例の「Blood X'mas」(12月25日、後楽園ホール)でKING of FREEDOM WORLD CHAMPIONSHIP奪還を狙う。
リングから引き上げる際に竹田と睨み合った葛西は、取材陣に囲まれるとFREEDOMS所属の他のレスラーに対しても挑発。
「名乗りあげてきたの正岡だけじゃねえか。何が9周年だ。まだ葛西純頼みなのか? このままじゃ終わっちまうぞ、この団体。とにかく俺に刺激をくれ!」
刺激を求めているというのは、大日本参戦にあたっても口にしていた言葉。キャリア20年、44歳のベテランがさらに加速するためにどうしても必要なものなのだろう。と同時に、現時点での実力、コンディションにも絶対の自信がある。大日本・両国大会で闘う小林&伊東には「がっちりコンディション作って、突き出た腹をへこませてこい! じゃないと格の差をまざまざと見せつけることになる」とメッセージを送った。

(FREEDOMSのリングではZERO1との対抗戦もスタート。9.17後楽園では佐々木貴、平田智也、マンモス佐々木(右から)が大谷晋二郎&高岩竜一&北村彰基に勝利。平田が北村を逆エビ固めで下しており、この対抗戦は若手の意地の張り合いが焦点になってくる)
DDT、大日本、そして竹田戦へ。“デスマッチキング”をストップできるのは、やはり“デスマッチのカリスマ”か。これまでも文字通り命がけの闘いを繰り広げてきた両者だけに(まだ正式にアナウンスされたわけではないが)クリスマス決戦には「いったいどこまで壮絶な試合になってしまうのか」という期待と恐怖が付きまとう。
8月に続いてのキングvsカリスマ、デスマッチ頂上決戦。勝負の鍵になりそうなのは、葛西が求めている「刺激」だ。9月以降、DDTや大日本で刺激を受け、与えることで、葛西がクリスマスまでに新たなパワーを身につけている可能性も充分にある。
文・橋本宗洋
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