今、転職市場が“転職バブル”と言えるほど“超売り手市場”になっている。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、建設・飲食・宿泊・その他サービス業など様々な業界で働き手が不足。近年、厚生労働省が発表する有効求人倍率でも高い数字を記録している。
転職者が転職先をより自由に選べるようになったことで、終身雇用が当たり前だった時代に比べ、転職へのハードルも下がっている。中にはまったく違う業界から、異業種に転職した人も。
今回、10月3日よりテレビ朝日地上波(※一部地域を除く)にて放送スタートした『転職さんいらっしゃい!』が、ついにAbemaTVで放送決定。地上波の未公開トークとあわせて“バラステ”枠(毎週日曜よる放送中)に登場した。
スタジオには転職の専門家として、大手転職サイトが主催するヘッドハンター・オブ・ザ・イヤーで約1600人の中から1位に輝いた転職コンサルタント・高本尊通さん(株式会社プロフェッショナルバンク)を招いた。(※「高」は正確には、はしごだかの字)
郵便局の配達員がITベンチャーにスカウト「この会社、ヤバいって思って……」
日本郵便の配達員だった上路綾乃さん(23)。郵便局から、システム開発のITベンチャーに転職した。転職した会社は、システムエンジニアの派遣やウェブアプリの開発を行っている2009年創業の株式会社メイプルシステムズ。
上路さんは、最初はCS(カスタマーサクセス)として入社したという。CSとは、自社サービスの顧客対応を行う職種のこと。その後、総務・労務・経理なども担当するようになった。
転職前後で「給料は変わらない」と話す上路さん。上路さんによると、郵便局勤務時の年収は400万円弱程度。配達員時代の仕事について「自転車だったので、持てる量が限られていた。銀座8丁目を主に配達していた」と語る。
郵便局の採用区分は「総合職」「地域基幹職」「一般職」の3つに分かれており、上路さんは「地域基幹職」として採用された。この「地域基幹職」とは、主に窓口業務や郵便配達などを行う職種で、平均月収は約18万円。一方、オフィスワークが中心の「総合職」の仕事は経営企画、商品企画・開発、営業企画・推進などで、月収は約22万円だ。
上路さんが転職したきっかけは、配達先からのスカウトだった。上路さんによると「ある日、普段通り書留を配達していたら、今の会社の人から声をかけていただいて。『ラブレターです』と言われました。そこで持って行った書留が自分宛てだったことに気づいて。『この会社、ヤバい!』って思いました」と不思議な出会いがあったという。
上路さんをスカウトした張本人の人事部長・鴛海さんに話を聞くと「いつも配達してくれて、雨の日も風の日も本当にいい笑顔で『郵便でーす!』と届けてくれた。ピンポンが鳴ったら、社長と取り合いで対応していた。毎回会うのがすごく楽しみだった」と当時の心境を語った。
このようにスカウトで転職するケースはよくあるのだろうか。前述の転職コンサルタント・高本さんは「我々の業界ではダイレクト・リクルーティングと言います。企業の経営者や人事担当者が身の回りの人に評判を聞いたりして、直接アプローチを行う採用活動のこと。最近だと、個人のSNSやブログもけっこう見られている」と解説した。
大手コンビニチェーンから女子大に転職! 東京ガールズコレクションとコラボ、大学案内も一新
2人目の異業種転職さんは、元大手コンビニチェーンの金井裕太さん(47)だ。大手コンビニチェーンで働いていた金井さんが転職した先は、戸板女子短期大学。1950年に開校した同校は、服飾芸術科、国際コミュニケーション学科、食物栄養科の3つの学科がある。入試・広報部で働く金井さんの仕事はさまざまだ。大学案内のパンフレットや、大学のWebサイト制作など、大学のありとあらゆるPRを担当している。
大手コンビニチェーンの出世モデルは、最初に店舗に配属され、次に「スーパーバイザー」という店舗のマネジメント職に就く。その後は、エリア店舗のマネジメントを担う「エリアマネージャー」となり、最終的に本部の総合企画部で新規事業を手掛けるというものだ。
金井さんは、総合企画部勤務時代の2003年に、お弁当やおにぎりなどが買える自販機を考案。コンビニチェーンでかさみがちな人件費を抑え、店舗の賃料も削減したいという思いから、考案に至ったという。
今では、全国約1500か所に設置され、自販機の年商は100億円ほどに。功績を認められた金井さんは部長に昇進、当時の年収は約800万円だった。金井さんは「自販機コンビニ以外で新たなことをやりたいと思って、会社に提案をしたが『NO』と言われた。新規事業をやる人間というのは、0から1の新しいことをやりたい。そんなときに、知人から『短大の改革をしないか』と誘われた」と転職を決意した当時を振り返った。
金井さんが会社に提案して却下された企画は、Amazon Goに似たアイデアだったという。Amazon Goとは、2018年にシアトルで開業された無人コンビニ。2021年までに最大3000店の開業を目指している。金井さんは10年以上前にAmazonよりも先に無人コンビニを思いついていたのだが、惜しくも実現できなかった。
大手コンビニチェーンの部長職、しかも年収約800万円だったこともあり、金井さんの家族は転職に猛反対だったそうだ。金井さんの家族は年1回の家族旅行をとても楽しみにしており、それがなくなってしまうことにがっかりしていた。
金井さんは「コンビニ時代に比べると年収がガクッと下がってしまった。当時短期大学から提示された年収は、当時より130万円低い670万円ぐらい。妻に打ち明けると、安定した生活がなくなってしまうので、妻はボロ泣きしていた。妻は専業主婦だったが、転職が決まってから打ち明けた」と当時を振り返った。
転職コンサルタント・高本さんによると、金井さんのケースは転職業界で「嫁ブロック」と呼ばれているという。高本さんは「ずっと転職活動をしていて、内定が出て、奥さんに打ち明けると猛反対に遭うという。それが原因で、転職を尻込みしたり断念したりする。(夫としては)確実に次の会社を決めてから伝えたい。落ちたらかっこ悪いというのもある」と解説。嫁ブロックを防ぐためには「転職活動を始めるときから奥さんに相談し、二人三脚で進めるといい」と話す。
金井さんは、妻のお小遣いは変えずに、自分のお小遣いだけを減らして説得。金井さんは、自分のお小遣いの額について「相当削った。お陰様で今は入試・広報部長になったので年収も800万円ほどに戻った。今年はシンガポールに家族旅行にも行けた。家族旅行は5年ぶり」と語った。
転職先の戸板女子短期大学では「学生の数を3倍にしてほしい」と無茶振りをされた金井さん。金井さんは「当時の定員は800名。私が転職した7年前の学生数は280名と半分以下だった。まずは定員をしっかり確保してほしい、というのが私に与えられたミッション」と話す。
そこで金井さんは、コンビニチェーン時代の経験を活かして戸板女子短期大学の改革に乗り出した。金井さんは「小売業では、競合に通っているお客さんをいかに自分のコンビニに来させるのかという、人の行動変容が大事。私の入試・広報部も、他の学校から学生を引っ張ってくる行動変容という点で似ている」と学校とコンビニの類似点について説明。
戸板女子短期大学は知名度が落ちていたため、まずは有名企業とコラボして知名度アップを目指した。
「ファッションを学べる学校なので、最初にやったのが東京ガールズコレクションとコラボレーションして教育内容を変えた。もう一つは、大学案内も思い切って変えた。それまでの大学案内は文字が多くて、教育の中身だけ載っていた。写真をたくさん載せて、学生の様子がわかるファッション誌のようにしたんです」
金井さんが担当した大学案内のパンフレットを実際に見てみると、まるでファッション雑誌『CanCam』のよう。ピンクを基調とした表紙には、「東京で一番キャンパスライフを楽しむ方法」という大きなコピーと一緒に、学生たちがモデルのようなポーズで映っている。
大学案内のパンフレットには、食物栄養科の特色を生かして、インスタ映えする学生の手作りヘルシーメニューも掲載。金井さんは「高校生がこれを見て『素敵だな。1回学校に行ってみようかな』と思ってくれたら」と大学案内に込めた想いを明かした。
さらに、資料案内を取り寄せると、ファッションブランドWEGOと学生が協同で作ったコラボグッズの防滴スマホケースが付録としてもらえるという。金井さんは「これを受け取った生徒さんは『あれ、付録が入っている』と思わず開いちゃう」と解説する。
金井さんの努力の甲斐もあり、現在の学生数は900名以上に。見事、学生数を3倍にする目標を達成した。金井さんは「人気の短大になったけれど、今後もさらに増やしていければ」と意気込みを語った。
▼【バラステ】転職さんいらっしゃい! #2
⇒【期間限定で無料視聴が可能・2018年11月11日まで】
(※スマートフォンアプリ、FireTVStick、ChromeCastから視聴可能です)
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(AbemaTV/テレビ朝日バラステ枠『転職さんいらっしゃい!』より)