"豪華過ぎる返礼品"の問題を受け、総務省は寄付額の3割を超す品と、地場産品ではない品を制度の対象から外す「ふるさと納税」の見直しを打ち出した。
この方針に対し、自治体の反応は様々だ。千葉県館山市は地元出身のX JAPAN・YOSHIKIさんがプロデュースした"カリフォルニア産"ワインの取り扱い中止を決定。佐賀県みやき町は町の風景が楽しめるアプリケーションが入ったタブレットを即座に終了させた。
今回の問題で批判の矢面に立たされているのが大阪府泉佐野市だ。「悲しいかな、小学校、中学校にもプールがないという状況だったのが、整備が少しできるようになった」と八島副市長が話すように、1000億円以上の借金を抱える同市にとって、歳入の2割近いふるさと納税は、まさに"頼みの綱"だ。返礼品はタオルや野菜といった地元のものもある一方、広島産カキや築地直送のマグロ切り落とし、オホーツク海産ホタテなど、全国からの"お取り寄せ"も数多く、昨年度の寄付額は全国トップの135億円に上った。
同市の担当者は会見で「肉、米、カニといった"三種の神器"。こういった返礼品を用意する自治体に寄付が集まる状況があって、特産品資源の豊富な街とそうでない街に格差が生じてきた。対抗するためにはキラーコンテンツが必要なのではないか」と指摘、「我々がアイデアで積み重ねてきたこの取り組みを、言い方は悪いが踏みにじるような通知だと考えている。総務省の方針が絶対に正しいとは限らないし、自治体が自分たちの頭で物事を考えて判断していかなければ、地方自治体は解体してしまうのではないかと考えている」と訴えた。
20日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した自民党の古賀友一郎参議院議員は、元総務官僚で長崎市副市長を務めた経験があり、現在はふるさと納税担当の総務政務官を務める。
古賀氏はまず、制度の本来の目的について「自分のふるさとを応援しようというところから発想は始まっているが、ふるさとというのはどこで線を引くのかは難しい。自分にゆかりのある自治体だけでなく、被災地など自分が頑張ってほしいと思う自治体を応援した納税者を支援するために税の控除を認めるという制度だ。野田前大臣もおっしゃっていたが、根本的な主旨は最初の志を見直そうというものだ。元々、節度を守ってやって頂く分には、総務省もうるさいことを言いたくなかった。自治体からも基準を設けてほしいという声はあるが、彼らには横の競争がある」と説明。
その上で「誤解があるが、返礼品の価格を寄付の3割までにしてくださいとお願いをしているところだ。諸経費を考えると、3割を超えると寄付の半分以上は自治体に残らない事態になってしまう。そこで去年4月、行き過ぎは見直してください、という大臣の通知を出し、今年4月にもお願いをした。その後も機会を捉えてそういう類のお願いをずっとしてきた。ご理解を頂いた自治体も結構多いが、一部まだご理解頂いていないところがある。ふるさと納税という名前がついているが、寄附金控除だ。寄附金と言うからには、寄付された側に半分以上は手元に残してほしいということだ。今もご理解頂けない自治体が9月1日時点で246団体も残っている」と訴えた。
元長野県知事の田中康夫氏は「菅官房長官さんが総務大臣の時に検討した制度。菅さんは"田中が泰阜村に住所を移したいと言ったのがアイデアだった"と言ったことで、"田中が返礼品を焚きつけた"と誤解されているが、そうではない。人口1500人の泰阜村の村長が厳しい財政の中、"障がいがあっても独居になっても原風景の中で終末を迎えよう"という福祉をやっていた。そこで僕はちょっとでも税金を払いたいと思った。しかし現職の知事が自分の選挙区に寄付をしたらお縄頂戴になってしまう。だから住民票を移して、村長の家に部屋を借りた。それに対して県会議員が"何をやっているんだ"と言っているのを菅さんは見ていた。いわば、ふるさと納税は一口株主と同じ。株主になればその会社がどんな経営をしているのか、社会貢献をしているのか見るようになる。それが本末転倒になっている」と指摘、「泰阜村の特産品は柚餅子くらいしかない。それではふるさと納税は来ない」と、現状に苦言を呈する。
「当初、総務省の中では必要ないという意見があった。それでも菅さんがやるんだと言って始めたので、制度設計ができないまま始めたところがあると僕は思っている。だから返礼品のポータルサイトもIT会社が経営していて、自治体は自分でできない。また、使い途も箱物ではなく、教育、福祉、図書館司書の給与に使うということにして、報告をさせる制度にしないと」。
経済アナリストの森永卓郎氏も「野田さんが総務大臣をやっていた時に、言うことを聞かなかったらふるさと納税の対象から外すと脅しをかけた。総務省はけしからん。長野県は物づくりの県だ。それなのに総務省が、物を返礼品にしたらダメだ、肉とか米とかカニじゃないとダメだと言った」と憤る。
古賀氏は「いい制度だということは多くの方々に分かって頂けると思うが、行き過ぎだという批判が出てきている。制度が持たなくなるような事態は避けたいと思っている。来月1日時点でもう一度調査をする。それを踏まえて、ご納得頂けない自治体があるとすれば、党の税調で議論し、必要があれば法案化して、法律で問題解決をしていくという考えでいる。そうなった場合、返礼率も書かないといけない」と述べていた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)