DDT名物の一つ、アイアンマンヘビーメタル級王座をめぐる闘いに新たな展開が見られた。
(須田を急襲、王座を強奪した松村。プロレスの実力を考えれば卒業まで保持し続ける可能性も充分にある)
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このタイトルはいつでも、どこでも、誰でも挑戦可能で、とにかくレフェリーが3カウントを数えるかギブアップを確認すればその場で王座移動となる。これまでにもプロレスラーだけでなく芸能人、団体スタッフ、一般人、こたつや割りばしといった無機物、ラジオ番組の投稿メールなどさまざまなチャンピオンが生まれてきた。
今年7月には、AbemaTVの生中継大会「DDT LIVE! マジ卍」にゲスト出演した須田亜香里が“大社長”高木三四郎と松井幸則レフェリーを神対応握手で篭絡。バックアップを得て竹下幸之介からベルトを奪っている。
今年のAKB総選挙で2位となった須田が新たな栄冠を勝ち取ったわけだが、『豆腐プロレス』出演メンバー(オクトパス須田)がタイトルを獲得したことにもなる。ドラマと現実がクロスオーバーした瞬間としても画期的な王座移動であった。
その後、王座戦線にまったく動きはなし。松井珠理奈復活に沸くSKE界隈にあって、アイアンマン王座は半ば忘れられていたのかもしれない。
が、10月2日の「マジ卍」でいきなり動きが。「緊急ニュース」として番組内で流れたのは、新王座誕生の瞬間だった。舞台は名古屋のSKE48事務所にある会議室。スマホをいじる須田の背後から「だーすー、お疲れ!」と言いつつエルボーを食らわせたのは人気メンバーであり、卒業を発表したばかりの松村香織だった。
レフェリーを引き連れ用意周到な松村は須田のリストを取るとテーブルでの拝み渡りからモンゴリアン式のクイウチチョップ。『豆腐プロレス』で演じたヒールユニット・工事現場同盟のクイウチ松村そのままにベルトを強奪すると「私がチャンピオンだ、誰でもかかってこいや!」。
この王座移動により、タイトル戦線が活気づくのは間違いない。松村は卒業を発表しているだけに、ベルトの「SKE外流出」を阻もうとするメンバーもいるのではないか。といっても松村の卒業時期は不透明。逆にベルト争いを繰り広げることで卒業先延ばしを目論むメンバーがいてもおかしくはない。
そんな中、穏やかではいられないレスラーも。元LinQのメンバーで、東京女子プロレスで活躍中の“クビドル”伊藤麻希だ。以前から『豆腐プロレス』にケンカを売ってきた伊藤。SKE・豆腐プロレスメンバー内での王座移動に思うところがあるのだろう。
伊藤は現在、DDT総選挙の中間発表で1位を独走中。このまま1位が確定すれば団体の頂点であるKO-D無差別級王座に挑戦することになる。ただ、2位ならその他のタイトルに挑戦可能であり、伊藤はツイッターで思わず「総選挙2位になってアイアンマン取りたくなってきた。。どうしよう。。」とツイートしている。
しかしアイアンマン王座はいつでも、どこでも、誰でも挑戦可能であり、総選挙2位にならなくとも松村を襲撃すればいい話なのだが、伊藤はそれに気づかないほど“SKE内王座移動”に心を惑わされてしまったということか。
そもそもの話をすれば伊藤もアイアンマン王座を獲得したことがある。まして王座争いはSKEと同時に「DDTワールド」内での話。つまり「松村が須田からベルトを奪った世界」において、いま人気トップに君臨しているのは総選挙暫定1位の伊藤なのである。
炎上覚悟で言うならば、松村香織や須田亜香里よりも伊藤のほうが“格上”という見方もできる状況が生まれてしまっているのがおそろしいところ(松村、須田がDDT総選挙に出馬していないのは置いておくが)。
奇しくも、来週10月10日の「マジ卍」ゲストはSKEの高柳明音。やはり『豆腐プロレス』メンバーでもあり、ここで新たな動きが見られるのか。またDDTの選手による王座奪還はあるのか。アイアンマン王座の特性を考えると、今この瞬間にもベルトが移動しているかもしれない。
文・橋本宗洋