この記事の写真をみる(3枚)

(里村に完敗を喫したものの、試合後も泣きながら食ってかかった伊藤)

(C)DDTプロレスリング

東京女子プロレスを主戦場にしてきたアイドル兼レスラー、自称(元のグループをクビになった)クビドルこと伊藤麻希にとって、10月21日のDDT両国国技館大会は生涯忘れられないものになっただろう。なぜ忘れられないのかといえば、これまでのどの試合よりも悔しい思いをしたからだ。

この大会で、伊藤は赤井沙希とタッグを結成。センダイガールズプロレスリングの里村明衣子&カサンドラ宮城と対戦した。里村は“女子プロレス界の横綱”とも呼ばれ、女性として初めてDDTの頂点・KO-D無差別級のベルトを巻いたトップ中のトップだ。

アイドルとしては人気が出なかった過去の思いも含めてリングに叩きつけ、技術、体力よりも気持ちを前面に出して闘ってきた伊藤。男色ディーノとのシングルマッチも含め、誰が相手でも物怖じしたりへりくだったりすることがなかった。

「死にたくなったら伊藤の試合を見ろ。明日も生きてていいかなと思えるくらいの勇気はあげられるから」

拡大する

(少ないながらも見せ場は作った伊藤。しかし勝機を見出すことはできず)

(C)DDTプロレスリング

そんなメッセージを発する以上、後ろ向きなところは見せられないのだ。しかし、里村の壁はとてつもなく高くて厚かった。最初の攻防で吹っ飛ばされると思わず場外にエスケープ。コーナーでハイキックを直撃され、失神寸前に追い込まれる場面もあった。スリーパーホールドや逆エビ固めで反撃したのだが、追い込むまでには至らず、最後はSTFでギブアップ。伊藤の力が通用せず、また里村が全力を出しきるほどの試合ではなかったことも確かだ。

伊藤はDDT総選挙の中間発表で1位をキープし続けており、強気の姿勢を里村に見つかってツイッター上で「根性を叩き直す」と宣告されていた。当初は伊藤が総選挙1位となり、里村のKO-D王座に挑むというのが“約束”だった。

だが、里村は9.23後楽園大会で王座陥落。伊藤はそんな里村を「ダセエな」と挑発している。この言葉は、里村の耳にも届いたようだ。

「私はな、ダサいを貫いてここまできたんだ。(そんな言葉では)何も動じない。伊藤麻希、シングルでもなんでもやってやるからもっと私を動かしてみろ!」

実力も貫禄も言葉の力も、何もかもが違う。だが、それでも伊藤は退かなかった。試合直後からインタビュースペースまで泣きっぱなし。けれども絶対に顔は下に向けない。

拡大する

(最後はSTFでギブアップ。里村にとっては余力を残しての勝利だったはず)

(C)DDTプロレスリング

「どうあがいても里村明衣子には敵わなかった。こんなに悔しい思いをしたのは初めてです!」、「悔しい以外に言葉が出てこないのも悔しい!」。しかし「この壁は何十年かかっても必ず超える。ぶち壊す。負けたからってあきらめたわけじゃない」とも。ついでに「女子プロ界の横綱か何か知らないけど」とまで言ってしまうあたりが伊藤らしさでもある。

試合後のリングでも、伊藤は里村に歯向かっていった。号泣しながら睨みつけ、張り手を見舞う。里村はあえてそれを受けていた。あれだけの完敗直後に泣きながら張り手をしても、はっきり言って説得力はない。むしろ生意気だと思われる可能性もある。

泣いてうなだれて「今日はありがとうございました!」と頭を下げれば、きっとその場は丸く収まったはずだ。里村ファンや女子プロ全体のファンにも、そのほうが好印象を残しただろう。まして今の伊藤は総選挙暫定1位。「いったいどれだけのもんなんだ?」という目で見られるし、アンチめいた人間も出てきた。

しかし伊藤は一度頭を下げ、リスペクトを表明してしまったが最後、その相手を超えられなくなってしまうと信じているのだろう。DDTでの闘いぶりを見て、里村の強さと存在感に憧れを抱かなかったと言えば嘘になる。でもそれを認めたら「レスラー・伊藤麻希」に成長の余地はなくなる。

里村もまた、そんな伊藤の気持ちを理解しているのではないか。かつて、記者会見で自分と対戦できることが嬉しいと語った相手を一喝したこともあるのが里村だ。試合後のブログでは、伊藤について「弱かったけど身体からメッセージが出ていた」、「伊藤麻希に共感する人間って私より多いと思う」、「どんどんああいう異端児に頑張って貰いたいですね」と記している。伊藤の連載コラムまで読んでいるというから驚いた。

しかしその上で「私も身体が動く限り、噛み付いた人間にはリング上で闘いを持って知らしめる」と戦闘態勢を示すのが里村の“横綱”ぶりだろう。完全に差を見せつけておいてなお「シングルでもなんでもやってやる」というのだから、あまりにも懐が深い。

いつかまた、里村と伊藤が対峙する日が来るのか。伊藤が里村を超える日は本当に来るのか。すべては伊藤の成長しだい。間違いなく言えるのは、里村明衣子という巨大な存在を体感したことが、伊藤の成長を促すということだ。

文・橋本宗洋

DDTプロレスリング「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」濃縮編集版 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
DDTプロレスリング「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」濃縮編集版 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
2018年10月21日 東京・両国国技館で行われるDDTプロレスリング「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」をAbemaTV特別編集にて配信!
DDTプロレスリング「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」濃縮編集版 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
DDTプロレスリング「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」濃縮編集版 | 無料のインターネットテレビは【AbemaTV(アベマTV)】
出演者は、高木三四郎、男色ディーノです。
DDT興行生中継 - 2018.10.21東京・国技館「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」 - 【第三試合】”スーパー女子プロ大戦2018”里村明衣子&カサンドラ宮城vs 赤井沙希&伊藤
DDT興行生中継 - 2018.10.21東京・国技館「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」 - 【第三試合】”スーパー女子プロ大戦2018”里村明衣子&カサンドラ宮城vs 赤井沙希&伊藤
見逃したDDT興行生中継 - 2018.10.21東京・国技館「両国ピーターパン2018~秋のプロレス文化祭~」 - 【第三試合】”スーパー女子プロ大戦2018”里村明衣子&カサンドラ宮城vs 赤井沙希&伊藤麻希を好きな時に何度でもお楽しみいただけます。「初回登録なら無料体験」を実施中!!
DDT LIVE! マジ卍 - #16 - 【第2試合】赤井沙希 vs 伊藤麻希...女と女の仁義なき戦い | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
DDT LIVE! マジ卍 - #16 - 【第2試合】赤井沙希 vs 伊藤麻希...女と女の仁義なき戦い | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
見逃したDDT LIVE! マジ卍 - #16 - 【第2試合】赤井沙希 vs 伊藤麻希...女と女の仁義なき戦いを好きな時に何度でもお楽しみいただけます。「初回登録なら無料体験」を実施中!!
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(3枚)