DDTの入江茂弘が所属契約を更新せず、9月いっぱいでフリーとなることが発表された。団体の頂点であるシングル王座KO-D無差別級を2度戴冠、初戴冠時には当時の最多防衛記録を作ったトップ選手だ。
(25日の記者会見。入江は高木社長と「ハートに近い」左手で握手。ユニット・RENEGADESは国内での活動を停止することに)
入江は以前から何度も海外遠征を行なっており、率いるユニット・RENEGADESには渡瀬瑞基に加え外国人選手も。
何度も海外に行くうちに「向こうの選手との絆も深くなってきた」という入江。4月にKO-D無差別級タイトルを獲得したが男色ディーノに奪われ、9月23日の後楽園大会で行なわれたタイトルマッチでも敗戦。そのことも、DDT所属としての区切りをつけるきっかけになったようだ。
今後は海外での試合が中心となる。日本だけでなく、より広い世界を見ることに目覚めた結果だ。
「自分の体が動くうちに、もっといろんなものが見たいし、いろんな経験がしたい。向こうでチャンスを掴んで、大きなところに挑戦したい」
(23日の王座戦で敗れた入江。抗争を繰り広げてきた男色ディーノとも和解)
(C)DDTプロレスリング/宮木和佳子
9月25日の会見で、入江はそう語っている。同席したDDTの社長・高木三四郎は「寂しくないと言ったら嘘になりますけど、海外のプロレス界にはいろんなチャンスが転がってると思います。どうせやるなら、DDTを卒業した入江茂弘としてビッグネームになってほしい」。これまでの海外遠征も、積極的に後押ししていたそうだ。
とはいえ「ちっちゃい頃から知ってる選手なんでね。まっすぐな性格なので心配でもあります。食えなかったらお小遣い送ろうかな、とか(笑)」とも。
入江がデビューしたのは、高木が名古屋に設立した「でら名古屋プロレス」の選手として。その後DDT入りし、高木とタイトル防衛戦を行なったこともある。
DDTでの思い出について聞かれた入江は「多すぎて選べないですよ」。10月はフリーとしてDDTの大会に何度か参戦する予定で、10月21日の両国国技館大会では壮行試合が組まれた。入江茂弘&石井慧介vsHARASHIMA&坂口征夫というタッグマッチだ。
HARASHIMAと坂口は、入江が何度も激闘を展開してきた好敵手。石井はかつて高尾蒼馬と3人で「チームドリフ」を組んでいたパートナーというだけでなく、プライベートでも親友と呼べる選手だ。
(退団発表直後の試合では、両国でタッグを組む石井との攻防も)
(C)DDTプロレスリング
会見後に開催された渋谷ストリームホール大会、入江と石井はタッグマッチで対戦。試合後の石井が「短い時間じゃ語り切れない。両国でのタッグ、最後だと思うので最高の締め方をしたい」と語れば、入江は「石井は組んでも闘っても燃える相手。この団体を去っても、アイツに対する気持ちが離れるわけじゃない」。
入江によると、今回の独立について、石井は「今が一番、体が動く絶好調の時だからチャンスだと思う」と背中を押してくれたそうだ。男色ディーノvs佐々木大輔のタイトルマッチ、竹下幸之介vsCIMAの初シングル対決など注目カードが並ぶ10.21両国大会。入江茂弘壮行試合も、選手たちやファンの思い入れの深さではメイン級と言っていい。
文・橋本宗洋