
27日に放送されたAbemaTV『橋下徹の即リプ!』内で、アメリカのトランプ大統領が取ってきた経済政策の功罪について、橋下氏がゲストの竹中平蔵氏と議論した。
竹中氏は日米首脳会談も踏まえ、「トランプさんがやっていることは、かなり無茶苦茶。多国間でやるんではなく、自国第一、アメリカ・ファーストで関税をかけて保護主義をやっている」とした上で、国内向けの経済政策については「短期的にはよく考えている」と評価しつつ、次のように問題提起した。

「今年1月にはものすごい規模の所得税減税を、2月には史上最大規模の法人税減税をやった。結果としてアメリカの景気が良いから、世界の景気も日本の景気もそこそこ良い状態が続いている。11月には中間選挙があるので、それまではポーズとしてよくやっているという姿勢を示すだろう。ただ、ここまで大幅な減税をやれば、財政赤字が膨らんで、その弊害がじわじわ出てくる。財政赤字を膨らませ、中央銀行が金利を上げる。これは硬い言葉で言えば、レーガンさんがレーガノミックスでやった事と同じ、"財政拡大と金融引き締め"。その結果、アメリカは"双子の赤字"になり、1985年にはプラザ合意をしなければならなくなった。今後も、どこかでそういうことが必要になるのではないか。1年先なのか2年先なのか意見は分かれるところだが、日本もかなり注意しなければならなくなる」。
橋下氏も「トランプさんは無茶苦茶なことをやっているかもしれないが、政治家の役割というのは大きな方針を決めたり、今まで動かなかったことを動かしたりすること。細かなところは有識者たちの知恵を借りて詰めていけばいいと思う。景気が停滞する貿易戦争を仕掛ける前にドカンと減税などをやって景気を温めておいて、というのをワンセットでやっているのは、よく考えたと思う」としたうえで、次のような懸念を示す。

「今までの政治は勝った人たちがよければという感じで来たが、そこに歯止めをかけたのは意義があると思う。学者やインテリは自由貿易が良いと言うし、僕もそれで全体が良くなると頭の中では思うが、政治家としては不利益を被っている人たちもいることを考える。トランプさんもそこに光を当てて選挙で選ばれたのだから、それを貫くべきだろう。実際の世界経済を見ていると、たとえばアップルなどは上手いこと考えて納税額を抑えているし、稼いだ人たちがそのまま利益を抱え込んでしまっている状況だ。稼ぐ人にはどんどん稼いでもらって、でも日本のようにガサっと税金を課して、うまく行かなかった人たちに配るという再分配の仕組みを作ることが大切だ」。
竹中氏は橋下氏の指摘を受け、「その通りで、重要なのは"全体"と"全員"は違うということ。つまり、自由貿易をやれば全体が良くなるのは間違いないが、それによって全員がよくなるという保証はない。実際、そうなってはいないし、一部の人だけが利益を上げてきたことも事実。今年のダボス会議で、イギリスのメイ首相も"今まで不利益を被っている人たちをあまりにも無視しすぎてきた"ということを言っていた。ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンも指摘していたことだが、アメリカは社会が日本以上に分断していて、取り残されている人たちが不満を持っている。だから私もトランプさんの問題提起は正しいと思うが、やっていることとは、ギャップがある。法人税減税やって、儲かっている会社がより儲かるようにしただけで、ベーシック・インカムなどの対策を一切やっていない。トランプさんは人々を守ってやる、自由貿易なんてダメだと言っているが、今の政策が続けば最初に被害を受けるのは所得の低い人達だ」と訴えた。(AbemaTV/『橋下徹の即リプ!』より)