1日、KDDIと楽天が業務提携するというビッグニュースが飛び込んできた。楽天といえば、ドコモ、KDDIがサービスを行うau、そしてソフトバンクに続く第4の携帯事業者として来年10月に参入することが決まっていた。
KDDIの高橋誠社長は会見で、「我々が通信ネットワークをローミングで提供するとともに、楽天さんが先行している決済、物流ネットワークをお借りすることとした」と説明。つまり、携帯電話業界に参入するが自前のネットワークを持たない楽天に回線を提供する代わりに、KDDIは力を入れようとしているQRコード決済や物流販売で楽天のプラットフォームを利用しようというのだ。両社にとっては協調しながらの競争であり、Win-Winの提携だという。
この業務提携が発表される前日、NTTドコモは通信料金を2~4割程度引き下げる方針であることを発表した。これについてKDDIの高橋社長は「ドコモさんの料金値下げの話が出たから、そのまま我々が同じ規模の(値下げを)追随するということにはならない」と言及。しかし、「当然、楽天さんは第4のキャリアとして入ってこられるので、その料金の設定次第では対応していかなければいけないフェーズはあるかもしれない」とも述べた。
料金について牽制し合っているようにみえる各社。果たして、今回のKDDIと楽天の提携は通信の世界にどのような影響を及ぼすのだろうか。1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、元NTTドコモの社員で総務大臣政務官を務めた自民党の小林史明衆議院議員に見解を聞いた。
今回の提携について小林議員は、KDDIが回線を「ローミング」で提供することを抑えておかなければならないと話す。
「例えば、KDDIが通信を流せる車線を10車線持っているとして、楽天と契約した車も10車線一緒に走っていいよというのがローミング。10車線のうち2車線を契約して貸りる、というようなMVNOとはちょっと違う。しかも今回のローミングは期間限定で、総務省は楽天が新規参入する時に『2026年までに全国のエリア96%をカバーできるようにしなさい』と条件を付けて、楽天もこれをクリアすると言っている。それを1、2年ではクリアできないので、楽天はまず東京・名古屋・大阪に集中的に投資をする。それ以外の地方が整備できるまでは、KDDIの車線を使わせてくださいということ。徐々にエリアが整っていけば、楽天が独自で行っていく」
では、なぜ楽天は提携先にKDDIを選んだのか。その狙いについては、「楽天はNTTドコモから回線を借りて格安スマホ、MVNOを展開していたが、KDDIとの方が交渉が成立しやすかったのではないか。ドコモはポイントも決済もやっていて、楽天は自分たちのサービスと重複する。auは『au WALLET』もやっているがまだまだだったので、楽天とはある程度Win-Winの領域がある」と説明。ITジャーナリストの三上洋氏は「お互いの弱い部分を補う関係になる。バーター取引で大金のやり取りがなくなるメリットがあるのでは」とした。
さらに、小林議員は「楽天はすぐにライバルになりうる」とし、「楽天は東名阪に集中して投資できる。契約者数は最初少ないので渋滞しづらく、『楽天と契約すると東名阪は速い』という売り出し方もできなくはない。なんなら5Gを先にやるとすると、価格とサービスの面で十分に競争ができる可能性がある」と述べた。
菅官房長官は「来年10月に楽天が参入することで、料金値下げが実現するだろう」と述べているが、一方でKDDIと楽天が提携することによって競争がなくなり、料金が下がらないのではないかとの懸念もある。これについては「私は大丈夫だと思っている。フランスでも同じように新規参入者が大手キャリアからローミングをして、最終的には自立して競争をしっかりとできている例がある。それが起こるだろうと思って、NTTドコモも先取りして通信料値下げの準備をしたと思う」との見方を示した。
また、「携帯料金が高い」という声の根本には、料金端末の代金も含まれているために通信料が比較しにくい状況があると小林議員は指摘。「端末の割賦販売というある種のイノベーションによって、高いスマホがこれだけ普及した。普及期はいいが、みんなが持ったらちゃんと(通信料が)見える競争をしてよということ。民間企業同士、株主も見ているし利用者からも圧力がかかる中で、他社もいるので競争が働く。ドコモとソフトバンクが料金を下げる中で、KDDIと楽天だけが仲良くしていても共倒れしてしまう」との考えを述べた。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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