「日本では圧倒的に医者が不足しています。もっと医学部を新設するべきだと思うのですが医師会との関係を忖度して実行しようとする政治家はいません。」
25日放送のAbemaTV『NewsBAR橋下』に寄せられた視聴者からの質問に、ゲストの元文部科学大臣で衆議院議員の馳浩氏が回答した。
馳議員はまず「平成12年の司法制度改革に党内の議論から参加してきたが、反省している。それは法科大学院の問題。文部科学省がしっかり審査しているはずだが、要件が整っていれば認可していったため、雨後の筍のように各大学が作りはじめた。ところが人数が集まらず、募集停止するところが相次ぎ、今年は青山学院大学の法科大学院も無くなってしまった。また、予備試験組という"抜け穴"を残したところ、その方が難易度が高いため就職でも評価が高くなり、今は本流になってしまっている」と説明。「医師についても、過疎地域でも小児科医や産科医などがちゃんといるという状況を目指して、厚生労働省が医師会などの業界団体とコミュニケーションを取りながら養成、国家試験、研修の部分と出口の問題に取り組むべきだ」とコメントした。
さらに馳議員は加計学園の獣医学部新設の問題にも言及した。
「それまで文科省の告示が原因で獣医学部が作れなかったんだから、そこに穴を開けるのは政府の一員として当たり前だと思っていた。私は審査をする立場ではなかったが、本当に必要な公務員獣医師、あるいは感染症など、世界に通用する新しい分野のニーズに対し、本当に担保できるのかと。しかも、国立大でも定員が50人程度のところ、150人くらい申請してきた。いきなりそれはない。粗製乱造で"卒業したらペットショップやります"じゃ困るから、70~80人くらいにした方が経営もうまくいくだろうし、マッチングできる仕組みも含めて考えてくれ、農水省・厚労省ともしっかりコミュニケーションとってやらなきゃだめだよ、というのが私の指示でした。歪められた行政を正すためにも、安倍さんがやったことは正しいと思っています。事務次官に前川喜平氏を任命したのは私。前川さんとも真面目に議論したが、"官邸がこう言ってます、どうしますか"と言って右往左往していて可哀想だなと言う気もしたが、法科大学院のこともあるし、私学なので持続可能性を考えれば、文科省だけで定数、カリキュラム、教員数、施設が基準を満たしているから"はいどうぞ"と決める話ではないなと思った」。
橋下氏は馳氏の話を受け「やっぱり政府が混乱した原因は、"数の調整"と"質の確保"を混同したからだと思う。法科大学院に関して言えば、数を増やしたことによって、地方に行く弁護士や、企業内の弁護士が増えたのは良いこと。役所や地方自治体にはもっと必要だと思う。でも、質の確保ができていなかった。僕は政治経済学部の経済学科だったから、法律の授業は受けていない。だから司法試験予備校のカリスマ講師・伊藤真さんのテープやビデオで勉強した。多分、いま日本に何百人といる法科大学院の講師よりも、伊藤さんの授業の方が役に立つと思う。それくらい、全国の法科大学院の講師のレベルは低いし、そういうことを考えずにバンバン認可してしまった」と指摘。
その上で「今の文科省、霞が関は業界団体の意を汲んで、数の調整に入る。獣医学部が52年間も新設できなかったのは、団体からの要望を受けて、"獣医師が増え過ぎたらご飯が食べられなくなるから"と枠を設定していたから。質の確保のために却下するならいいけど、それは絶対違うと思う。やってみてダメだった人は他の仕事に就けばいい。歯学部にしても、新設できない壁になっているのは文部科学省の告示。これは法律ではないので、大臣が署名して、"質を確保すれば門前払いはしない"と変えることができる。以前、このことを馳さんにぶつけたときに、"ある亡くなった政治家の事情があるからできなかった"とおっしゃった。つまり、そういうことだ」と、政治家の背景にある業界団体の圧力が根強いことを示唆していた。(AbemaTV/『NewsBAR橋下』より)