(10.21DDT両国のメインはディーノと佐々木の異色対決に)
10月21日のDDT両国国技館大会、そのメインイベントであるKO-D無差別級選手権で、王者・男色ディーノに佐々木大輔が挑戦する。抜群のテクニックを持ちつつハードコアマッチも得意とし、人を食ったマイクアピールで観客を呆然とさせつつ高い人気を誇る。その通称(アダ名)は“カリスマ”である。
ディーノとの前哨戦では、股間と唇を狙う「男色殺法」の攻防を徹底的に繰り広げたあげく、記者会見ではディーノに「お前のプロレスは品がない」とどこかで聞いたセリフ。どこまでも真意が読めない、食えない“カリスマ”に、じっくり話を聞いてみた。
(聞き手・橋本宗洋)
――両国大会のメインでKO-D無差別級のタイトルマッチ。いつもとは気持ちの面で違いがありますか。
佐々木 そこは考えたことなかったし、今も特に気にしてないな。俺にとってはどの試合も常に特別だし、MAXでやるものだから。両国だからどうっていうのはない。
――両国でベルトを巻けば、単なるタイトルホルダーではなく「正真正銘のトップ」として見られることにもなるかと思いますが。
佐々木 周りの話で言えば、まあ(地元の)練馬界隈はザワついてるけど、個人的には思い入れはない。ただ相手が男色ディーノに決まった時に「一刻も早くこの世から消し去りたい」とは思ったな。男色ディーノを消して、新しい時代を作らなきゃいけない。
――いわゆる世代交代マッチですか。
佐々木 単純に「もう終わってんだから出てくんなよ」って。これはHARASHIMAと闘う時もそうだけど。もう終わってるのに、自分じゃ気づいてないからどんどん前に出てくるから。こっちが分からせてやらないと。
――「終わってる」とは?
佐々木 何年も同じことやって、新しいものを生み出そうとしてないんだから。何も提供できないなら出てくるなって。男色ディーノなんて、俺がDDTに上がり始めた10年前からずーっと同じことやってる。何が楽しいんだ、あれ。
――考えてみると、佐々木選手はやることが数年単位で変わりますね。
佐々木 ユニットも変わるしな。変化を楽しんでるのと、その時に見てる映画とかドラマの影響をメチャクチャ受けるから。
――たとえば、軍隊をモチーフにしたユニット「モンスターアーミー」は?
佐々木 あれは確実にランボーの影響。一作目から見始めて、ランボーになりたいと思ってたから。(飯伏)幸太と組んでた時は自分を抑えてる面もあったけど、違う面が幸太に開放された部分もあって、それはそれで楽しかった。
――では現在のDAMNATIONはどんなイメージですか?
佐々木 自分が32年間生きてきた思想が一番出てると思う。素に近いな。
――以前「ヒールではなくパンク」と表現していました。
佐々木 やりたいようにやるし、パンクだから衝動にかられて勢いでやってしまうことも多い。逆に自分が違うと思ったら絶対やらないし、人の指図は受けない。
――それで人気も結果も出てますもんね。佐々木選手は師匠であるディック東郷選手譲りのテクニックがあり、凶器を使ったハードコアな試合も得意ですし、コミカルな部分もある。ご自身ではプロレスのどんな部分に重きを置いてますか。
佐々木 闘いにおいて何を見せるかっていう部分だな。毎試合、これで終わってもいいと思ってやってる中で、どう生き残るか。それは見てきた映画の影響もあるな。どうにかして生き残るっていう。逆に言えば、生き残るためには「どうなってもいい」くらいのことをやらなきゃいけない。傷口は自分で縫うし。
――そこでも「ランボー」が。ちなみに他に好きな映画は?
佐々木 ありすぎてキリがないな。「ランボー」、「ロッキー」、あと「ゴッドファーザー」とかマフィア映画。殺す時に手段を選ばない感じはプロレスにも出てると思う。見てきたもの、好きなものの影響が全部出てるな、プロレスには。
――ディーノ戦は曲者vs曲者というか、たとえば竹下幸之介選手やHARASHIMA選手と闘う時とは違う雰囲気がありますよね。
佐々木 竹下、HARASHIMAとやると、純粋に「プロレスのぶつかり合い」というイメージができるけど、今回はそうじゃない。本当に何が起こるか分からない試合だし、その想像を楽しんでほしいっていうことだな。
(前哨戦ではビキニパンツ&網タイツという不可解すぎるアンダーウェア(普段は家でしかはかないという)で「男色殺法の向こう側」に踏み出した“カリスマ”佐々木)
(C)DDTプロレスリング
――前哨戦でも男色殺法を見切ったり、逆に快楽に溺れたり、網タイツ姿で「男色殺法の向こう側」に行ったりで。ビッグマッチに向けての、いわゆるシリアスな感じがないですよね。
佐々木 お互い振り切ってる部分はあるな。そもそも、自分ではDDTらしさみたいなものは持ってないと思ってるけど。前哨戦では相手に合わせてる部分もある。
――DDTらしくないとは?
佐々木 ハッキリ言えば、コミカルな試合は好きじゃない。男色ディーノがケツを出すような試合も早くやめてくれって思ってる。DDTファンが思うDDTっぽい試合、ヨシヒコだとか平田(一喜)のダンスだったり。そういうのは全部嫌いだから。
――といってストロング方面というか「プロレスラーは強くなければ」という感じでもないですよね。
佐々木 それも思ってない。俺が思うプロレスの面白さは、リング上では何が起こるか分からないっていうところだから。WWEとかもそうだし、もともとがWCWからプロレスに入ってるのはあるな。毎回、nWoが乱入して終わるみたいな。中学生の頃、なぜかテレビ埼玉でやってて。夜7時からだから、家族に「ご飯食べながらこんなの見たくない」って言われながら見てたな。
――家族でご飯食べながら見るにはふさわしくないものが好きっていう。それはDDTともタイプが違うものなんですね。
佐々木 全然違うな。DDTの悪い部分は変化がないところ。
――つまりディーノ選手は、DDTの「変わらなくてつまらない」部分の象徴だと。
佐々木 そう、本当にそれ。それなのに、なんだかんだ去年の総選挙で1位だったし。ああいうのは全然納得いかないな。
――観客の心理としては定番を求める部分もありますからね。たとえば、地方大会でディーノ選手がお尻を出さなければ、それはそれで不満が残る気も。
佐々木 そうか? そんなこともないと思うけどな。ケツ出すにしても出し方がずっと一緒って、それは楽してるだけだろ。体も頭も使ってない。プロデューサーになっても何も提供せず、急にやめて。
――対戦が決まった時に、最前線で体を張ってるのはDAMNATIONだとおっしゃってましたね。
佐々木 その自覚はある。
――佐々木さんと同一線上で闘ってるのはALL OUT(竹下幸之介、彰人、勝俣瞬馬、飯野雄貴)とかですか。
佐々木 まあ竹下かな。ALL OUT全員っていうのはまた違う。
――佐々木選手、DAMNATIONの特徴としては、マイクアピールやコメントであんまりマトモなことを言わないというか……“感動”に着地させないようにしている気がします。意地でも感動させまいという強い意志を感じるんですよ。
佐々木 そう、その通り。感動が嫌いだしハッピーエンドが嫌いだから。ハリウッドの映画だと、だいたいうまくいってチューして終わるだろ。ああいうのがホントに見てられない。最後、主人公が死ぬみたいな映画のほうがいいよ。
――「ランボー」一作目も逮捕されて終わりますし。
佐々木 そうだな(笑)。