前回増税時の景気への影響を踏まえ、政府が示した対策の中で注目されるのが「キャッシュレス決済」だ。背景には増税を機に社会のキャッシュレス化を推進したいという政府の思惑もあるようだ。15日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、この問題について議論した。

 今回、政府が示したのはキャッシュレスで商品を購入した場合、2%のポイントが還元されるというもので、軽減税率が適用される食料品(外食や酒などを除く)もその対象になるというもの。つまり、軽減税率で消費税8%が適用される100円の商品の場合でも、実質106円で購入できることになる。ただ、中小の小売店で商品を購入した場合のみの措置で、期間も数か月程度ではないかとの見方もある。

 ニッセイ基礎研究所の福本勇樹氏は「政府としては、導入の進んでいない中小の小売店での普及を促したい。決済のための機器を導入するのに10万円以上かかるので、補助することも検討している。地方の観光地に関しては自治体による決済端末の補助が始まっている。ただ、キャッシュレスの場合、お店側への入金に時間がかかるので資金繰りに影響が出るので、なるべく現金で欲しいというニーズはある。また、高齢者はクレジットカードが作りにくく、スマホ決済もハードルが高い。その辺も含めて普及活動をやっていく必要がある。期間が終わればキャッシュレス決裁をやめてしまうお店が出てくる可能性もある。政府は2025年までに決済比率を40%に高めたいといっているので、せめてそこまではやるべきではないか」と話す。

 その上で、「世界的な研究結果があり、クレジットカードの普及が1%進むと、だいたい0.1%のGDPが増えるという研究結果がある。日本でもキャッシュレス決済比率が20~30%上がればGDPの0.8~1%程度(約5兆円)の押し上げ効果が出る可能性がある。スウェーデンでは銀行強盗をなくすためにキャッシュを銀行に置いていない。犯罪の抑止にもつながる」と指摘した。

■諸外国に比べ低いキャッシュレス決済比率

 国別のキャッシュレス決済比率(2015年)を見てみると、韓国89.1%、中国60.0%、オーストラリア51.0%、スウェーデン48.6%、アメリカ45.0%となっている中、日本は18.4%と、諸外国に比べて低い状態が続いている。

 街で話を聞いてみると、

 「ちょっとやってみようかと興味本位で『Apple Pay』を始めたが、1回慣れるとなかなか現金には戻れない。現金出しておつりを貰って、というのが面倒になってきている」(20代男性)

 「現金を持ち歩くのとか、おろすのがちょっと面倒なのでカードが多い。コンビニとかもわりと飲み物だけでもカードで買ったりする。割り勘したりするときは現金がないと困ったりもする」(20代女性)

 「カードだとバンバン使っちゃいそうなので現金の方が良い。現金派の友達もいれば、カードで払ってポイントためる友達もいる」(20代男性)

 と、若者でも意見は様々。高齢者に聞いてみても「現金が8割くらいで2割はカード」という人や「5000円以上の高いものはクレジットカードで、5000円以下だったら現金で決済する方が多い。日本だから現金が多いんじゃないか」と話していた。

 現金派の高齢者が多い東京・巣鴨にある「茶舗 山年園」では、キャッシュレスでも買い物ができる設備を整えているが、「この通りでは有名な食堂でも、いまだに現金のみのお店が多い。商店街内ではクレジットカードやろうとか、電子マネーも取り入れていこうとか、勉強会で話をしているが、手数料が取られるということもあり、弱気というか腰が重い方が多い」と話した。

■夏野剛氏「現金のトランザクションというのはものすごく無駄な行為」

 作家の乙武洋匡氏は「残念だったのは鳥越俊太郎さんがキャッシュレス化を拒否し、現金にこだわるという話をしていたこと。彼の世代のオピニオンリーダーこそ、自分がどうしたいかより、社会がどっちにいったらいいかを考えて、"僕は抵抗あるけど、舵を切っていこうよ"と言ってほしかった」と話す。

 「確かに高齢者にとって心理的な壁は高いと思うが、だんだん目も悪くなり、指先も鈍くなる中、物理的には便利になるはず。私の場合も、1人で買い物をするときはズボンのポケットに入れた財布を店員さんに出してもらうしかない。それが電子決済になれば楽。身体的な不便が大きい人間ほど賛成すべきだ」。

 慶応大学特別招聘教授の夏野剛氏は「キャッシュレス決済を入れたくない中小の中には、脱税ができなくなるからというところも入っている。僕は小銭というものが大嫌いだったから、15年前に『おサイフケータイ』を作り、その後も電子マネーを推進してきた(笑)。コンビニはほとんど導入されているが、まだまだ普及率が低くて愕然とする。たとえば外国人観光客にとって、電子マネーが使えないタクシーほど非効率なものはない」と指摘。

 「現金のトランザクションというのはものすごく無駄な行為。レジで現金を受け渡しすると30秒くらいかかる。だいたい1億人の人口がいるとして、1日に2億5000万~3億回くらいのお金の授受がなされているとすると、それが全てキャッシュレスになるだけでだいたい15万人分くらいの労働力がセーブされることになる。韓国もキャッシュレスが普及しているが、1997年までは日本と同じように10%台だった。97年にアジア経済危機で韓国経済が破綻したときに、税金の捕捉を確実にするため、税制でキャッシュレスを優遇した。これで一気にキャッシュレス決済が普及した。現金で決済するものは食料品だろうが何だろうが10%にして、現金以外は全部8%にするべきだ」。

 コンビニ大手のローソンが提案する"未来のコンビニ"では、まるで駅の改札を通るように買い物ができる。2025年までに導入予定だというウォークスルー決済で、商品をレジ袋に入れたまま機械に通すだけでOKだ。果たしてキャッシュレス決済は、増税によって落ち込むかもしれない景気対策のその切り札となるのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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