日本フットサル界のキング・森岡薫。昨シーズンからペスカドーラ町田のキャプテンとしてピッチに立ってきたが、今シーズン途中にそのキャプテンマークをダニエル・サカイに譲った。シーズン途中の異例の出来事だが、そこにはどんな思いがあるのだろうか――。

自分を取り戻すためのキャプテン交代

 リーグ優勝9回、MVPを4回、得点王を4回――。これらの輝かしい功績こそ、森岡薫が“キングオブFリーグ”と呼ばれる所以。まさに日本フットサル界の王様と呼べる存在だ。しかし、2年前に名古屋オーシャンズを退団し、ペスカドーラ町田に加入して以降はクラブレベルでのタイトルはもちろん、MVPや得点王を獲れていない。

 森岡は昨シーズンから町田のキャプテンとしてピッチに立つ。「町田を優勝させる」との強い気持ちを持って、ピッチ内外にこだわることなくチームを引っ張ってきた。そのため、「本来の自分のプレー」を殺してまで、チームに徹する場面が増えてきた。

 しかしそれは、爆発的な得点力を誇ってきた森岡のストライカーとしての能力を知っている人たちからすると物足りなさを感じる。「森岡薫はもう終わってしまったのか?」とのネガティブな考えも出てくる。

 そんな中、9月2日(日)に行われた第11節のアグレミーナ浜松戦。キャプテンマークを巻いてピッチに立ったのは森岡ではなく、ダニエル・サカイだった。キャプテン交代について岡山孝介監督は「森岡から、最近は思い通りのプレーができていなくて、(キャプテンを)代われるのであれば代わって、プレーでチームに貢献したいと申し出があった」ことを明かした。

 シーズン途中にキャプテンが交代する異例の事態だが、ここまでは間違いなく好影響だと言える。浜松戦以降、森岡は本来のピヴォの位置でプレーすることが多くなった。さらに、相手を背負い鋭い反転で強烈なシュートを放ち、サイドでも力強い突破を見せるなど“本来の森岡薫”が戻りつつある。14日(金)に行われた第14節のフウガドールすみだ戦でも、ゴールこそなかったがチーム最多となる8本ものシュートを放つなどプレーでチームを引っ張った。

 試合後、森岡にキャプテンの交代について聞くと「大したことではない」という。ただ、岡山監督のコメントと同様に「周りを見すぎて、自分の思い通りにプレーできていませんでした。練習でも試合でも周りが気になっていた」と、キャプテンでいることの難しさを明かした。

 その中で「このままでは(自分のプレーが出せない状況に)落ち着いてしまう」と感じ、「周りに合わせるだけは嫌で、本来のプレーをしたい」との思いからキャプテンの交代を申し出たようだ。

「キャプテンじゃなくなって(自分のプレーが)何も変わっていないと思われるのは嫌で、去年1年間出せていなかったプレーを今年は出せるようにしたい。体は反応してくれているので(名古屋の頃のようなパフォーマンスに)戻すのではなく、より良くする。今までは周りが6(割)で自分が4(割)くらいでプレーしていたけど、これからは自分が7(割)に持っていく」

 また、この日は森岡にとってリーグ戦通算300試合出場達成となるメモリアルマッチだった。これまでの300試合を振り返る中で「年齢を考えても、300試合を達成できたことは、関わってくれているいろいろな人たちの支えがあるから」と感謝する。

 そんな森岡に次の300試合への意気込みを聞くと、「いけるんじゃない。気持ち的にはまだまだやれるから」といたずらっぽい笑顔で返してくれた。39歳になってもなおさらなる成長を求める。それは、2年も離れている王座に返り咲くため。

「名古屋との差は遠い話になったけど、最後に倒せればいいね」

 もう1度、頂点へ――。森岡薫、復活の時は近い。

文・川嶋正隆(SAL編集部)

(C)AbemaTV

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